第2回OIV登録品種サミット マスカット・ベーリーA(MBA)誕生の地 岩の原葡萄園で開催

4月中旬に、第2回OIV登録品種サミットがオンラインで開催された。今回のテーマは「マスカット・ベーリーA(MBA)」。その誕生の地、岩の原葡萄園で行われた。その中のごく一部をお伝えする。

 

岩の原葡萄園の代表取締役社長・神田和明氏は、栽培・醸造技術の向上を目的とする「MBA1927」を2021年に立ち上げたこと、そして世界的認知及び品質評価の向上を目的とする「OIV登録品種競技会」も立ち上げたことを伝えた。

その後、シャトー・メルシャンのチーフワインメーカー・安蔵光弘氏とダイヤモンド酒造代表の雨宮吉男氏が掛け合いで対談した。

 

安蔵光弘氏(以下、安蔵):山梨では甲州とMBAの栽培面積が多いですが、甲府盆地北西部丘陵地の穂坂地区はで、昼夜の寒暖差が大きいためキャラクターのしっかりとしたブドウが収穫されます。南から南西向き斜面で、標高はさまざま。穂坂産のMBAと勝沼産では個性が異なります。

シャトー・メルシャンでは、2001年ヴィンテージを2005年に発売したのがMBA単一品種の初のワインとなりました。1990年代までは、MBAはブレンド用の品種と考えられていました。特徴的な香りとして、イチゴ、綿飴、キャンディーなどが挙げられます。このMBAの特徴香通称フラネオールはケトン類で、ストロベリーフラノンとも呼ばれています。ワイン中のHDMF(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン)=フラネオールの量は、MBA以外のブドウではごくわずかしか検知されません。

また、MBAを遅摘みするとフラネオールが増えるとわかっています。1990年代まではシャルドネを優先していて、シャルドネよりも前に収穫していましたが、今ではシャルドネの収穫後2週間ほどしてからにしています。2013年に測定したところ、やはり10〜11月に増えるとわかりました。そして、2021年の学会で発表ましたが、MBAを陰干しすると、フラネオールの量が増えるということも判明しました。前駆体からの変換が増え、水分蒸発量を考慮してもそれ以上に増加していました。

雨宮吉男氏(以下、雨宮):産地によるフラネオール量の違いはありますか?

安蔵:多分、穂坂の方が多いと思います。

雨宮:遅く収穫したMBAによるワインに対して、お客さんはMBAの特徴香を感じにくいと言います。

安蔵:無果汁のブドウジュースにも使われている香り、アントラニル酸メチルもMBAは持っていますが、それは遅く収穫すると減少します。ですから、遅摘みするとフラネオールがピュアに感じられるのだと思います。それから樽熟成を長くすると、MBA独特の香りをマスキングできると感じています。時々動物的な香りが感じられてそれは個人的には好まないのですが、それも樽熟成すると感じにくいですね。

2005年に2001年ヴィンテージのMBAを出したのは、雨宮さんの2004年のMBAをを飲んだことがきっかけでした。

雨宮:初めて樽熟成したものです。

安蔵:MBAを単独で瓶詰めするのは、当時は常識はずれでした。でもいくつか樽熟成していたので、すべて試飲したところいいものが見つかりました。それで試しに国産ワインコンクールに「山梨ベリーA」として出品したところ、部門賞をいただきました。

雨宮:熟成期間を18か月、 24か月、それ以上と長くしてみると、さらに面白くなります。これが、レバーとか焼き鳥にとてもよく合う。

安蔵:タレで、ですよね。

雨宮:そうです。

安蔵:熟成していくと、アントラニル酸メチルなどの強い香りが穏やかになるので、食事との相性が良くなります。 塩の焼き鳥には甲州、タレの焼き鳥にはMBAが良いですね。MBAは、ブリの照り焼きや鰻とも。

雨宮:MBAは、ちりめん山椒にも合いますよ。海外の方に喜ばれました。今では甲州の倍ほどの量のMBAを仕込んでいます。全房発酵をしてみたり。18か月樽熟成してさらに24か月瓶熟成してから販売したり。造り手としては10年熟成させても飲めるポテンシャルあるワインを造りたいと考えています。うちは、MBAを輸出している唯一の生産者のようです。世界一ソムリエのオリヴィエ・プシェ氏が来日した時に、シャトー・メルシャンのワインを試飲するために山梨に来ました。近隣のワインもメルシャンが購入して試飲に出してくれて、その時にダイヤモンドのMBAをオリヴィエが気に入ってくれて、その後、フランスへの輸出に結びつきました。「神の雫」の作者が、香港で広東料理と合わせる会を開催してくれたて、香港にも出しています。香港では、今は甲州の方がMBAより人気あるみたいですけれど。

安蔵:甲州はオレンジワインが人気のようですね。

雨宮:MBAの日本以外での栽培実績ですが、韓国のソムリエ協会会長に聞いたところ、ヨンチョンが主要生産地だと言います。メタノールの生成が多いのでハイブリッド品種生産は禁止されていましたが、気候変動の影響で今では研究対象になっています。病気にかかりにくく、薬剤が少なくて済むから環境にも良い品種として、MBAを海外にも紹介できればと思っています。

(Y. Nagoshi)

「OIV登録品種サミット」のチャンネル登録はこちらから

次回は、「山幸(やまさち、2020年登録)」について、7月9日に開催予定。

関連記事

ページ上部へ戻る