バラ香る「ルケ」の名手「フェラリス」

イタリアにはさまざまな在来品種がある。それぞれの地域で訳あって長い間残ってきたブドウ品種にはユニークなものが多い。ピエモンテの「ルケ」もそのひとつに挙げられる。ルケは、「バラのようなアロマ」が特徴だと言われている。この品種のパイオニアと言われる「フェラリス」のワインがイタリアから届いた。

 

ルケはピエモンテ州の、アスティ・スプマンテやバルベーラ・ダスティで知られるモンフェッラート地方を中心に栽培されている。もともとはブルゴーニュ地方から修道士が持ち込んだと言われているようだ。「ルケ・ディ・カスタニョーレ・モンフェッラート」は2010年にDOCGに昇格している。

 

<Ferraris> Ruche di Castagnole Monferrato Clasic 2021

こちらはスタンダードのキュヴェ。抜栓してしばらくはあまり香りに華やかさが感じられず、赤い果実の香りが主体だった。それでも口に含むとフルーティーな香りが広がり、比較的軽やかで優しい味わいで、どちらかといえば味わい美人だという印象だった。しかし、数日経過すると香りが開き始めて、あぁ確かにアロマティックだと感じられるようになった。

<Ferraris> Ruche di Castagnole Monferrato Riserva 2019

こちらはすでに数年熟成されていること、そしてより上質なブドウを用いているからだろう、開けてからすぐにふわりとフローラルな香りが広がった。野イチゴやグミなどの野生の赤くて小さい果実を思わせる香りに、確かにバラのような香りも感じられる。ただ、お花屋さんで売っているようなバラではなく、野バラのイメージ。どこか懐かしいようなニュアンスがある。味わいもしなやかで、強すぎず、軽すぎず。心地よいバランスで、誰にでも勧められる赤ワインだ。

どちらも、比較的まろやかなボディで酸やタンニンが優しい。そのため、ルケ・ディ・カスタニョーレ・モンフェッラートDOCGでは酸味に秀でたバルベーラを10%ブレンドしても良いことになっている。ただ、このフェラリスではルケの栽培面積を積極的に増やし海外にルケの個性を広めるのに貢献した生産者だからか、ルケ100%で造っている。

酸やタンニンが強くないため、日本の日常の食卓にのぼりそうな料理には抵抗なく何にでも合わせられるのではないだろうか。(Y. Nagoshi)

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