“Bordeaux en Primeur 2021” ~ 2021年のボルドー・プリムール ~

※ミシェル・ベタンヌ氏による2021年ヴィンテージの解説は『WANDS』2022年07-08号本誌に掲載

お気に入り赤ワイン20

Château Lafite-Rothschild
私たちがラフィットに待ち望んでいたエネルギーを完全に取り戻した。タンニンと複雑なニュアンスのハーモニー。今までよりもこのワインにふさわしい木樽由来の香りがより鮮明だ。大成功と言っても足りないほどの素晴らしいワイン。
Château Mouton-Rothschild
口に含むと感じるとても美しい構成。アルコールと酸の完璧なハーモニー。ラフィットとはまた異なる木樽由来の香りがわずかに強調されている。非常に長い余韻と大変美しくなめらかなテクスチャー。元となる収穫したてのブドウを見ると、これからこの美酒が出来るのかと驚くだろう。
Château Cos d’Estournel
先の1級に匹敵する素晴らしいワイン。アペラシオン全体でも最も豊かで最も調和の取れた1本であろう。構成要素のすべてが完璧なハーモニーを奏でている。
Château Ducru Beaucaillou
精選されたカベルネ・ソーヴィニヨン98%のワイン。超越したフィネスと、驚くほどに豊かな風味が私たちを虜にする。瓶詰め後にぜひもう一度堪能したい。
Château Léoville las Cases
シャトーの個性がはっきり表れている。しっかりした構成と高貴な風味が素晴らしい。カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランの持ち味を巧みに解釈している。カベルネ・フランは10%程度だが、それがカベルネ・ソーヴィニヨンとはまったく異なるやり方で、ワインにきめ細かさを与えている。
Château Latour
大変素晴らしいラトゥール。とてもピュアでバランスが良い。過去のプリムールで飲んだヴィンテージのいくつかよりも、もっと洗練されていておいしく、タンニンの素晴らしさは比べ物にならない。
Château Margaux
ラトゥール同様、マルゴーも大変ピュアで魅力に満ち溢れている。ミントのような清涼感のあるみずみずしい、マルゴーらしい味わいを取り戻している。素晴らしく長いフィニッシュ。カベルネ・ソーヴィニヨンが90%以上で、統一性のあるスタイル。
Château Pichon-Longueville comtesse de Lalande
生産者がブドウを徹底的に厳選したため、生産本数はとても少ない。フィネスを追求し、複雑で風味豊かな味わい。ポーイヤックのグラン・ヴァンのブラインドテイスティングでは際立っていた。近年中ではカベルネ・ソーヴィニヨンを最も豊富にブレンドしたヴィンテージである。
Château Calon-Ségur
これまでのヴィンテージの中でもきらりと輝くワイン。アルコール度数は12.9%と穏やかになったが、それがビロードのようになめらかなテクスチャーを見事に引き立てている。このテロワールのカベルネ・ソーヴィニヨンでしかなし得ないテクスチャーだ。初期に収穫されたブドウにさえ加糖を一切しない。
Château Pichon-Longueville Baron
偉大なるクラシックなポーイヤック。やはり史上最もカベルネ・ソーヴィニヨンの割合が高く90%。華やかで個性的なスミレの香りが、ジャン=ブテイエがオーナーだった時代の、過去の偉大なヴィンテージを想わせる。
Château Haut-Brion
このシャトーはいつもタンニンの抽出が巧みで素晴らしい。伸びやかでコクのあるテクスチャー。とはいえメドック地区の1級ワインとはまったく異なる味わい。メルロの割合が高いからだ。ちょうど向かい側のミッション・オー・ブリオンもそうで、どちらも成功している。双方のワインはタンニンがワインを乾かすことなく、50年以上の熟成ポテンシャルを秘めている。
Château Rauzan-Gassies
ブラインドで飲むとまるで極上のマルゴーを飲んでいるようである。現オーナーの努力の賜物だ。10年足らずで、この地のワイン造りの極みにまで達した。非常に優雅で複雑なワイン。木樽由来の香りは全体と見事に融合している。
Château Durfort- Vivens
この2級は近年輝かしいワインを造り続けている。ほとんど魔法かと思うような滑らかなテクスチャー。少しシャトー・マルゴーに似たアフターフレーヴァー。大変みずみずしい。
Domaine de Chevalier
非常に上手く熟成するカベルネ・ソーヴィニヨンを3種造り、大成功している。レオニャンの他のワインでは、これ以上に熟成するものは見つからないかと思われる。このヴィンテージにしても、色合いもテクスチャーも素晴らしい。とくにタンニンとアフターフレーヴァーから品種の良さが表れている。
Château Gruaud Larose
一番に感じたのは、構成要素のすべてがハーモニーを奏でていること。さらに過去よりもフィネスが印象的で、より明確にテロワールを表現している。この豊かなテクスチャーであれば、タンニンが枯渇することは決してないであろう(これについては、瓶詰めしたては華やかであっても、人工的に凝縮されすぎたワインによくあることだ)。
Clos du Marquis
気品のある杉の香りの、完璧なサン・ジュリアン。新ヴィンテージごとに、つまり木が年を重ねるごとに、テクスチャーに厚みが増している。味わいはさらにダイナミックで華やかに進化している。
Château Rauzan-Segla
マルゴーのグラン・ヴァン愛飲家が大喜びするような素晴らしい香りとテクスチャーで、並外れたフィネスを持ったワイン。このワインは瓶詰めしたては、近隣のシャトーよりも繊細だと思いがちだが、他とは比べようもないほどエレガントなワインである。
Château Smith Haut-Lafitte
大成功のワインだ。深みのあるテクスチャーと、自然の恵みがもたらすおいしさで、魅力に溢れている。
Château Léoville Poyféré
とてもおいしいクラシックなワイン。同じヴィンテージの他のワインに比べると少し熟成はゆっくりになるかもしれないが、メドック1級に望むような、華々しいテクスチャーと気品のある表現力。
Château Pape Clément
とても美しいテクスチャー。巧みに抽出されたタンニン。そして品種同士の補完が完璧だ。シャトー・オー・ブリオンよりも、テクスチャーからカベルネ・ソーヴィニヨンをより強く感じる。ブラインドテイスティングでは、ペサック=レオニャンの他の同ヴィンテージよりも、余韻が一際長かった。間違いなく成功している。

求めやすくおいしい赤ワイン10

Château Monbrison
マルゴーでは格付けになく、この輝かしいシャトーの真価はまだ十分に認知されていない。見事なフィネスとその際立った個性が、このヴィンテージでもやはり完璧に表れていた! 私はこのワインを他の人たちともっと共有したいと心の底から願っている。
Château Carbonnieux
2020年以降、赤ワインが大いに進化して繊細な味わいに。指揮を執るペラン氏は若手でありながら先人よりも厳格な姿勢でワイン造りに臨んでいる。このワインの構成の完成度には非の打ち所がない。感じられるアロマのひとつには杉の香りがあり、レオニャンの中でも高級メドックのスタイルに最も近い。
Château Lagarde
これもまた、大きな進化を遂げたレオニャンの素晴らしい赤ワインで、メゾン・ドゥルト社の誇りをかけている。リッチなテクスチャーと、風味豊かな味わい。間違いなくこの区画の最高級のワインにも匹敵する。寝かせるとハーモニーと風味の精密さがよりはっきり表れ、多くの愛飲家を驚かせるだろう。
Château Lafon-Rochet
ラフィットに隣接するシャトー。新オーナーによる初ヴィンテージで、世界市場にはまだ十分知られていない。過去と比べると、鮮明で緻密な味わいでよりおいしいワインに。テクスチャーはコクがあり調和が取れている。最後に口の中で、1級ワインたちに負けないほどの、フレッシュで上品なタンニンを感じる。
Château Batailley
ポーイヤックのクラシックスタイルで名の知れた5級の中で、バタイエは味わいが価格を最も上回る。2021年はとてもバランスが良く、タンニンが支え、気品のある味わい。長期熟成の偉大なるポテンシャルを秘めている。
Château Lamarzelle
フィジャックに近いこのサンテミリオンのシャトーは、実に成功したワインを造った。テクスチャーの質と洗練されたアロマは、このワインの3、4倍は高い代物に引けを取らない。生産者家族はベルギー出身だが、ここまで高品質なワインを造った彼らを祝福すべきだ。海洋性気候では持続が難しいオーガニック農法をなお守り続けている。
Château Fonroque
ここもサンテミリオンで生物多様性を守るワイン造りを実現している。フローラルなアロマ。ここまでピュアで洗練されたワインにはなかなかお目にかかれない。自然にまかせた抽出だけではなく、同じ哲学に基づいておいしいワインを造れる醸造の正確さにも驚く。滅多にないことだ。
Château Fonplégade
このシャトーのテロワールは、メドック1級のそれに値する。地理学的に見てもメドック1級の中でも最良の土地に非常に近い。でありながら、まだ知られていないシャトーだ。ゆえに手に届きやすい価格を実現できている。2021年はエレガントで調和が取れていて成功している。このワインをぜひともおすすめしたい。
Virginie de Valandraud
ヴァランドローはとても有名になりとても高くなってしまったが、このヴィルジニーはそのセカンドワインではない。すぐ近くの卓越したテロワールから生まれたワインだ。でありながら、未だに1級への仲間入りを認められていない! ボルドー中でも最良タンクで発酵された、確かな威厳とおいしさを兼ねたワイン。まさに高級品質で、高貴で優雅な味わい。今この傑作を非常にお値打ち価格で手に入れることができる。
Château Grand Corbin Despagne
シュヴァル・ブランに近い区画で造られたワイン。サンテミリオンの高級ワインそのままのスタイルである。優れたオーナーが愛情を込めて正確な仕事で醸造している。2021年はボディの肉付けと香りから、ブラインドテイスティングでも素晴らしい評価だった。この品質のワインをお値打ち価格で買えるのは本当に驚きだ。

偉大な辛口白ワイン5

Château Mission Haut-Brion
いつもここは他のボルドーを圧倒する白を造る。奥行きのあるボディ。凝縮された深い味わい。アフターフレーヴァーはブルゴーニュの白のグラン・ヴァンに匹敵する。2021年はソーヴィニヨン・ブランが前に出ている。セミヨンもまたその石灰質土壌とミクロクリマからなる小さなテロワールによってうまく実った。この素晴らしいセミヨンのおかげでここ10年でも最高の出来。ワインは希少で、価格も相当になるだろう!
Château Smith Haut-Laffite
とても魅力的で、コクがあり、木樽発酵による見事な味わい。10年の間にますますエレガントでピュアなワインに進化している。オーガニック農法はこのワインを説明するのに良い言葉だろう。
Domaine de Chevalier
ここ10年で最も複雑かつ最も調和の取れているワイン。ブドウがかなり熟していることで得られる、特有の松ヤニの香りがはっきりとある。レオニャン特有の白や黄色の果実のアロマも。
Château Cos d’Estournel
最高級メドックの2020年白のように極上。サン=テステフの北部、グーレの石灰質土壌でブドウが造られる。果実の香りの見事な一体感。お手本のように奥行きのあるボディ。フィニッシュに感じるみずみずしさ……ブラボー!
Semillon de Château Suduiraut
セミヨンが完璧な出来でないと生産されないまったく新しいキュヴェ。ソーテルヌは4月の霜が原因で、2021年の収穫は部分的であったが、このワインを造る機会に恵まれた。実は私はこの品種が大好きである。うまく収穫するのはとても難しい。しかしこの品種があるからこそ、独創的な、ボルドー特有のスタイルの白ができるのだと思っている。ほのかに感じる蜂蜜の味わいが輝かしい未来を予言している。なぜならセミヨンは、10年以上の熟成を待つことができる飲み手の我慢に応える品種だからだ。その熟成ポテンシャルは、ソーヴィニヨン・ブランに匹敵あるいはそれを上回る。

 

続きは、WANDS 7-8月号
【特集】カリフォルニア ローダイ/新トレンド 多様な世界のスピリッツ/アルゼンチンワインの”今”を探る
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