究極の頂へ導くレストラン「Nine by La Cime ナイン バイ ラ シーム」

今年7月7日、丸の内テラスの9階に「ナイン バイ ラ シーム」がオープンした。1桁の数字で最大の9が「究極を極めて完成する」を意味し、フランス語で頂上を意味するLa Cimeを組み合わせ、「『この時』『この場所』でしか体験することのできない進化し続ける料理で『究極の頂へ導く』をいう想いを込めたという。

「ラ・シーム」は、パートナーシェフ高田裕介氏(写真・右)の大阪のレストランの名前でもある。「ナイン バイ ラ シーム」のシェフは、徳島亨氏(写真・左)。

 

この2年半ほど、レストランの存在意義が問われたことはなかったのではないかと思う。しかしこの店で時を過ごせば、「あぁ、やっぱり!」と誰しも感じるのではないだろうか。日本のレストランは基準が高いから、おいしいのは当たり前。だから店を出るときに「あぁ、おいしかった!」だけではおそらく物足りない時代になっているに違いない。この店が追求するのはもっとその先にあるものだった。

丸くて小さいブーダンドッグ。中身は徳島シェフ出身の福島特産の鯉が軟骨まで使われている。ディルや柚子を使用した自家製ノンアルコールとともに。

 

これまでに食べたことのない料理。経験したことのないプレゼンテーション。ノンアルコールやワイン、日本酒などとのペアリングも準備されている。そして、高田シェフの試みとして「東京らしさ」を演出するための「香り」の役割も面白い。

料理やグラスとは別に、テーブルに菊炭が置かれている。これにアロマを数滴。香りの種類はいくつも準備があるようだが、詳細は秘密。これまで、日本の飲食店では香るものを置くのはタブーだったそうだ。しかし、ずっとマスク生活が続いてきたゲストに対してマスクを外した開放感を楽しんでもらうとともに、料理との相乗効果が得られる可能性があると考えたと言う。「口には入れないけれど、薬味的な存在として」、料理と料理の間に香りをとってみるなど、何らかのアクセントになればと考えてのことだ。

 

ライチのジュレ、バラ、キャビアの一口。ペリエ ジュエ グラン ブリュットとともに。

 

面白いことに香りは、まさにあの時あの場所で、という記憶を呼び覚ますことがある。香りを含めた「ナイン バイ ラ シーム」での体験は、香りの存在があるからこそ忘れぬ記憶として残るかもしれない。(Y. Nagoshi)

「ナイン バイ ラ シーム」

ドロメ。生シラスの昆布じめは、パプリカのエスプーマ、ナスタチアの花弁、トマトのチュイールなどと。デラウェアのオレンジワインとペアリング。

 

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