イタリア家庭用売上No.1プロセッコ「ヴァル・ドッカ」、「乃木坂しん」で和食との相性検証

今年2022年は、日本でもプロセッコの認知度が上がってきた印象がある。そこで、今後さらに日本でプロセッコが注目される可能性があると期待して、ワイン業界のプロフェッショナルに集合してもらった。何よりまず、和食との相性について確認するため、ミシュランで5年連続一つ星を獲得している日本料理店「乃木坂しん」で検証した。

イタリアワインのエキスパートでワインジャーナリストの宮嶋勲氏によるガイドで、料理は「乃木坂しんの」店主で料理長の石田伸二氏(写真・下左)が、そしてワインとの組み合わせはオーナーソムリエの飛田泰秀氏(写真・下右)が担当した。

 

マリアージュ会をガイドしたイタリアワインのエキスパートでワインジャーナリストの宮嶋勲氏。

ヴァル・ドッカは、ヴァルドッビアーデネ・プロセッコDOCGにて1952年に設立された協同組合で、現在602軒が加盟している。そして属するブドウ畑は957haにも及び、DOCGプロセッコにおけるブドウ畑の所有面積はここが最大。その多くはヴァルドッビアーデネ地区にある。今回は、サッポロビールが輸入するヴァル・ドッカの上級品のうち3銘柄を合わせた。

「プロセッコDOC エクストラ ドライ ブルー ミレジマート2021」

「ヴァルドッビアーデネ・プロセッコ スペリオーレDOCG エクストラ ドライ ミレジマート2021」

「ヴァルドッビアーデネ・プロセッコ スペリオーレDOCGブリュット リーヴェ・ディ・サンピエトロ・ディ・バルボッザ2021」

 

「プロセッコDOC エクストラ ドライ ブルー ミレジマート2021(以下、ブルー)」は、DOCであるためブドウの供給可能範囲は広い。品種はグレーラ85%にシャルドネとピノ・ネロをブレンド。エクストラ ドライで、残糖16g/ℓ、アルコール度数11%abv。

「ヴァルドッビアーデネ・プロセッコ スペリオーレDOCG エクストラ ドライ ミレジマート2021(以下、ヴァルドッビアーデネ)」は、ヴェネト州のトレヴィーゾ県にあるヴァルドッビアーデネ地区のブドウのみ。品種はグレーラ85%にシャルドネとピノ・ネロをブレンド。エクストラ ドライで、残糖16g/ℓ、アルコール度数11%abv。

「ヴァルドッビアーデネ・プロセッコ スペリオーレDOCGブリュット リーヴェ・ディ・サンピエトロ・ディ・バルボッザ2021(以下、リーヴェ)」は、ヴェネト州のトレヴィーゾ県にあるヴァルドッビアーデネ地区のブドウのみ。また、その中でも「リーヴェ」と呼ばれる優れた43区画に数え上げられるリーヴェ・ディ・サンピエトロ・ディ・バルボッザのブドウだけを使用している。品種はグレーラ85%にシャルドネとピノ・ネロをブレンド。これはブリュット仕上げで、残糖11g/ℓ、アルコール度数11%abv。

「プロセッコDOCGは、西側はなだらかな丘陵地のコネリアーノ、このヴァルドッビアーデネは東側にありアルプス山脈に近い場所にあります。アルプスからの冷涼な風が吹き降り、急斜面で山の産地とも言えます。このため、コネリアーノが優しく飲みやすいのに対して、ヴァルドッビアーデネは清らかで切れ味の鋭い味わいになります」と、宮嶋氏。

ブドウ品種もアルコール度数も同じでありながら、ブドウの産地と残糖の異なる3種類のプロセッコは、料理とどのように対面するのだろうか。

蒸した香箱蟹は下に寿司飯があり、うま味と甘酸っぱさがバランス良い味わい。そこにプロセッコの2つの「エクストラ ドライ(ブルー、ヴァルドッビアーデネ)」のフレッシュな酸と果実の甘味が重なり合い、心地よい寄り添い方をした。

<お品書き>

香箱蟹 蒸し寿司

あん肝 わけぎ トマト ぬた酢ゼリー

金時芋のしんじょう ほうれん草 黄柚子

揉み河豚 ネギ 七味 洗い海苔

鰤と海老芋

松葉蟹 炭火焼き

八寸 河豚唐揚げ 河豚皮の煮こごり 鰆と蒸し若布の酢の物 イクラとほうれん草と油揚げのお浸し クワイ煮揚げ 芽キャベツの甘酢漬け 菊芋チップ

雲子 金時人参 白木耳 白菜 聖護院蕪のみぞれだし

河豚ご飯 河豚ご飯と白子の卵とじ丼

林檎の葛焼き 生姜とミルクと蜂蜜のソルベ 紅マドンナとラフランスの甘露煮酢橘ジュース

 

あん肝 わけぎ トマト ぬた酢ゼリー

あん肝には三杯酢のゼリーがたっぷり添えられていた。あん肝の粘性と旨みを飽きずにさっぱりと食べさせる。そこでプロセッコを一口飲むと、「酸に酸を重ねたり、甘味と甘酸っぱさが引っ張り合う関係になって良く合いますね」と、和食とワインのパイオニア「割烹 小田島」の2代目店主 小田島大祐氏。

「銀座レカン」のシェフソムリエ 近藤祐佑哉氏は、「とくにリーヴェのタイトさ緻密さがあん肝のテクスチャーに良く馴染んでいました」と言う。

「MeRCelation」の代表 建部洋平氏も、「香りのパワーバランスで、リーヴェが良かったですね」との感想。

「テクスチャーと甘みと酸のバランスから言えば、酸と酸をぶつけるより、(ブルーとヴァルドッビアーデネの)エクストラドライの柔らかさの方があん肝のソフトさと良いと感じました」とは、「ロオジエ」のシェフソムリエ 井黒卓氏。

「東京エディション虎ノ門」のヘッドソムリエ 矢田部匡且氏は、「あん肝を食べている間はリーヴェ、器に残った三杯酢のゼリーをいただくにはヴァルドッビアーデネがちょうど良かったですね」と言う。

それぞれが微妙に感想が異なるが、共通した感覚としてブルーもヴァルドッビアーデネも「エクストラドライ」で比較的残糖分が高いカテゴリーにあるにも関わらず、「単体で飲んでも甘すぎない」との意見だった。

金時芋をまとったしんじょうを食べている間は、ヴァルドッビアーデネの味わいバランスとちょうど良かったが、最後に上にあしらわれていた黄柚子を口にすると、リーヴェのタイトな味わいや柑橘系のアロマ、そして細く長い余韻に重なりあった。

 

今回の相性検証している間、意外にもほんのりとした甘みと酸味の関係やフレッシュさがどの料理にもぶつかることなく寄り添ってくれる、との意見で一致した。全体を通しての感想を、それぞれ語っていただこう。

「エクストラドライ(ブルーとヴァルドッビアーデネ)は、トータルプレーヤーですね。すっと後ろに回って支えてくれる存在でしょうか」とは、建部氏。

「今日の本格的な日本料理とも良く合いましたが、もっと広げていけると感じました。例えば、野球場で飲む一杯であったり、キャンプの時に開けても良いと思います」と、近藤氏。

「かつてのプロセッコのイメージがそのまま残っていて、手が伸びない人が多いかもしれませんね。酸がフレッシュで甘ったるさはないですし、ヴァルドッビアーデネ地区の(ヴァルドッビアーデネ、リーヴェ)の品質の高さも感じ取れました。もっと広まると良いですね」と、井黒氏。

「河豚からコクのあるあん肝まで、予想以上にお料理に合うと感心しました」と、ザ・フライング・ストーンズの小出三津子氏。

「プロセッコは酸と柑橘系のフレーバーがあるので、料理に酢橘をしぼるイメージで飲むとちょうど良いですね。家庭でも外でも気軽にプロセッコを楽しめる場所が増えると良いと思いました」と、小田島氏。

塩を揉み込んだ河豚は、まさに清らかな味わいで噛みごたえがあり、噛むほどに旨みとミネラル感が出てくる逸品。これはちょうど内包する要素が似ているリーヴェの質感がぴったり。

「プロセッコの酸は、例えばシャンパーニュの酸よりもソフトですから、気構えなくても飲めるという点でも良いですね」と、矢田部氏。

「今日のような素材重視の本格的なお食事に対して、果実が主体でシンプルな味わいのプロセッコはバッティングする要素がなくてどれも良い相性でした。中でも炭火焼きの松葉蟹は、縦に伸びる繊維質の蟹肉とリーヴェのみずみずしさが浸透していく感じがあり、酢橘をかけるとさらに相性が良くなりました。そして、どれも口の中をさっぱりとリフレッシュしてくれるので、さまざまなシーンで使いやすく、飲むTPOは色々と考えられると思います」と、「資生堂パーラー ザ・ハラジュク」の店長兼ソムリエ 本多康志氏。

「カジュアル店でも使いやすい味わいと価格帯ですね。シャンパーニュのような緊張感ではなく、気軽な雰囲気で楽しい食卓を演出してくれる1本になりそうです。お料理も、今日のように合わせるの

も良いですが幅広く合いそうなので、好きなものと楽しんでいただきたいですね。フルーツやシャーベット、生クリームにも合いますし」と、「バルニバービ」のヘッドソムリエ 岩崎麗氏。

「突出した部分がない反面、懐が深いと感じました。とくにエクストラドライはぶつかる要素がありません。そして手頃な価格帯なので、色々とトライ&エラーも気軽にできそうです。韓国料理とも試してみたいと

ヅケにした鰤と酸っぱく炊いた海老芋は、うま味と酸味の関係がプロセッコの甘みと酸味の関係に似ていて、敢えて選ぶとするならヴァルドッビアーデネがちょうど良い関係。

思いました」と、元カンテサンスのソムリエで現在「やま幸」の取締役を務める市村暢央氏。

「例えば複数のワインをグラスで飲んでいる時に、白と赤の間、赤と赤の間に、グラニテのような感覚で飲むのにも良いかと思いました。そしてハレの日ではなく、プチご褒美として飲んでみたり。癒しのスパークリングワインという位置付けも良いかもしれませんね」と、「ワインコンシェルジュM」の三沢雄一氏。

 

最後に、飛田氏に聞いた。

「ブルーは、ラムネのようなニュアンスとグリーンなノートがあります。ヴァルドッビアーデネは、黄色い花や果実のアロマで熟度の高さが感じられます。リーヴェは両者の特性を併せ持ちつつ余韻がずっと長くなります。素直で自然な果実の風味や甘さは、料理と喧嘩することなく、シンプルな素材の良さを引き立ててくれました」。

 

松葉蟹の炭火焼きは、余韻の長い味わいと酢橘の酸がリーヴェと絶妙な相性。

プロセッコと本格的な日本料理との組み合わせは、自然体で楽しい体験となった。そして、ブルーやヴァルドッビアーデネのような「エクストラドライ」のカテゴリーの汎用性が見直された。生ハムやサラミ、オリーブといったおつまみから、日本のファストフードの明石焼きやたこ焼き、あるいはカフェでサンドイッチやスイーツと、そして日本の何気ない家庭料理の相方に、ソロキャンプや野球観戦などアウトドアでの活躍も期待できる。気軽に楽しめるけれど、どこかオシャレな風景を演出してくれる、そんな1本になるのではないだろうか。

(text by Y. Nagoshi, photo by T. Yanagi)

輸入元:サッポロビール

 

 

 

 

 

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