「グラン・クリュ 〜Special RED Brew〜」シャトー・メルシャンのブドウを使った特別なビール

スプリングバレーブルワリー東京が、シャトー・メルシャンのワイン醸造用ブドウを使った特別なビールを数量限定発売している。ブドウはここ数年注目が集まっている長野県塩尻市片丘地区産で、2022年に収穫したメルロを使用していると言う。いったいどんな仕上がりなのだろうか。ヘッドブリュワーの古川淳一さんに話を聞くために、興味津々で代官山へ出かけた。

 

ちょうど1年ほど前に「グラン・クリュ 〜496 特別醸造〜」が限定販売されていたのをご存知だろうか。

「究極のバランス」を追求したクラフトビール「496」の系譜を踏んだ、特別なクラス「グラン・クリュ」にあたる逸品だった。今回の「グラン・クリュ 〜Special RED Brew〜」も同じクラス。そして麦のワインと言われるバーレーワインの仲間に入り、ワイングラスでサーヴィスされているという点も共通している。

 

最も気になるのは、ワイン用のブドウを副原料として使っているというところだ。2018年に酒税法が改正されビールに使用可能な副原料の種類が格段に増えた。そのためキリンビールやスプリングバレーでもさまざまなものでトライアルが行われ、

「複数のブドウ品種を使用して味わいに関する効果を検証していたところ、メルロが一番味わいに複雑性を与えるという結果が出ました」と、古川さん。今回の「グラン・クリュ 〜Special RED Brew〜」には、ブドウを丸ごと使用した。ワインのような色合いや香りが付加されるのかと思いきや、「味わいの補強がメインの役割で、酸味と渋みが加わることで味わいに深みが増しました」と言う。

「グラン・クリュ 〜Special RED Brew〜」は、原料のホップについてもこだわりがある。2022年8月に、横浜ビール・サンクトガーレン・スプリングバレーブルワリーの3社でコラボレーションして発売した横浜ビール「1962 RED ALE」の開発で得た知見を用いている。“マッシュホッピング”と呼ばれる、麦芽を糖化させている最中にホップを添加することで、糖化酵素の作用によりホップの香りをさらに華やかにする最新のホップ添加方法を採用。新たな手法を取り入れた香りに特徴のあるバーレーワインと、グループの一員であるシャトー・メルシャンのブドウの個性がうまく馴染んだのだ。

 

さて、グラスに注がれた「グラン・クリュ 〜Special RED Brew〜」がテーブルに置かれると、すでに香りがふわりと広がり出てくるのがわかる。それだけフルーティーな香りが豊かなのだ。そして一口味わうと、実にバランスが良い。濃密な味わいにも関わらず重さは感じられない。

「刺すような苦味ではなく、渋みなどの周辺の味わいが加わることで味わいが複雑になっていると思います。そして、酸味が加わることで後味のキレが良くなります」。

まさに、アルコールのボリューム感・丸み・酸味・苦味・渋みなどのバランスが整っているため、8%というアルコールの高さを感じさせずに飲めてしまう。そして、後味が爽やかなのでもう一口飲みたいと思わせる。味わいが充実しているため、グイッと飲むタイプではなくやはりワインのように少しずつ味わうのが良さそうだ。飲みながら食べながらおしゃべりしながらゆっくりと。すると、少し温度が上がってからの変化も楽しめる。香りはさらに複雑性が感じられ、味わいはよりまろやかになり口の後半で幅が広がる。

話を聞き始める前は、バーレーワインだけに、ワイン用のブドウがどのような影響を与えているのか、という点に関心があった。しかし意外にも味わいの基盤となる部分にブドウの個性が入り込んで、ボトムアップに貢献しているとわかった。ビールにワインを足しても、決してこのような絶妙な味わいにはなり得ない。ビール好きの人にも、ワイン好きの人にも、ぜひぜひ試していただきたい一杯だ。(Y. Nagoshi)

スプリングバレーブルワリー東京

 

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