増税対応のカギは景気の本格回復にある!
昨12月上旬に内閣府から発表された統計によると、2015年7~9月の国内総生産(GDP)は実質で前期比0.3%増、年率換算で1.0%増となったという。11月に発表された速報値では2四半期連続のマイナスだったが、確報値ではプラス成長へと上方修正された。伸びた理由は、製造業企業による設備投資がようやく底をうって0.6%のプラスに転じたこと、個人消費も0.4%増と水面上に顔をだしたことが挙げられている。ようやく本格的な景気浮揚への道筋が見えてきたかのような明るいニュースであることは間違いないが、個人消費支出の増加は円安を背景とした食料品、日用品等の値上げによる分も含まれており、手放しでは喜べない数字でもある。
(中略)
こうした中で、新しい年2016年が幕を開けた。
消費税軽減税率導入のあり方をめぐる連立与党内の議論のあおりで、種類間の税率格差是正を目指す酒税改定論議は再び今年以降の課題として先送りされた。しかし来年4月に酒税改定を行うことは消費増税とともにほとんど待ったなしの状態。2017年度を前にして税制が大きく変われば、ビール類に属するカテゴリー間の市場環境は大きく変わり、各メーカーはすでにいろいろシュミレーションしているとは言われるものの、ブランドの改廃作業に追われることになる。本誌関係でいえば、醸造酒の税率格差是正を名目にした果実酒の増税の動きにも注意が必要だ。日豪EPA 協定の発効に続いて、大筋合意したとされるTPP がいつ発効するのかいまだ不透明だが、これによって環太平洋地域にあるワインの輸出国、米国やニュージーランドからの対日輸出に弾みがつくとの見方もでている。これまでなかなか進まなかったEU とのEPA 協議も加速されることは間違いないだろう。
昨年末、米国FRB による米ドルの利上げ発表により、依然として量的緩和を掲げる日本の為替政策との差が際立ち、円安・ドル高がさらに進行することがほぼ確実視されている。2015年末の対ドル円価格は122円前後。これは円が76円台と強かった4年前との比較で6割、2年前との比較でも2割も下がっている。現在のユーロは130 円台前半と、150 円を超えるところまでユーロ高が進んだ1年前からは沈静化しているが、このままユーロ安が続くという保証はない。
昨年、円安に加え原材料・製品価格のアップや物流経費の増加にあえいだ輸入洋酒はワインもウイスキーも一斉に値上げを余儀なくされた。今年は早くもサントリーが4月からの国産・輸入ウイスキーの値上げを発表、収益性確保のためにはまたぞろ値上げラッシュが続きそうな気配を見せている。消費増税を控えて、スムーズな価格転嫁ができるのかも大きな課題となるだろう。そして何よりも多くの人々が望んでいるのは、今年こそ景気の本格回復を実感できるような年であって欲しいという思いだ。(M. Yoshino)
つづく/中略部分、これ以降の内容 <ビール20年ぶりのプラス着地なるか/値上げや出荷調整が続くウイスキー/ワインは伸び率鈍化も増勢は続く> につきましては、「ウォンズ」本誌「1月号」をご覧下さい。WANDS本誌の購入&購読はこちらから
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