「セーニャ」ヴァーティカル試飲 熟成可能性と進化を探る 2014, 2016, 2017, 2020

チリのプレミアムワインの先駆け「セーニャ」は1995年が初ヴィンテージだった。エデュアルド・チャドウィクがロバート・モンダヴィとタッグを組み、偉大なワイン産地としてのチリの潜在能力を世界に周知したいと考えてのジョイント・ヴェンチャーだ。

 

セーニャ専用の畑は海岸から40kmにあり、涼しい海風が吹き込んでくるため収穫期までフレッシュな酸が保てる。斜面は北東むきで十分な日照量も得られる。土壌は火山性土壌と砂利混じりで、カベルネ・ソーヴィニヨン(CS)、カルメネール(CM)、マルベック(Mb)、プティ・ヴェルド(PV)、メルロ、カベルネ・フランが植えられている。敷地は350haもあるが、その内ブドウ畑は42haだけ。そのほかは、森、果樹園、羊やアルパカや馬などが放牧されている。2007年まではエラスリスの別の畑のブドウも使用していたようだが、アコンカグアの畑のブドウの樹齢が上がり、今では専用の畑のブドウだけを使用している。2005年からはバイオダイナミックの手法で栽培を始め、使用するプレパレーションも敷地内で調達しているという。

 

試飲したヴィンテージは、2014年、2016年、2017年、2020年。試飲の2時間前に抜栓し、ダブル・デキャンタしたものだった。

2014年は春に霜害があり、全体に涼しめのヴィンテージだった。色はまだ濃く、黒混じりのしっかりとしたルビー色。香りにはスパイスやゲーミーさ、ほのかにドライになり始めた重視た赤い果実といった、やや熟成し始めたニュアンスが感じられた。味わいはなめらかで、涼しめといってもふくよかでボリューミーで、厚みがあり、タンニンのストラクチャーもカッチリとしている。甘いスパイスの余韻が残る。

この年のブレンド比率は、60%CS、16%CM、11%Mb、8%MR、5%PV。セーニャにメルロをブレンドした最後の年だという。アルコール度数は14%。

 

2016年は年間通して涼しいヴィンテージで、萌芽は前年より8〜10日遅れ、生育期間がとても長く、エレガンスとフレッシュさが特徴だという。試飲すると、色合いも若干明るく感じられ、香りもいくぶん硬さが見られる。まだ香りは閉じ気味で、ブルーベリーやチェリー、ほのかなスモーキーさや黒鉛のようなニュアンスも。味わいはしなやかで、酸が生き生きとしていてミネラリーでテンションがあり、タイトなボディ。タンニンはとても細やか。まだもう少し寝かしておいてもよさそうだ。

この年のブレンド比率は、55%CS、20%Mb、12%PV、8%CM、5%CF。アルコール度数は13.5%。

 

2017年はとても暑い年で、収穫量が低く、凝縮したワインが生まれた年だという。色合いは2016年と同じぐらいに見えるが、香りはまったく個性が異なる。果実の熟度がとても高く、クレム・ド・カシスを思わせる凝縮した香りで、まだ開いておらずスモーキーさも感じられる。アタックからなめらかで、厚みがある。しかし、ボリューミーというわけではない。タンニンのストラクチャーがとてもしっかりしており、骨格が強く、余韻にはミネラル感も。メルロのブレンドがゼロになったことだけでなく、よりエレガントなスタイルへ進化していると感じられる。

この年のブレンド比率は、52%CS、15%Mb、15%CM、10%CF、8%PV。アルコール度数は13.5%。

 

2020年は温暖で早熟なヴィンテージで、重厚でまろやかなタンニンの芳醇なワインに仕上がったという。色合いは2017年と同様で、香りはまだ閉じ気味。スモーキーさ、グラファイト、黒い果実などが徐々に現れる。口中ではとてもなめらかで、シルキー。タンニンも大変細やか。緻密でギュッと引き締まり、テンションがある。テクスチャーが秀でていて、完成度が高い。余韻に感じるフローラルなノートは、マルベック由来のようだ。

この年のブレンド比率は、53%CS、25%Mb、15%CM、7%PV。アルコール度数は13.5%。

 

4つのヴィンテージではあるが、年とともにエレガントなスタイルが確立し、緻密さやテクスチャーの美しさに磨きがかかっているように感じた。また、ゆっくりと開き始め熟成していく様子を見ると、若くしても美味しく飲めるのは事実だがたまには数年我慢するか忘れておくのも楽しみが増えそうだ。

ちなみに、2020年からは新たに「ロカス・デ・セーニャ」を造り始めている。セーニャの特別な区画のブドウを使用したセカンドワインで、マルベックの比率が高く、シラーとグルナッシュもブレンドされているとのことで、こちらも気になる。

(Y. Nagoshi)

セーニャの公式ホームページ

 

 

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