【NSW】ミディアムボディで酸がしっかり ハンター・ヴァレーのシラーズを唎く

レオゲート・エステートのシニアワインメーカーのマーク・ウッズ氏(左)とトーマス・ワインズのオーナー醸造家アンドリュー・トーマス氏。

 

6月6日、オーストラリアのニューサウスウェールズ州ワイン2023年試飲会&セミナーが都内で開催された。3部制のセミナーの第3部はシラーズがテーマ。来日した生産者2名が登壇し解説した(※ 第2部 ハンター・ヴァレーの白のセミナーは、WANDS誌2023年7・8月号に掲載)。

ハンター・ヴァレーを代表する生産者のひとり、アンドリュー・トーマス氏は、名門ティレルズに勤めた後、25年前に自社のトーマス・ワインズを創業した。「ハンターのシラーズは、バロッサ・ヴァレーのそれとはスタイルが大きく異なる。酸のラインがしっかりしていて、ボディはミディアム。どちらかといえばローヌに近いスタイルになる」とトーマス氏。このミディアムボディの飲み心地の良さを崩さないために、ハンター・ヴァレーでは「生産者はみな、樽の使用には非常に注意している。その影響がワインに出過ぎないように慎重にする」と話す。

トーマス氏が手がけるフラッグシップの「トーマス・ワインズ キス シラーズ 2021」は、パレットがとてもなめらかで綺麗な仕上がり。味わいは、熟したブルーの果実が特徴。畑は重く赤いロームと粘土質土壌で、凝縮感のあるブドウが育つ。2021年はハンター・ヴァレーで理想的な栽培周期を迎え、少し雨の量が多かった年。典型的なミディアムボディのシラーズをよく楽しめると言う。

セミナーで供されたブロークンウッドの「ハンター・ヴァレー シラーズ 2021」もまた、樽のニュアンスが強すぎず、セイボリーで、フードフレンドリー。その畑はトーマス氏の畑の対角線上に位置している。

全房発酵についても話題になった。

トーマス氏は「一般的に、ハンターのシラーズは全房発酵しない。果梗のフェノールが成熟せずに青臭さが出る可能性があるからだ。その一方で、果粒を潰さずに発酵する手法はよく用いられる」と話す。ともに登壇した、レオゲート・エステートのシニアワインメーカーのマーク・ウッズ氏もまた「果粒を潰してしまうと、果皮からの抽出が強くなり、ドライなタンニンになる可能性がある」と、このアプローチを採っている。レオゲート・エステートはハンター・ヴァレーのブロークンバック山脈の麓に拠点をおく家族経営のワイナリーで、畑には1960年代に植樹された古木が残る。ハンターのシラーズには、樹齢100年超もある。そうした古木のシラーズは、セミヨンと同様に瓶熟成のポテンシャルが高く、10年先、15年先と楽しめると言う。

「レオゲート・エステート ウェスタン・スロープス シラーズ 2019」は樹齢55年のシラーズ。300ℓの仏オーク樽(ホッグズヘッド)で熟成。口中で横に広がっていく豊かな酸。緻密なタンニンとスパイスに、やや肉系のニュアンスも。パレットは滑らかで、ワイルドベリーやブラックベリーの味わい。「畑は午後の日差しを長く浴びる。ブドウの果粒は小さくなり、ダークフルーツの風味が豊かだ。力強くパワフルなワインができる」とウッズ氏。

2019年は、オーストラリアで3年続いた干ばつの最後の年に当たる。「非常に収量が低く、凝縮感のあるワインとなった」。

シラーズを中心にセミナーで供された6種の赤ワイン。

 

(N. Miyata)

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