日本で初のセミナー開催 クレマン・ド・ブルゴーニュ 6種を唎く

写真/「クレマン・ド・ブルゴーニュ エミナント ヴェリゼ・ドール ブラン」と「クレマン・ド・ブルゴーニュ グランド・エミナント ペルル・ドール 2017」。それぞれラベルの左下に格付け「エミネナント」「グランド・エンミナント」を示す小さなマークが入っている。

 

 

解説した「銀座レカン」総支配人兼エクゼクティブソムリエの近藤佑哉氏。

6月19日、ブルゴーニュワイン委員会は、AOCクレマン・ド・ブルゴーニュのセミナーを日本で初開催した。講師を務めたのは「銀座レカン」総支配人兼エクゼクティブソムリエの近藤佑哉氏。試飲では6種が供された。
市場動向としては、クレマン・ド・ブルゴーニュは2022年9月現在、ブルゴーニュ全域の生産量の11%を占めている。年間生産量は約2,180万本で、日本市場への輸出量は約32万本。日本へ輸出されるブルゴーニュ産ワインの4%を占めている。

 

クレマン・ド・ブルゴーニュの歴史

18世紀末から19世紀初頭にブルゴーニュでスパークリングワインの生産が始まった。
「たとえば1818年、コート・ド・ニュイの特級畑シャンベルタンとクロ・ド・ヴージョで、赤のスパークリングワインが造られた記録が残っている。19世紀には、ナポレオン3世にロマネ・コンティとクロ・ド・ヴージョで造られたスパークリングが献上されるなど、宮廷や社交界で流行りの酒になった。1830年にはフランソワ・バジル・ユベールがリュリーでメゾンを設立、シャンパーニュ方式のスパークリングで成功した。その頃には年間100万本生産されていたという記録がある」と、近藤氏。
20世紀半ばには、シャブリのシモネ・フェーヴルとモローが「シャブリ・ムスー」を輸出して大成功する。1943年にAOCブルゴーニュ・ムスーが設立。それを経て1975年に、白とロゼのAOCクレマン・ド・ブルゴーニュが設立した。赤はこのAOCには含まれない。

 

品種と醸造

クレマン・ド・ブルゴーニュの主要品種はピノ・ノワールとシャルドネ。ほかにガメイ、アリゴテ、ムロン(ミュスカデ)、ピノ・ブラン、ピノ・グリ、サシィも認められている。
「ガメイは今、国際市場で人気沸騰中。アリゴテはブドウの糖度と熟度が上がり、質の高いものが生まれている。サシィはとても早熟で酸味が穏やかな品種。最近は見る機会が減った」と、近藤氏。
また醸造では次のような厳しい条件が課せられる。
・収穫は全房を手摘みが義務。
・運搬中につぶれた果汁を取り除くため、穴の空いたケースを使用しなければならない(酸化が品質に影響するため)。
・圧搾は150kgのブドウから100ℓのワインに制限。
・畑から瓶詰めまでのトレーサビリティの徹底。
・ラット上での泡の形成の期間は最低9か月、販売前の熟成期間は最低12か月。

格付けは最低熟成期間によって2つの上級クラスがある。
・エミナント……ラット上で最低24か月の熟成。
・グランド・エミナント……ラット上で最低36か月の熟成。品種はピノ・ノワールとシャルドネのブレンドまたは単一(ロゼはガメイを20%までブレンドできる)。収穫時の最低アルコール度数は10%。圧搾時に抽出された果汁の75%のみしか使用できない。ドサージュ12g/ℓ未満のブリュットのみ。

 

以下はセミナーで試飲した6種。「」内は近藤氏のコメント。

 

①クレマン・ド・ブルゴーニュ ベグール・ロゼ・エクストラ・ドライ/生産者:カーヴ・バイィ・ラピエール
シャブリ地区の近くにある生産者組合で、1972年に設立。ピノ・ノワールとガメイのロゼで熟成16か月。
「赤いチャーミングなサワーチェリーやクランベリーに、ハーブやゼラニウムなど花の香りも。凛とした緻密な酸にエレガントな口当たり。華奢で可憐で、合わせるのは魚のカルパッチョ、つぶ貝、サザエとも」。

②クレマン・ド・ブルゴーニュ ブリュット/生産者:ドメーヌ・カトリーヌ・エ・ディディエ・トリポ
1989年設立。2018年からオーガニック栽培に転換。粘土・石灰質の土壌からできるシャルドネ100%の白のクレマン。
「クレマン・ド・ブルゴーニュらしい味わい。白い花やローストしたアーモンドの香り。フルーツの要素が強く、ストラクチャーはやわらかく肉厚。やや温度を上げた8℃くらいのサーブがおすすめ。厚みがあるので、豚の生姜焼きや、クリーミーなホタテや川魚の料理にも。幅広い料理に合わせられる」。

③クレマン・ド・ブルゴーニュ サンシャルニー No56 ブラン・ド・ブラン/生産者:カーヴ・ド・リュニィ
マコネで400人の生産者が所属する協同組合が手掛けるシャルドネ。畑は粘土石灰質で南、南東向き。マロラクティック発酵、ドサージュ10g/ℓ。
「やさしいミネラルに包まれた柑橘系の香り。クミン、コリアンダー、グラスを回すとナチュラルチーズの香りも。味わいはピュアで、弾けるようにフレッシュな酸。セビーチェ、タコス、カプレーゼなど、眩しい陽光を想わせる料理に」。

④クレマン・ド・ブルゴーニュ サンシャルニー No82 ブラン・ド・ノワール/生産者:カーヴ・ド・リュニィ
③と同じ協同組合で、こちらはピノ・ノワール80%とガメイ20%。マロラクティック発酵、ドサージュ10g/ℓ。
「赤リンゴ、ネクタリン、オレンジブロッサムに、白コショウやローストアーモンドの香りも。ミネラルを伴う酸が太く、ヒレのトンカツやオックステールの煮込みなど、脂質の少ない肉料理に」。

⑤クレマン・ド・ブルゴーニュ エミナント ヴェリゼ・ドール ブラン/生産者:カーヴ・ド・ヴィレ
マコンで1928年に設立の協同組合で、150名の生産者が所属。240haの畑を所有。最低熟成24か月のエミナント。
「糖度の高さを感じる、熟度の高いリンゴやラフランス、黄桃の味わい。ポプリやドライフラワーの清涼感もあり、複雑で多層的。アフラーフレーヴァーは心地良い苦味に、チーズやナッツの香りも。オマールエビや魚のムニエルに合わせられる、ガストロノミックな1本」。

⑥クレマン・ド・ブルゴーニュ グランド・エミナント ペルル・ドール 2017/生産者:メゾン・ルイ・ブイヨ
ニュイ・サン・ジョルジュで1877年設立の歴史的なメゾンが手掛ける、最上級のグランド・エミナント。ピノ・ノワールとシャルドネの最初の圧搾の果汁のみ使用。ベースワインの10%は6か月の樽熟成。ドサージュ6g/ℓ。熟成36か月以上。
「オレンジブロッサム、トースト、シナモン、クローヴ、ハードチーズ、ほのかにローストアーモンドの香り。味がやさしく立ち上がり、素朴でありながらエレガント。質の高い酸とリッチな余韻で上質。鉄分を伴う赤みの肉、夏ジカのローストや、あんかけの鮑など中華料理にも寄り添う」。

(N. Miyata)

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