どんな魚と合わせる? リアス・バイシャスのアルバリーニョ

左から「パゾ・デ・サン・マウロ 2022」、「ダヴィラ 2022」。残り4本はすべてヴァル・ド・サルネス産。「レクトラル・デ・ウミア 2022」、「アッティス・リアス・フィナス 2021」、「パコ・エ・ロラ 2021」、「マルティン・コダックス・ヴィンデル 2020」。

 

スペインの白を代表する一角、アルバリーニョ。ミネラル感やフレッシュな柑橘のアロマが持ち味で、和食に寄り添うと日本でも人気が高い。ガリシアのDOリアス・バイシャスは、アルバリーニョが生産の97%を占める本場だ。
6月20日、DOが主催するアルバリーニョの試飲会が都内で開催された。同日開かれた試飲セミナーでは、スペインワインのスペシャリスト 菊池貴行ソムリエが登壇し、5つのサブゾーンの特色と魚介を中心にペアリングのコツを説いた。

 

セミナーの講師を務めた、菊池貴行氏(市ヶ谷 Tinc gana シェフソムリエ)。

産地データ

DOリアス・バイシャスには169軒のワイナリーがあり、4,321haのブドウ畑が広がる。大西洋に面した冷涼な海洋性気候で、年間降雨量は1,500mmとスペインではとくに雨が多いのが特徴。ただし7〜9月は雨が少ないためブドウ栽培に適している。伝統的なワイン産地で樹齢200年超の古木も残る。湿度が高いため、風通しを良くするようペルゴラ仕立てが主流だが、最近は生産性の向上とともにペルゴラをやめて機械収穫にシフトする生産者も出てきている。土壌は水捌けの良い花崗岩質が中心。

「リアス・バイシャスのワインはアメリカやイギリスを中心に国際市場で人気が高まっている。昔から小規模のブドウ栽培農家が多い地域だが、1970年代から高品質化がすすみ、現在はワイナリー同士の合併などで生産性が向上している」と、菊池氏。

現在5つのサブゾーンがあり、アルバリーニョのキャラクターは、海沿いか内陸かの立地条件や、土壌の種類、醸造によって変化する。
以下は各サブゾーンの特徴とセミナーで試飲したワイン。「」は菊池氏のコメント。

 

⚫︎ヴァル・ド・サルネス

歴史的な産地で、リアス・バイシャスの心臓部。ワイナリーの半数以上が集まる。大西洋に面していて冷涼多湿、岩塩鉱山の多い土地で、酸の高いワインができる。海風がワインに塩気をもたらす。

①「パコ・エ・ロラ 2021」/生産者:パコ・エ・ロラ
ステンレスタンクで発酵、3か月のシュール・リー。
「ミネラル感がよく現れ、柑橘を主体に白い花のアロマ。フレッシュな酸で輪郭がはっきりしている。前菜やカルパッチョ、レモンを絞ったアンチョビなどに。ガリシアでは亀の甲やマテ貝とよく合わせられる」。

②「レクトラル・デ・ウミア 2022」/生産者:レクトラル・デ・ウミア
野生酵母で発酵、9か月のシュール・リー。
「コンポートした果物の甘い香り、ナッツ、ミネラル感、まろやかな酸。すっきりしながらボディがある」。

③「アッティス・リアス・フィナス 2021」/生産者:アッティス・ボデガ・イ・ビニェドス
ステンレスタンクとオークの発酵槽で、6か月のシュール・リー。
「マーマレード、アーモンドの香りが豊か。酸が高くふくよかさを感じるため、ゴデーリョに近い使い方ができる。根菜の料理、ローストした魚、ロブスターなどと。米の甘味にも馴染む」。

④「マルティン・コダックス・ヴィンデル 2020」/生産者:マルティン・コダックス
ステンレスタンクと焼いていない仏オーク小樽で発酵。ステンレスタンクで最低1年の還元的熟成。
「こくのあるアルバリーニョ。洋梨、花梨、マンゴー、パイナップル、金木犀、ローストアーモンドの香り。しっかりした酸と木樽由来のタンニン。白ワインソースなどさっぱりした味付けの肉料理に」。

 

⚫︎コンダード・ド・テア

ポルトガルに近く、ミーニョ川の左岸にあり、ミーニョ川の支流テア川流域のサブゾーン。内陸にあるため夏は蒸し暑く40℃を超える地域。花崗岩のほかスレート土壌や石灰質土壌があり、ブドウが完熟しやすい環境。ヤツメウナギの名産地。

⑤「パゾ・デ・サン・マウロ 2022」/生産者:パゾ・デ・サン・マウロ
ステンレスタンクで10〜15日間発酵。
「柑橘ベースに、梨やアプリコット、カモミールの香り。酵母の香りもはっきりしていて、Alc 12.5%ながらふくよかでフルーティー。スレート土壌からの石灰を想わせるミネラル感。名産のヤツメウナギほかアナゴ、サーモンなど脂の多い魚に」。

 

⚫︎オ・ロサル

コンダード・ド・テアの左隣にあり、大西洋に面してポルトガルの国境沿いに広がる。ミーニョ川沿いに段々畑の畑が広がり、ロウレイロの栽培も盛ん。「ふくよかで、南のテイストをもったアルバリーニョになる」と、菊池氏。

⑥「ダヴィラ 2022」/生産者アデガス・ヴァルミニョール
アルバリーニョ48%、ロウレイロ47%、トレイシャドゥーラ5%。アルバリーニョとロウレイロは2か月シュール・リー。
「ハーブや月桂樹の清涼感のあるタッチは、ロウレイロ(ローレルが由来)から。リンゴや桃など様々な香りがあり、膨らみがあって、フルーティーで多層的。守備範囲の広い白」。

⚫︎リベイラ・ド・ウリャ

2000年にサブゾーンに認定され、まだ生産量の少ない新興産地。肥沃な沖積土壌からフルーティーな赤や白のワインができる。最北のサブゾーンで、巡礼地サンティアゴ・デ・コンポステーラの南西に位置している。

⚫︎ソウトマイヨール

1996年に認定さた非常に小さなサブゾーン。畑の面積は10haのみ。生産者もわずかで、そのワインは滅多にお目にかかれない。土壌は花崗岩の母岩に浅い砂の表土。入り組んだ海岸線のもっとも奥まった入江で、アサリや牡蠣の名産地でもある。

 

魚介類とのペアリング:

タコ、貝類、白身魚、小型の甲殻類、青魚
これらのガリシアでもよく見られる魚介とのペアリングについて、菊池氏は次のように解説した。
「塩加減、酸味、油分、この3つの要素がアルバリーニョのテンションと合っていることが重要。私はアルバリーニョを試飲する時は塩とレモンを用意して、口に含んだ時に、塩のしょっぱさが残るかどうか/ワインのふくらみがあるかどうか、でペアリングを決める。アルバリーニョを飲むことで口の中で塩味が抜けてワインの甘味が出てくる場合は、塩をよく効かせた前菜などを考える。逆に塩味やミネラル感が少ないアルバリーニョであれば、やはり塩味や酸味を抑えた料理が合わせやすい。南の産地の酸がやさしいアルバリーニョはレモンの酸味に負けてしまうので、料理も酸の強くないもので合わせたりする」。

また同じタコや魚であっても、食材の鮮度を活かした一皿にはミネラル感のしっかりしたアルバリーニョを、よく茹でたり焼いたりするのであれば、熟成タイプを持ってくると良いそうだ。

ウナギや穴子、サーモン、大型の甲殻類
「ウナギや穴子など脂の多い魚は、こくがあって粘性のあるアルバリーニョと。大型の甲殻類は素材の甘みを活かすため、ふくよかで酸の強すぎないタイプが良いだろう」。

その他の食材として、野菜であれば「ビネガーを使うタイプであればヴァル・ド・サルネスの酸がすっきりしたタイプ、温野菜であれば南の方の酸が穏やかなタイプと、使い分けができる」。肉は「アルバリーニョなら樽熟成させたタイプを。そして肉であればリアス・バイシャス産の赤にも注目。コンパクトで飲みやすく、アルコール度数が控えめなタイプが多いので、現地のガリシア牛のローストビーフ、さっぱりした豚や鶏肉料理などに」と、紹介した。

 

(N. Miyata)

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