オーストリアワインの輸入元エイ・ダブリュー・エイ(AWA)が今年、創立30周年を迎えた。これを記念して3月1日、都内で試飲商談会が開かれた。ワイナリー23軒の商品が紹介され、現地から生産者たちも駆けつけた。プロ向けのマスタークラスも2つ開講された。※『WANDS 2024年5・6月号』に、その1つ「オーストリアと北海道のツヴァイゲルト」のレポートを掲載。ここではもう1つを報告する。
DACの畑の格付け
オーストリアの高品質ワインの原産地呼称DACは、18産地が認定されている。それはピラミッド型に3等級に分かれる。ゲビーツヴァイン(地方名ワイン)、オーツヴァイン(村名ワイン)、リーデンヴァイン(単一畑ワイン)だ。
この日、ツヴァイゲルトのマスタークラスに登壇したアンドレアス・ウィックホフMWによれば、18産地の中に、村がおよそ900あり、単一畑がおよそ5,000あるという。さらに単一畑の中には、エルステ・ラーゲ(一級畑)が15~20%、グロッセ・ラーゲ(特級畑)が3~5%ある。ブルゴーニュ式の畑の格付け制度を採用しているが、これは1991年からÖTW(オーストリア伝統醸造所連盟)が導入に取り組み、2023年、法的に承認された。
この日、ÖTW会長であるミヒャエル・モースブルッカー氏も来日していた。井黒卓氏(銀座ロオジエ シェフソムリエ)とともに、地方/村/単一畑ごとのグリューナー・ヴェルトリーナーを解説した。
まずグリューナー・ヴェルトリーナーの味・香りの特徴について、モースブルッカー氏は「ほかの品種とは異なる独自の香りだ。よく白コショウ、と言われるが、これはマーケティングで生まれた表現で、私は賛同しない」とコメント。一方、井黒氏は「一言では言い表せない。ニュートラルで、口の中で味が広がり、終盤に苦味を感じる。この力強さが特徴だが、熟度によっても変化する」と話す。以下、試飲した3つのフライトをまとめる。
フライト1:地方名ワインのグリューナー・ヴェルトリーナー
最初のフライトは地方名ワインで、ヴァッハウDAC、クレムスタールDAC、カンプタールDACの3種。「1963年以前はすべてヴァッハウだったが、政治的な理由で産地が分かれた。また、それぞれのDACに寒い場所も暑い場所もある。だからDAC同士を比べる時は、各DACの中間を見るのが重要となる」と、モースブルッカー氏。
フライト2:村名ワインのグリューナー・ヴェルトリーナー
二番目のフライトは村名ワインで、以下の3種。
「クノール フェーダーシュピール 2022」
ヴァッハウDACのロイベン。ヴァッハウの中でも低地の暖かい場所。ハーブ、アプリコット、果実味はたっぷり。口の中ではストラクチャーをしっかりと感じる。
「ユルチッチ ランゲンロイス 2022」
カンプタールDACのランゲンロイス。DACの中央にある村で、気候は暖かい要素と寒い要素が組み合わさるという。柑橘、ハーブなどの清々しい香り、口当たりはなめらかで、果実味が鮮明。
「シャーブル ルッパースタール ヴァーグラム 2022」
ヴァーグラムDACのケーニヒスブルン。DACの中では東端で、もっとも暖かい。よく熟した果実味には広がりがある。骨格とテクスチャーにはエネルギーがあり、塩味と苦味がバランスをとる。
フライト3:単一畑ワインのグリューナー・ヴェルトリーナー
三番目のフライトは単一畑ワインで、以下の3種。各畑の個性が際立ち、比較試飲すると違いが顕著。
「シュタット・クレムス リード・ワインツィアベルク 1エーテベー 2021」
クレムスタールDAC、クレムス・アン・デア・ドナウ内の一級畑。低地で、比較的暖かい環境。ワインは酸がまだ若々しく、リンゴやアプリコットの香り。「テンションがしっかりあって、力強い。一見やわらかいが、張り詰めた緊張感がある」と井黒氏。
「Fj グリッチ リード ホーフライン スマラクト 2019」
ヴァッハウDAC、シュピッツ内の単一畑。標高450mで冷涼な環境。クリーミーな香りが顕著で、ココナッツミルクの優しい味わいに、スイカズラやハーブなど複雑な味の組み合わせ。しなやかなで個性がたっぷり。
「シュロス・ゴベルスブルク リード レンナー 1エーテベー 2016」
カンプタールDAC、ランゲンロイス内の一級畑。テクスチャーがとても堅牢で、口当たりはなめらかで心地よい。なお、モースブルッカー氏はシュロス・ゴベルスブルクの現オーナーである。この畑の上方には一級畑ガイスベルグがあり、そこではリースリングを植えている。
モースブルッカー氏は「地方から単一畑までを飲み比べていただいて、その差が非常に大きいと理解いただけたと思う。同じグリューナー・ヴェルトリーナーでも、単一畑は表現が複雑で、緻密な違いがある。なんといっても単一畑は、個性がしっかりと出る」と締め括った。
(N. Miyata)
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