- 2026-2-10
- Wines, イタリア Italy

昨年末、オルネッライアのCEO マルケーゼ・ランベルト・フレスコバルディ氏とGMのマルコ・バルシメッリ氏が来日し、オルネッライアの新ヴィンテージ2022年を披露。この年は「決意」という言葉が与えられた。そして特別なアートボトルはカメルーン出身のアーティスト、パスカル・マルティン・タイユー氏が飾った。それは「生命のサイクル」を表現しているという。
さて、2022年のオルネッライアはどのような個性を秘めているのだろうか。
マルケーゼ・フレスコバルィ
まずマルケーゼ・ランベルト・フレスコバルディCEOが、フレスコバルディ家について語った。1000年以上も続く一族で、1100年頃に北欧からフィレンツェに移住。そして当時フィレンツェに購入した邸宅に、今でもずっと住み続けているという。銀行家として成功した一族で、トスカーナだけでなく欧州全体に広げ、1300年頃から街中からブドウ畑まで多くの土地を手中に収めていった。その中の一つがボルゲリだ。
「1000年以上の歴史があり、古文書も多く残っています。その中にはさまざまな伝統も革新も記されています。ある時点で革新的であった事柄も、いずれも伝統となっていくものです。40年前には、赤ワインで有名なトスカーナでサンジョヴェーゼではなくカベルネ・ソーヴィニヨンで打ち出したボルゲリは革新でした。でも今では伝統的な場所となっています。私たちのオルネッライアは、シリアスなプロダクトです。真面目に向き合うべきもの、あるいは哀愁を感じるものです。常に謙虚であるべきだと思っています」と、マルケーゼ。
新テクニカル・ディレクター
その一方で、2024年1月よりテクニカル・ディレクターに就任したマルコ・バルシメッリ氏が、ボルゲリの立地について解説した。
ボルゲリは海に近い産地ながら、オルネッライアの畑は複数あり赤ワイン用品種の栽培面積は119ha、白ワイン用品種は15haある。そしてその大部分が、標高200〜600mの丘陵に囲まれたすり鉢状の場所にある。
「海の影響で、冬は内陸より暖かいが、夏は内陸よりも涼しく、春と秋は穏やかな気候」と、バルシメッリ氏。
「例えば8月は日中に32℃まで上がっても、海風が常に吹いているので夜は20℃以下に下がります。だから夕方以降は夏でも何か羽織るものが必要ですよ」という。内陸部は谷が多くあり狭いため、いったん温度が上がると気温がこもったままになるが、ボルゲリは海風によって暑い空気が止まることがない。実際にフィレンツェとボルゲリでは夏の7〜8月の気温が5℃ほど異なるという。夏の日較差が10℃以上あることにも驚く。
バルシメッリ氏はオルネッライアに来る以前、ボルドーのシャトー・グリュオー・ラローズに勤務の後、カリスマ的コンサルタントの一人として知られるエリック・ボワスノー氏のチームの一員として15年間仕事をし、世界各国合計150ものワイナリーを見て来た人物だ。彼にメインとなるカベルネ・ソーヴィニヨンの成長について尋ねると、「発芽はボルゲリの方がボルドーより早く4月初旬に始まり、収穫は9月。発芽も収穫も少しずつ早い」という。大きな違いは、太陽光が海に反射してあたるため、直射日光と反射した光の両方の効果で光合成が盛んになること。そのため、ボルゲリの方がブドウの成熟が進み、アロマもよりフルーティーでエネルギーに溢れた表現になる。一方でボルドーはよりシャイだという。また、海風により夜間が涼しくなること、年間725mmの降水量があり、粘土質土壌もあることなどから、成熟がゆっくりと進み糖度と酸度とフェノールとアロマの成熟時期がちょうどうまく重なる。これがアドバンテージになっているのだ。
オルネッライア2022年
2022年の気候は、前半は複雑で気まぐれ。8月以降になってようやく美しいヴィンテージに。そのため、「よし、素晴らしいワインを造るぞ!」という「決意La Determinazione ラ・デテルミナツィオーネ」を表した、という命名のようだ。
実際、冬は平年並みながら、春は冷涼でドライ。5月以降もずっとドライで、ブドウにとって成長・開花・ヴェレゾンの時期に水不足でストレスがかかり、収穫量が減少することは明らかとなった。その後暑くて乾燥した天気が一変し、8月に結構な雨が降り、9月も雨で冷涼感があったため、結果的にバランスが取れたという。
そして、気まぐれなヴィンテージの結果、小粒で凝縮しフレッシュさも兼ね備えたブドウが得られることになった。この年のブレンド比率は、カベルネ・ソーヴィニヨン55%、メルロ25%、カベルネ・フラン10%、プティ・ヴェルド10%。いつもは5〜6%のプティ・ヴェルドが、この年は10%も使っているが、最も多い年でもなく、2014年や2018年も多かったとのこと。
「プティ・ヴェルドは良い品種だが基本的にはスパイス的な品種。バラやスミレなどカベルネにない香りがあり、色も濃く、ストラクチャーも強い。ただ、比較的ルスティックなタンニンなのでとてもデリケイトに醸造する必要がありますね。2022年は凝縮して素晴らしかったので、スパイスやスミレの個性がよい役割を果たしました。ただ、カベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フランの方がさらに品質が高いので、特に今後プティ・ヴェルドを増やすという予定はありません」と、バルシメッリ氏。
香りは凝縮していて、熟度の高いチェリー、ベリー、カシス、スミレ、スパイスなど複雑性も感じられた。口中ではとても滑らかで、まろやかさもあり、凝縮して緻密な味わい。特に豊かなタンニンの細やかが印象的。インキーだと感じるぐらいギュッと詰まった味わいながら、果実風味が広がり今でも飲めてしまう。でも、5年、10年と熟成させてみたいとも思わせる完成度の高さだ。
マルコ・バルシメッリ氏は、2022年ヴィンテージはブレンドのみ担当している。2023年から醸造にも関わり、2024年からが全てに携わった作品になる。栽培と醸造で何か新たな試みを始めたかどうか尋ねたが、畑は2010年から草や堆肥の管理・土壌や葉の分析など緻密に行なっており、土壌の生命力もあると確認しているため、それほど変えていないという。醸造についても、「オルネッライアの哲学スタイルを守りながら、よりタンニンの品質やフレッシュさの追求をしていく」と、謙虚な返事だった。今後のヴィンテージも楽しみにしたい。
(text: by Y. Nagoshi)
















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