斬新なるボルドーの顔 前置き

ボルドーは、いうまでもなく偉大なるワイン産地として知られている。ただ、見方によれば偉大という言葉の裏には敷居が高すぎるイメージがあったり、クラシックで伝統的であることが古めかしさに繋がったりする可能性がある。

ボルドーワイン委員会C.I.V.Bは、ボルドーでもモダンで斬新なスタイルの個性派が徐々に台頭し始めていることを伝えるために、2020年12月初旬にウエビナーを開催し3名の生産者による3本のワインを紹介した。

 

生産者の紹介に先立ち、ボルドーの現状=前提を記しておく。

栽培面積:約95,000ha(生産量の88%が赤ワイン)

AOC 31

生産量:約410万hl(5億5500万本相当)

品種別栽培面積:メルロ66%(71,000ha)、カベルネ・ソーヴィニヨン22%、カベルネ・フラン9%(9,500ha)、マルベック2%(2,000ha)、プティ・ヴェルド1.1%(1,200ha)、カルメネール0.05%(58ha)

*この20年で、マルベック、プティ・ヴェルド、カルメネールの栽培面積は倍増し、3,200hat強になった。これら3品種は、花ぶるいを起こしやすい、成熟しにくい、安定しないなど、様々な理由で栽培面積が減少していたが、この20年で見直され、改良改善が行われ徐々に増えてきた。この結果、ブレンドの多様化、これらの品種が補助品種ではなく主要品種になる、あるいは単一品種のキュヴェも生まれることになった。

 

栽培:温暖化の影響により、晩熟の台木の使用が増えてきている(特にメルロ)。また、キャノピーマネージメントにより日照量をコントロールする工夫も凝らすようになった。

サステイナブル認証取得も増え、ボルドー全体の65%となった。さらに、有機栽培、バイオダイナミックの認証取得も。

醸造:なるべく介入しない造りが、ボルドーでも広がっている。

例えば、マセレーション期間を短くしたり、ルモンタージュも少なくしたりなど、抽出を控えめにする傾向にある。酵母も自生酵母のみにする造り手が増えている。

樽の使用も、熟成期間を短期にしたり、新樽比率を少なくしたり、容量も225ℓがスタンダードだが、500ℓの導入も。加えて、コンクリートタンクやアンフォラの使用も見られる。

極少数だが、SO2添加ゼロのキュヴェもある。

 

この変化に対し、ボルドーワイン委員会会長のファビアン・ボヴァ氏は以下のように説明した。

「歴史的観点からすれば、ボルドーはずっと革新とともに歩んできた産地だと言える。研究者たちの努力の蓄積、科学技術の発展を実践する場所でもあり、常に研究と現場とが連携してきたというのがボルドーの強みでもある」。

また、今回紹介することになったモダンなワインの生産者の世代を尋ねると、いずれも30代のようだ。親の世代からも多くを学び、伝統も大切にしながらも、同じことはしない。気力、体力、経験などのバランスが良く勢いがあり、リスクはあっても新しいことに挑戦するのに最も適した年代だと言える。ダヴィッド、マルク、ヤニックの3人が、どのようなワインを造っているのか楽しんでいただきたい。(Y. Nagoshi)

トップ画像:Crédit photo CIVB : Favoreat / M. Anglada

取材協力:ボルドーワイン委員会

斬新なるボルドーの顔 その1 SO2 ゼロの IPSUM

斬新なるボルドーの顔 その2 カルメネール100%  Château Recougne

斬新なるボルドーの顔 その3 プティ・ヴェルド100%でアンフォラ使用 Petit Verdot by Belle-Vue

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