サンタ・カロリーナのレガシーを守る新しい選択

andres1875 年の創業以来、サンティアゴ市内のワイナリーでワイン造りを続けるサンタ・カロリーナは、2010 年の大地震で甚大な被害を蒙った。国定史跡に指定されている19 世紀の地下セラーは無事だったが、階上部のダメージが大きかった。これを機に建物の修復プロジェクトとともに進めたのが文化遺産とワイン造りの伝統を守ろうという取り組みだった。チーフワインメーカーのアンドレス・カバジェロにその内容を聞いた。

 

2010 年に半壊した建物の中から20 世紀半ばに書かれたブドウ栽培やワイン醸造に関する書類が出てきた。これを基にして新しい技術を加え、次の世紀に伝える二つの記念碑を作ろうと決めた。

 

ひとつは創業者ルイス・ペレイラの名をつけたアイコンワインを造ることだ。カベルネ・ソーヴィニヨンを主体にしたブレンドで、アルコール分は昔とほぼ同じ13%にする。そのために収穫時期を通常より1 か月も早めた。マセレーションも古い醸造レシピに倣って短くした。熟成は古樽で1 年間、さらにフレンチオークのフードルでさらに1 年熟成させた。収穫が早くても香りに青さは残らない。赤いフルーツにスミレ、プラム、ナツメグなどの香りが混ざる。瑞々しい味わいで、しなやかなタンニンと酸味のバランスがとれている。

 

もう一つの記念碑は「ブロケ・エレンシアBloque Herencia」と名付けた事業。これはサンタ・カロリーナの畑だけでなく、チリ全土に残っているプレ・フィロキセラの古木を探しだして、そのDNA を守ろうという取り組みだ。これによって遺伝子レベルで信用できる苗木の供給が可能になり、クローン使用を抑制することでチリワインにさらなる複雑味が増すことになる。初年度はチリ各地を回って古木を探し、ウイルスに罹っていないかをチェックし、その穂木をトティウエの実験畑に植えた。これを増殖して苗木をつくり、4 年を費やしてDNA分析をすることになる。

vineyard

サンタ・カロリーナの実験畑

 

すでに110 品が植えられていて、このうち88 品がDNA 分析を終えている。この過程でロマノという品種が見つかった。ロマノはブルゴーニュ品種のひとつだったがフィロキセラに弱くて絶滅種になった。チリには19 世紀に移植され、1919 年にはサンタ・カロリーナの3.42ha で栽培されていたという書類が残っている。

 

2013 年に400 本のロマノから2 樽分のワインを造った。2014 年秋に訪ねた折に試飲した。「淡い色合い、パンチダウンで色とタンニンを抽出した。煙のニュアンス、ベリーやチェリーのアロマ。軽いタンニン、酸味はしっかりして、後口に苦みがある。素朴なピノ・ノワール」とメモしてある。(K.Bansho)

画像:ロマノの古木(トティウエの畑)

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