エディターズ・チョイス2016 〜今年最も印象に残った銘柄・出来事〜

2016年も残りわずかとなりました。WANDSのウエッブを今年も楽しんでいただけましたでしょうか。まとめとして編集4名の「今年最も印象に残った銘柄・出来事」を記事にしました。

来年の酉年も皆さまのお役に立つ情報をなるべく多くアップロードしていけるよう、心がけようと思いますので、2017年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

オコタ・バレルのテラスにて

 

最も印象に残った銘柄 by M. Yoshino

<レンズウッドの澄み切った空気のなかで  オーガニックフードとともに楽しんだ  オコタ・バレルのシャルドネ2016>

2年ぶりにオーストラリアに足を運んだ。今回のメインテーマはシラーズ。オーストラリアのシラーズというと、日本ではワイン愛好家ですらいまだに多くがヘビーでジャミーでオーキーというイメージを思い浮かべるのだろうが、そうしたイメージはすでに過去のもの。オーストラリアのワイン造りはここ10年、20年間に大きく進化している。次々と開発が進み、発展している冷涼産地では新しく多様なスタイルのワインがつくられているし、バロッサやマクラーレンヴェールなどの伝統産地でもオーストラリアならではの豊かな果実の風味を大切にしながら、エレガントで、緻密なタンニンときれいな酸とのバランスに優れたワインが産出されている。

 シラーズに限らず、今回のオーストラリア取材ではたくさんの忘れられないワインに出会った。新興産地のひとつグラニットベルトでは、最近オーストラリアで“次世代ワイン”として注目が集まりつつあるイタリア系の様々な品種のワインがつくられていて、とくに白のフィアーノはレモンの皮をかじったようなフレッシュ感とクリーミーな味わいが特徴。日本の食とも相性が良さそうだ。アデレイドヒルズの雄、ショウ+スミスがタスマニア島の葡萄を使ってつくる「トルパドル」のシャルドネやピノ・ノワールは、オーストラリアワインの新しいスタイルのひとつを示唆しているだろうし、マギル・エステートの高級レストランで試飲の僥倖に恵まれた「グランジ 1986」は生涯おそらく忘れられないワインのひとつとなるだろう。

さて、今年のワインを1本選べといわれて悩んだ末に、最終的に決めたのはOchota BarrelsのThe Slint Vineyard Chardonnay 2016。パンクミュージック大好き人間のダラス・オコタがつくるオーガニックワインだ。レモンやカスタード、厚みのあるストラクチャー、ピュアな酸。何杯も飲みたくワインなのだが、このワインを選んだ最大の理由は、森閑として清澄な空気のもと、葡萄と同じように自然のままにつくられたセロリやピーマン、オリーブ、サラミ、チーズ、パンなどと一緒にワインを味わう喜びだ。高級レストランで、高価な食材を使って手間暇かけてつくられたディッシュとともに味わう高額ワインはもちろん得がたい経験なのだが、森に囲まれたガレージ・ワイナリーの横につくられたウッドデッキに腰掛けながら行ったオコタ・バレルでのワインの試飲はワインを楽しむことの原点、ワインを媒介としてシンプルだけど今この瞬間を楽しむことの素晴らしさをあらためて教えてくれた。

 

ダラス・オコタ氏は自らのワインを提供するレストラン「Lost in a Forest」も経営している

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