オスピス・ド・ボーヌ競売会 2014 年水準に戻った落札価格

第156 回オスピス・ド・ボーヌ競売会が11月第3 日曜日の20 日に開かれた。

1 樽当たりの平均落札価格は赤ワインが12,799 ユーロ(約154 万円) で、前年比23.26%減、白ワインが13,728 ユーロ(約165 万円)で前年比35.94%減、赤、白あわせた平均落札価格は12,994 ユーロで前年比26.36%下落した。

 

合計落札樽数は前年より21 樽多い596 樽。ワインの合計落札金額にオー・ド・ヴィ7 樽とフィーヌ・ド・ブルゴーニュ2 樽を加えた合計落札額は7,753,986 ユーロ(約9 億3000 万円、手数料を除く)となった。史上最高の落札金額を記録した2015 年の10,156,644 ユーロ(約12 億円)に比べると23%ほど少なくなったが、2014 年を僅かに上回り、史上2 番目の売り上げとなった。

 

2015 年競売会は、パリで130 人が犠牲になったテロ事件直後におこなわれ、これを悼んで冒頭、全員起立の国歌斉唱で始まった。2016 年は28 年間オスピス・ド・ボーヌ管理責任者を務め、出張先の中国で競売会の直前に急死したアントワーヌ・ジャケ氏に全員起立で黙祷を捧げた。

 

クリスティーズが競売会を主催するようになってから一般愛好家が競売に参加できるようになり、これが価格を押し上げる力になっていたが、今回は2015 年に落札価格があまりにも高騰したため、こうした顧客が興味を失ってオスピス離れが起こり、空席の目立つ閑散とした雰囲気の中で始まった。

オスピス・ド・ボーヌの中庭

 

この10 年来、オスピス・ド・ボーヌ競売会の最大落札者であるネゴシアン・ビショーのアルベリック・ビショー社長が病気で欠席したほか、毎年会場で顔を合わせるネゴシアン、有力栽培家の姿がなく、精彩を欠いたものになった。

 

最初のキュヴェ「ボーヌ・プルミエ・クリュ・ダム・オスピタリエール」は、2015 年の13,000 ユーロに対して10,000 ユーロで落札され、価格下落を予感させるスタートとなった。その後、しばしば最高落札額キュヴェとなる「グラン・クリュ・クロ・ド・ラ・ロッシュ・シロ・ショドロン」が2015 年比42%安い61,000 ユーロで落札され下落トレンドが明確になった。

 

落札全額が慈善団体に寄付される議長キュヴェの競売は4 時過ぎに始まった。2015 年は事前に選ばれた2 慈善団体に加え、急遽、テロ被害者全国連盟が加えられて、3 団体に寄付金が送られることになったこともあり「グラン・クリュ・コルトン・ルナルド(228 ℓ)」が480,000ユーロと驚異的な価格で落札された。

 

これに対して今回は映画監督のクロード・ルルーシュ氏、女優のヴァレリ・ボネクトンさん、ピアニストのカティア・ブニアスティシュヴィリさんらが壇上で金額の上乗せを叫んだが、会場の反応は冷ややかで、結局、最終落札額は前年の半額以下の200,000 ユーロに留まった。落札したのはボーヌのホテル経営者、ジャン・クロード・ベルナール氏と翡翠鉱山オーナーで中国茶ブティックを展開する中国女性実業家。

 

今回の下落についてあるネゴシアンは、「春先の霜害や雹害の話題が世界中に大きく伝えられ、それが2016 ミレジームのマイナスイメージにつながった。加えて前年の高騰で多くの人が落札に加わる気力を失った」と、分析している。

 

しかし全体的には想定内だとする意見が多く、BIVB のルイ・ファブリス・ラトゥール会長代理は、「2014 年の水準に戻ったのは軟着陸といえる」と評価する意見を寄せた。その他の大手メゾンも「ブルゴーニュの価格が正常な水準に戻るきっかけになりバルクワインの取引も始まるだろう」と、好意的な反応を示している。

 

これまでワイン愛好家の落札割合が増えてきたが、今年はネゴシアンが70%程度を落札したとみられる。2016 年の生産量が少なかった関係で、「ムルソー・グロー(白)」と「サビニ・レ・ボーヌ・アルチュール・ジラール(赤)」の競売が見送られた。一方、ピノ・ノワールからシャルドネに転換して初めてのキュヴェ「コルトン・グランクリュ・ドクトゥール・ペスト」が新たに競売リストに掲げられた。(T. Matsuura)

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