「果実酒増税反対で要望を続けていく」と洋酒輸入協会の米井理事長

日本洋酒輸入協会の米井元一理事長は年末会見を行い、昨2016年の輸入酒業界の回顧と今年の見通しについて、要旨次のように語った。

「2016年の実質GDPは3四半期連続のプラスとなり、穏やかな景気回復が続いていると言われているが、消費市場では足踏み感が強く、我々の業界も緩やかな景気回復という実感から遠い。為替市場は昨年12月上旬までは円高で推移してきたが、トランプ旋風と米国の金利引き上げ予測を背景に円安が急速に進行している。為替レートの動向ばかりは予測や予断を許さない状況となっている。

こうしたなかで、輸入洋酒市場の一年間を振り返ると、まず、2リットル以下のワインの輸入数量が近年の堅調な伸びからマイナスに転じ、成長に陰りが見えるようになった。(10月までの)スパークリング輸入は数量で3.9%増、金額で1.9%増ながら、スティルワインは数量で7.7%減、金額で13.2%減。数量が減少し、かつその中で低価格ワインの比率が増えている。国別輸入実績では、(11月のヌーヴォーの動向次第で確定とはいえないものの)チリワインが2位フランスと7410Klの差で2年連続トップとなっている。いずれにしても、需要の頭打ちと低価格化、さらに円高が加わり金額では2桁の減少となっている。

一方、ウイスキーのなかの「その他のウイスキー」の輸入実績は、数量で6.8%増(前年同期は23.7%増)、金額で0.8%増(同30.5%増)と、昨年ほどの勢いはないものの他の酒類が伸び悩むなかで健闘している。TVのマッサン効果と、それ以前からの飲み方提案努力が相乗効果をうみだした。これは昔からあった飲み方でもそれをリポジショニングすることによる需要創造であり、マーケティングイノベーションの成果といえるだろう。

今年の最も強いインパクトは平成29年税制改正大綱に盛りこまれた(2010年からの)ワインの酒税増税である。果実酒の増税は需要の減退を招きかねないことに加え、類似する酒類間の税負担の公平性の観点からも受入られないとして強く反対してきたが、平成32年10月および35年10月という2段階増税が与党税制改正大綱に盛り込まれた。すでに当協会と日本ワイナリー協会の連盟で「ワイン増税絶対反対」の要望を発表し、各方面に要望してきたが、今後も協会会員によるチームをつくり息長く反対要望していきたい。

もう一つのインパクトは、トランプ次期米国大統領によるTPP離脱声明と英国のEU脱退であり、こうした一国主義的な発想が芽生えつつあることだ。当協会としては多角的な自由貿易体制の維持、強化の観点から、日・EU 間のEPA の早期合意、個別の2国間でのEPA がさらに進展していくことを期待している。

先般出席した金融機関との懇談会では、来年(2017年)の実質GDP成長率は1%程度、為替は1ドル100円台後半から110円ぐらいで推移するとの見通しであった。輸入酒類業界をとりまく環境は厳しいだろうが、業界の発展と会員各位の経営の安定をはかることを主旨として設立された本協会の役割をあらためて認識し、来年も会員一同努力していきたい」。

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