1834年創立のシャンパーニュの老舗メゾン、ボワゼルの6代目で2019年に社長に就任したフロラン・ロック・ボワゼル氏

6代目で2019年に社長に就任したフロラン・ロック・ボワゼル氏は、1984年からメゾンを率いてきた母エヴリーヌを引き継ぎ、兄のリオネルとともに新たなボワゼルの形を築き始めている。

ボワゼルの6代目で2019年に社長に就任したフロラン・ロック・ボワゼル氏。「ロゼ・アブソリュ」のグラスと。

シャルドネの聖地であるコート・デ・ブランにルーツがあるボワゼル家だが、自社畑は7haのみで残りの70ha分のブドウは長期契約栽培農家から購入するネゴシアンである。そして、6代目になってからリノベーションを始めているという。そのひとつは、訪問客の受け入れだ。シャンパーニュの主要都市のひとつエペルネには、シャンパーニュ通りと呼ばれ多くのメゾンの館が軒を連ねている美しい道がある。ボワゼルのメゾンもその通り沿いにあり、観光客なども訪問できるように施設を整えた。また、醸造面では区画ごとに管理できるように小ぶりのタンクを多く揃えた。

「近年は、シャルドネとムニエの比率を上げ、ピノ・ノワールは下げる傾向にあります。一方でリザーヴワインの比率は上げています。こういったことにより、美しいテクスチャーや余韻の長さ、テンションやフレッシュさなどを大切にした、より精密なブレンドを行うようになりました」と、フロラン氏。

スタンダードのキュヴェ、「ブリュット・レゼルヴ」を試飲した。フローラルな香りには、熟した白桃やベリー類、バニラやアーモンドなども感じられ、柔らかなタッチで心地よいテクスチャーが印象的だ。現行のキュヴェは2019年がベース。リザーヴワイン(2018、2017、 2016年)の比率は40%で、そのうちフードル(3年以上使用したもの)に貯蔵したものが4%含まれている。これにより、ドザージュ量を7g/ℓ(それ以前は8g/ℓだった)に減らしたという。

「ウルティム・ゼロ」はドザージュ・ゼロのキュヴェ。15年前から造っているという。「しかし、バランスが重要で鋭角的にならないよう工夫しています」と、フロラン氏。そのため、収穫量が少ない古木のブドウを用い、瓶内での熟成も5年以上行っている。柑橘類や硬めの白桃を思わせるハツラツとした香りで、ふくよかさも感じられフレッシュな酸が細く長く続く。

「ブラン・ド・ブラン ラ・コート プルミエ・クリュ」は、コート・デ・ブランのグラン・クリュとプルミエ・クリュのブドウを使っている。シュイィ、アヴィーズ、メニル・シュール・オジェ、そしてボワゼル家のルーツがあるヴェルテュのブドウ。100年以上ブラン・ド・ブランを造り続けているそうだ。現行は2019年がベースで、リザーヴワインは20%ブレンド。ドザージュは6g/ℓ(以前は8g/ℓだった)。清涼感ある香りで若々しく、味わいもしっとりし、果実と酸とミネラルのバランスが秀逸。

「グランド・ヴィンテージ 2013」は、特別な年にだけ生産するキュヴェ。2013年はモンターニュ・ド・ランスのピノ・ノワールと、コート・デ・ブランのシャルドネだけを使用。100%ステンレスタンクで醸造。瓶内熟成は最低8年間行い、2013年は2022年6月にデゴルジュマン。ドザージュはわずか4g/ℓ。「クラシックな年でブドウの成熟に時間がかかったが、コンセントレーションがあり、余韻にほのかに旨苦味が感じられる。長期熟成可能性の高いヴィンテージです」。ナッツやバニラ、トースト、マジパン、少しドライな果実、アプリコットなどが感じられる香りで、ふくよかさと同時にキリッとした酸とミネラルがあり、繊細で余韻が長い。

トップ・キュヴェの「ジョワイヨ 2008」は、ラベルデザインが新しくなり「ジョワイヨ・ド・フランセ」から名称も変更した。「1961年に祖父が初めて造り始めたキュヴェで、長期熟成可能なヴィンテージにだけ造ります。熟成感も楽しんでもらいたいですね。瓶内熟成は最低10年と決めていますが、2008年は14年間。これが15回目のキュヴェで、次のヴィンテージは2012年になります」。こちらはグラン・クリュとプルミエ・クリュのブドウだけを用い、ピノ・ノワールの比率の方が高い。また、醸造の10%はフードルで行っている。ドザージュは3g/ℓのみ。ピノ・ノワールの比率が高いというが、香りも味わいもとてもエレガントだ。その理由は、モンターニュ・ド・ランスの中でも北部にあるマイィ、シニー・レ・ローズのピノ・ノワールの比率が高いからのようだ。「パワーより、エレガンスやミネラリティを大切にしています」とフロラン氏が言う通りの姿だった。(Y. Nagoshi)

輸入元:ピーロート・ジャパン

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