ウイスキーには多かれ少なかれ、香ばしさと苦味がある。
春の山菜、刺身のツマ、魚の肝やおこげなど、日本人は苦味好きだ。
今回はビターテイストにフォーカスして、実験室を再開した。
若い頃には映画やドラマを観る時に、主役の姿を追うことが多かったように思う。だって、話の中心人物でありすべての鍵を握っているのだから。しかも美男美女が配役されているケースが多いので、視線は自ずとそちらへ向く。
しかし年を重ねると肝となる脇役を観察するのが楽しくなってきた。主人公よりずっと地味だが、ともかく演技が抜群で、なんとも言えない味がある。もし仮にその人物がいなくなったら、随分つまらないストーリーになるに違いない、という役どころ。なくてはならない存在なのだ。
渋みや苦みという味わいも、大人になってようやくその滋味豊かさを本当の意味で満喫できるのではないだろうか。そんな大人のビターテイストを、存分に生かしてくれる名脇役が見つかった。変幻自在の「オールドパー シルバー」を夏の苦味に合わせて演出してくれるよう、またあの名コンビにオーダーした。
「香味野菜のビターテイスト×香りを楽しむ」
小田島大祐さんによる一皿めは「香味野菜のピクルス 白和え」。色目も鮮やかな夏野菜が、まるでムースのような白和えの上にのる。敷かれているのはアンディーヴだ。大越基裕さんが作るのは「シルバーボール強炭酸 ミントと穂紫蘇」。こちらも穂紫蘇のピンク色が映える。
このペアリングは「香りを楽しむのがテーマ」で、最初の一皿&一杯だからふたりで「清涼感」ある組み合わせを考えた。だから、シルバーを割る炭酸水はソーダストリームであえて強めに注入した。泡の強さを好みに合わせて調整できる機器は、このラボのいい助っ人だ。
シャキッとした食感のピクルスの中でもミョウガは香りが強いので、シルバーにハーブでプラスアルファの清々しい香りを加えた。
ともすると、飲み物そのものの香りが強すぎて食材や料理の個性を隠してしまうことがある。その点シルバーは、独自の個性を持つものの自身の主張が強すぎず、食事を楽しむ時に邪魔をしない。「食の味わいの大半は香りですから」と大越さん。料理の香りを引き立てつつ自分を消さない飲み物は、食事のお伴として強い。
もともと備えているほんのりとしたスモーキーさも生かしながら、水で割ることでボディを感じさせ、ミントが清々しさをプラスする。そこに更に穂紫蘇が色合いとともに柔らかなシソの香りを添えている。
アンディーヴと塩茹でして出汁につけたグリーンピースを除く野菜は、フードセーバーを使って真空にして甘酢に漬けた。瞬間浅漬けができるのだ。そしてこの皿のポイントは「ミョウガとアンディーヴの苦味、そして豆腐とともにピュレにした焼きなすとトッピングの炒った松の実がもつ香ばしさ」だと小田島さん。食感の違いも楽しい一皿だ。
シルバーボール強炭酸と野菜の組み合わせは爽やかで、野菜なのにフルーティな後味だ。余韻のグリーンな香りで食欲も増し、次の一品へと食指が動く。(Y. Nagoshi)
つづき「鮎とクレソンのビターテイスト×風味を合わせる」「サザエとゴーヤのビターテイスト×ちびちび飲む」「ほうじ茶と春菊のビターテイスト×ゴクゴク飲む」は、WANDS 2017年7&8月合併号をご覧ください。 ウォンズのご購入・ご購読はこちらから
フォトグラファー:川上輝明/スタイリスト:西﨑弥沙
輸入元:MHD モエ ヘネシー ディアジオ(株) オールドパー シルバーについてはこちらを
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