ボバルとDOウティエル・レケーナの展望 Bobal & DO Utiel Requena in Valencia, Spain

 

<ボバルから生まれるワイン>
 色が濃く、果実の香りはラズベリー、いちご、チェリーなどが典型的。フルボディで、アタックが力強くフルボディで、酸が高い。加えてタンニンも豊かなため、近年はタンニンがアグレッシブに感じられないように皆が工夫を凝らしている。つまり手をかけなければ粗野なワインになる要素が多く潜んでいる、ということになる。だから色、酸、タンニンが豊かな性質がブレンド用として重宝されたのだろう。

 

<ファイン・ワインへ>

ボバルがバルクではなく、瓶詰めワインとして出荷されたのは実は随分前のことだという。現在でも最大手の協同組合コビニャスによるものだ。しかし、当時はまだ洗練された赤ワインではなかったようだ。

レケーナにある1961年設立のスペイン最古の栽培醸造高等学校のペドロ・ナバロ校長は「うちでも30年ほど前から良質のボバルをいかにしたら得られるのか、研究し続けている」という。この学校は16歳から入れて2年ないし4年学ぶそうだが、ここの卒業生にはラウル・ペレスやベガ・シシリアのハビエル・アウサス、そしてボバルを一躍有名にしたトニ・サリオンもいる。

トニ・サリオンはボバルが無名のままで品質が認められないことに耐えきれず、ウティエルにボデガ・ムスティギロを興しテーブル・ワイン(ビノ・デ・メサ)としてボバルのファイン・ワインをリリースした。2000年ヴィンテージだった。2003年にはエル・テレラソのビノ・デ・ラ・ティエラに昇格し、さらに2010年にはDOPエル・テレラソ及びビノ・デ・パゴの認定を受けた。ボルゲリのサッシカイアのような存在だろうか。

 異端児とも呼ばれるトニ・サリオンについて「彼がDOから出てパゴの認定を受けたことも、ボバルが世界的に知られる一助になった。この5年ほどで随分ボバルの評価が変わった。2000年以前のバレンシア州の書類にはボバルは熟成に値しないと記されていた」。と「ベラ・デ・エステナス」のフェリックス・マルティネス・ロダは言う。

そのフェリックスこそ、早くからボバルの瓶詰めワイン、ファイン・ワインを考えていた人物だ。父の代にはボトル売りを考え始め国際品種を植樹したが、いざ海外に販売しようとしたところすでに市場は国際品種であふれていた。そこでフェリックスはボバルに注目し、1998年にボバル100%のワインを熟成させて瓶詰めした。「ベラ・デ・エステナス」は、DOウティエル・レケーナであるとともに、2013年から32haの畑すべたがビノ・デ・パゴにも認定された。

彼らの動きとそのワインの評価が、若い造り手や地元住民、そして自治体にも大きな刺激を与えている。

 

<じゃじゃ馬馴らし>

ボバルがファイン・ワインに変化を遂げ始めている要因は、いくつかあるとわかった。ひとつは先に書いたように人々の意識の変化がある。そして、もうひとつは研究が進んできていることだ。じゃじゃ馬馴らしのポイントが掴めればファイン・ワインが造れる、ということがわかってきた……。(Y. Nagoshi)

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