イタリアワインガイドの眼 宮嶋勲のお勧めワインはこれだ!

イタリア各地での試飲をベースに、今年リリースされる予定のワインを紹介する。

最初に異常ずくめだった2017を振り返ろう。2016~2017の冬は温暖で、1 月初めに少し寒くなったが、2月に入るとすぐに暖かくなり、冬らしい冬がなかったので萌芽は例年より2週間ほど早かった。そこに4月19日から寒波が押し寄せ、イタリア全州で遅霜の被害が出た。特に平野部の畑の被害が大きく生産量が減った。ロンバルディア、ヴェネトなどはかなり酷い状態だった。

その後、5月から急に暑くなり、6月から8月まで猛暑が続いた。その間ほとんど雨は降らず、猛暑と干魃により一部が干しブドウのようになり、生産量は激減した。特に樹齢の若いブドウは苦しんだ。ブドウは健全だが果汁が少なく、早生種にはかなり厳しいヴィンテージになった。幸い9月から気温が下がり雨も降ったので、晩熟ブドウはそれなりに良い状態で収穫された。

 

とにかく収穫量が少なく、1947年以来最低となる3890万hlで前年比28%減である。当然、ブドウ価格とバルクワイン価格は上昇していて、ワイン価格も上昇する見通しだ。ただプロセッコなどは低価格が世界的大人気の要因なので、安易に価格を上げると市場を失う怖れもあり生産者も頭を抱えている。

どちらにしてもトスカーナ、ラツィオ、ウンブリアは前年比45%減とほぼ半減なので、何らかの価格上昇は避けられないだろう。品質もかなりばらつきのあるヴィンテージとなりそうだ。それでは、州別に印象に残ったワインを紹介していこう。

 

<ヴァッレ・ダオスタ>

アルプスの麓にあるヴァッレ・ダオスタは作付面積わずか350haの小さな産地だが、品質向上が目覚ましい。ただ、畑の所有が細分化しているため、ワイン造りだけで生活していくことは難しく、生産者協同組合の組合員になる選択肢しかない時代が長く続いた。Les Crêtesのような先駆者のおかげでヴァッレ・ダオスタのワインの名声が高まるにつれて、自ら瓶詰するブドウ栽培農家も増えてきたが、アグリツーリズムやレストランを経営するか他の仕事を持ちながらの生産者がまだ多い。

 

Les Crêtes Nebbiolo Sommet 2015 生産者協同組合を除くと生産量が最大(それでも年間18万本)のワイナリー。新しく買った畑からリリースした興味深いワイン。フラワリーなアロマを持つ優美な「北の」ネッビオーロで、繊細なスタイルだ。

Caves Cooperatives de Donnas Donnas Napoléon 2014 長年ネッビオーロの伝統を守っており安定した出来である。

白ワインのイメージの強いヴァッレ・ダオスタだが、実は赤ワインが半分以上で、フミン、マイヨレ、ヴュイレルマン、コルナランといった固有品種から個性ある赤ワインが造られている。これらの品種のアイデンティティを明確に確立して、ワインを消費者に適切に紹介し、知ってもらうことが今後の重要な課題となるだろう。

 

シャンバーヴ村はデリケートな甘口のモスカート(ミュスカ)で知られ、生産者協同組合La Crotta di Vegneron の Chambave Moscato Passito Prieuré 2015 は今年も規範的な出来で、La Vrille のChambave Muscat Flétri 2015 も素晴らしい。ただ、近年は辛口のミュスカの軽やかさも再評価されている。その好例Chambave Muscat 2016 は上品なアロマを持ちフレッシュでアペリティフや前菜に合わせると最高だ。

Cave Mont Blanc de Morgex et La Salleは標高1000m 近い畑から生まれるプリエ・ブランによる酸の強烈な白ワインで知られるが、少量造られている瓶内二次発酵スパークリングワインが興味深い。Blanc de Morgex et de La Salle Extra Brut Metodo Classico Glacier もBlanc de Morgex et de La Salle Brut Nature Metodo Classico Cuvée du Prince’10も白い花の清らかなアロマを持ち、酸とミネラルが鮮やかでまさにアルプス的スパークリングワインだ。

Lo Triolet Pinot Gris 2016 熟した果実(洋梨)のアロマ、ビロードのような口当たり、長いミネラルの余韻を持ち、トレンティーノ地方やヴェネト州のシンプルなピノ・グリージョとは一線を画するワインで、ややアルザスを想起させるスタイル。

地元のトラットリアに行くと私たちが日頃試飲する機会のない小さな生産者のワインが置かれていて、その中にとても興味深いものが多い。今後ますます楽しみな州である。(Isao Miyajima)

 

残り19州のお勧めワインは、WANDS 2018年1月号をご覧ください。 ウォンズのご購入・ご購読はこちらから 紙版とあわせてデジタル版もどうぞ!

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