- 2018-4-10
- Wines, アルゼンチン Argentina
メンドーサにある「プレンタ・エステート」は設立が2002年だがその歴史は1902年まで遡れ、現在3世代目のエデゥアルド&ヒューゴ・プレンタ兄弟が取り仕切っている。長年ワイン造りに携わってきた一家が選んだ道は、プレミアムクラスのワインに特化したワイナリーだった。
エデゥアルド&ヒューゴ兄弟の祖父母アンジェロ&パルミナは、イタリアのアンコーナからアルゼンチンへ渡って来た。1902年のことだった。1912年に植樹したブドウの写真も残っているという。
初代が立ち上げたペニャフロールは2代目で大きく花開き巨大企業となった。例えばトラピチェは、ここの海外輸出用のブランドだ(海外輸出が盛んになった経緯やマルベックの潮流についてはWANDS 2018年3月号アルゼンチンワイン特集をご覧ください)。
1997年に一族はペニャフロールの株式を売却し、それぞれの道を歩むことになった。
プレンタ一族の流れのひとつエデゥアルド&ヒューゴ兄弟は父アントニオとともに、自社畑のブドウだけを用いたプレミアムクラスだけにフォーカスしたワイン造りをすると決意した。
現在ワイナリーはメンドーサのアルト・アグレロにあり、自社畑は135ha。1981年に植樹したウコ・ヴァレーのドン・アントニオ畑、1992年に植樹したルハン・クージョのラ・スレマ畑で、それぞれ標高980mと1,200mの高地にある。
栽培品種は、白はシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・グリ、赤はマルベック、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルド、タナ、ピノ・ノワールなど多彩だ。
これらの品種から、カジュアルな「ラ・フロール」というライン、その上に「プレンタ・エステート」シリーズ、そして厳選した区画のブドウを使用した限定生産の「プレンタ・グラン」がある。その他にポルシェのラベルのスペシャルなキュヴェがあるから、相当な車好きなのだろう。
「プレンタ・エステート」と「プレンタ・グラン」から4種類を試飲した。
Plenta Estate Chardonnay “Ⅷ”2016
ルハン・クージョのラ・スレマ畑のシャルドネ。3月初旬に収穫。2時間低温浸漬し、ステンレスタンクとフレンチオーク半々で醗酵し、半分はマロラクティックも施しフレンチオーク樽で9ヶ月熟成。
熟したリンゴや日向夏のような柑橘類に加え、涼しげな様子も感じられる香り。しなやかなアタックで、酸はソフトでボリューム感もあるが上品でゆったりした味わい。樽の影響をほとんど感じさせないピュアな印象。熟度とフレッシュ感がほどよいバランス。
Plenta Estate Cabernet Sauvignon “Ⅲ” 2014
ラ・スレマ畑のカベルネ・ソーヴィニヨン。ステンレスタンク、コンクリートタンク、フレンチーク樽で醗酵の後、新樽と1年使用樽で12ヶ月熟成。
鞣し革やスパイス、少しドライなチェリーやカシスなどのやわらかで練れた香り。なめらかな口当たりで、果実の甘みも感じられ、まろやかなタンニンはよく溶け込んでいる。今とても美味しい状態の、優しいタッチのカベルネ。
ラ・スレマ畑のマルベック。造りはカベルネと同様。
スパイス、凝縮したチェリーや赤い果実の果皮の要素が感じられる若々しくハツラツとした香り。とてもなめらかなアタックで、ジューシーで果実の甘みも感じられる。酸はソフトながらフレッシュで丸く甘いタンニン。口中で果実の香りがふわりと開くのが印象的。一番得意としている重要品種だから、あるいは看板品種だから”Ⅰ”なのだろうか。
ラ・スレマ畑のマルベック42%、カベルネ・ソーヴィニヨン22%、メルロ20%、プティ・ヴェルド10%、タナ6%。48時間低温浸漬し、キュヴェゾンは21日。小さなステンレスタンク、ロールファーメンター、フレンチオーク樽で醗酵。樽熟成はフレンチオークで18ヶ月。
丁子やシナモンなど樽由来のスパイシーさがほんのり香り、熟した果実の香りも豊かだが、まだ若々しく開ききっていない。しなやかなアタックで心地よい口当たり。フルーツが前面に出るタイプではなく、厚みはあるが細く長くつづく。タンニンは細やかで豊か。上品なバランス。
どのキュヴェにも共通して感じたのは、口当たりのなめらかさだった。青さやタイトな要素は微塵も感じられず、かといってぽってりとした果実感が前に出るわけでもない。ちょうど心地よい飲み口のバランスをとっている印象を受けた。どのような工夫をしているのだろうか。
今春エデゥアルドかヒューゴが来日する予定のようだ。それぞれの畑の特徴やワインにつけた数字の意味などについても聞いてみたいと思っている。(Y. Nagoshi)
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