- 2018-10-12
- Wines, その他 Others
MS(マスター・ソムリエ)の称号を持つヤン・ルー Yang Lu氏が来日し、中国でのワイン造りの歴史と現状を説明した。
スピード感のあるワイン新興国
中国のモダンワイン造りの歴史は、1892年に山東省の煙台でジャン・ビッシーがChangyu Wine Companyを興したことから始まる。現在でもここは中国最古で最大のワイナリーだ。1949年の中華人民共和国建国後、大きく3つ時代に分けることができる。
- 1949〜1979年
1950〜60年代はヴィティス・ヴィニフェラ種といえばサペラヴィなど同じ共産圏からの品種で、当時はブドウジュースを発酵させたものに香料やさらにブドウジュースを混ぜて「ワイン」と呼んでいた。1979年になって初めて「本格的な」辛口白ワインがGrate Wall Wineryによって造られた。
- 1980〜2000年
中国経済が開かれたことによってフランスやイギリスとジョイントした大手ワイナリーがいくつも建設され、西ヨーロッパのブドウ品種も入ってくるようになった。1996年までは白ワインの消費が主流だった。
- 2000年以降
2003年のWHO加盟により2004年に「混ぜ物をした」半果汁のものはワインと認められなくなった。2000年からはワイン生産者がブドウ栽培も行えるようになり、海外資本や家族経営の小規模ワイナリーの増加で競争力が高められ、国際的なワインコンクールで賞を取るワインも現れ始めた。現在のところはビールや白酒の消費が主だが、VINEXPO & IWSR発表のデータによると2016年から2021年にかけてのワイン消費量は40%近く伸びると言われており、アメリカに次いで世界第2位のワイン消費国になると予想されている。
過酷なブドウ栽培条件と注目品種
ほとんどのワイン生産地で夏はナパやボルドーよりも気温が上がるためブドウの糖分の上昇は問題がないが、夏の期間が非常に短く風味の成熟に課題を残す。冬のブドウ畑は他国にないユニークな状態だ。多くの生産地域で冬に−17℃以下になるので、収穫後にブドウの幹から枝先までの全部を土の中に埋めて凍害から樹を守る。より内陸や北西に行くほど寒さは厳しく、土中に埋める深さも増す。埋める作業のために密植率を上げられず、また樹自体もやわらかい若木でなくてはならない。生産コストの30〜35%はブドウ樹を埋めて掘り起こす作業に当てられている。国を代表する品種はまだないが、短い夏に対応できるMarselanが中国のアイコニック品種になるのではないかとルー氏は期待している。
7つの生産地域とアイコニックワイン
① Loess Plateau Area
今中国で一番生産量が伸びている寧夏省エリア。ブドウ以外は育つ植物がないと言われ、ワイン造りが地元経済に貢献しており、政府が生産者に補助金を出す。100弱のワイナリーがあり規模も大小幅広い。大陸性気候で灌漑が必要だが近くの川から潤沢な水を得ることができる。寧夏省は中国で唯一省単位のワイン協会が設立されており、ボルドーのように生産者に対する格付けも行われている。
- Domaine Chandon Brut
- Domaine des Arômas, Chardonnay
- Jia Bei Lan, “Reserve” Cabernet主体
- Silver Heights, “The Summit” Cabernet主体
(Rie Matsuki)
つづきはWANDS 2018年10月号をご覧ください。
10月号は「日本ワイン・秋編」「ウイスキーの新しい時代」特集です。
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