サントリーワインインターナショナルからワイン市場間口拡大の起爆剤業務用専用 カップワイン2月発売開始

近年の日本のワイン市場の伸び悩み原因は業務用だと言われ続けてきた。特に居酒屋業態での需要が課題とされてきた。「サントリーカップワイン」が2月27日に業務用専用商品として発売開始され、それと同時に居酒屋業態で取引が続々と決まっているという。ワイン市場の間口拡大の起爆剤となる可能性の高いこの商品の、開発の経緯と狙いについて国産ブランド部の伊藤江里子氏に聞いた。また、取り扱いを開始した「大衆焼肉 キンペイ」の金子伸人マネージャーを訪ねた。

 

ネオ大衆酒場での新価値提案のチャンス

国産ブランド部の伊藤江里子氏

消費者の購買構造を見ると、一人当たりの購入量は増加しているが間口がやや減少傾向にあるとわかっている。しかも、ワインのユーザー構造は50代以上の構成比が2014年の67.1%から2017年は73.1%と増えているのに対し、30代以下は減少している。若年層への間口拡大が課題のひとつだと考えた。

加えて、ワインを飲むシーンも変化している。かつてはハレの日のものだったが、今では日常化している。また最近はネオ大衆酒場が台頭してきている。昔からあるド大衆の居酒屋とは違い若い女性でも気軽に入れるタイプだ。このレンジにワインを組み込めればと思うが、外食産業は慢性的な人手不足でワインのサービスはハードルが高い。

しかし、ここに新しい価値提案のチャンスがあると踏んだ。居酒屋でワインを普及させるには、オペレーションを考慮した形状「カップワイン」が最適だという結論が出た。そのまま冷やして出す飲み切りサイズなので、ロスなく、備品準備も必要なく、グラスの洗浄もなく、スタッフ教育の必要もない。

また、消費者から「ワインには憧れるが、実はワイングラスの持ち方がわからない」という声もある。つまり、この形状は売り手にも飲み手にも敷居をとても低くできる。

 

居酒屋ワインのネガティブイメージを払拭

独自で居酒屋利用者にヒアリングしたところ「居酒屋のワインは美味しそうに感じない」「居酒屋の濃いめの味付けにワインは合わなそう」「本当は飲みたいが、ワインを注文すると気取っていると見られて頼みにくい」という印象をもつ人が多いとわかった。

このネガティブイメージ払拭のため、まずは飲みやすさ、そして揚げ物をはじめとする濃い味のおつまみにも合わせやすい味わいを追求した。営業担当者とともに、4、5種類のサンプルと居酒屋料理との試飲試食を3、4回継続してブレンドを決めた。

そして、ワンカップでありながら上質な印象を与えつつ、一目でワインだとわかるラベルデザインを採用した。「赤」「白」の筆文字は、「登美」「響」と同じ墨象家の荻野丹雪氏によるものだ。カップになみなみと入ったワインは、180mlで生ビール一杯と同じぐらいの価格でメニューに掲載できる計算だ。

 

「大衆焼肉 キンペイ」取り扱い開始のわけ

「大衆焼肉 キンペイ」は、南池袋で3月12日にオープンした。運営するグリップセカンドは「その街の価値あるRESTAURANTであり続ける為に、お客様にサービスを通して驚きの体感を届ける」ことをミッションとしている。イタリアン、和食、ビストロなど都内に何店舗も展開し、どれもカジュアルでセンスのいい店ばかりだ。京橋の「大衆食堂 フクロウ」でも同様に取り扱い始めた。

マネージャーの金子伸人氏は「コンセプトにぴったりだ」と即決したという。「大衆焼肉だから、肩肘張らずじゃんじゃん飲んでほしい。ワインは硬いイメージがあるが、これなら身近に感じてもらえる。ワイングラスに抵抗を感じる人もまだいるが、これはカップ酒に馴染みのある日本ならではの形で、ワイン文化ではとても新鮮に映る」。

リストでも梅酒や焼酎と同じ500円の設定だ。10年以上イタリアンなどでワインを取り扱った経験から「手軽なワインが出てきたといっても、やはり初めての人にとってワインの価格は少し高くて手を伸ばしにくい」と感じていた。その点、このカップワインは裾野を広げるのに最適なアイテムだと判断した。

加えて「扱いやすい」ことも決め手だった。冷蔵庫から取り出し、テーブルで開けて渡せばよい。「白も赤も冷やして飲むことも含めて、今までのワインの定説を破る存在だと思う。お客様にサプライズを届けられる」。

この店で扱うワインはこのカップワインだけ。シンプルに、そして大胆に、店のコンセプトに合わせて「売るべきもの、楽しいものを売っていきたい」と考えている。

オープン時間の18時をまわると、早速近所のサラリーマンが連れ立って入ってきた。かしこまらずに、財布に優しく、でも美味しいものは食べたい、という注文の多い客を受け入れられる店だ。

店舗情報:「大衆焼肉 キンペイ」東京都豊島区南池袋2-10-1 2F 03-6915-2920

金子伸人マネージャー(上中央)を囲む元気でキビキビとしたスタッフ陣

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