円熟原酒だけを使った 富士山麓シグニチャーブレンド

キリンウイスキー「富士山麓」に熟成のピーク(マチュレーションピーク)を迎えた原酒を厳選しブレンドした商品が加わった。甘い樽熟香と華やかな果実香が織りなす複層的で奥深い味わいが特長のウイスキーだ。容量700ml、アルコール分50%。

 

キリンビール・マスターブレンダーの田中城太さんによると、ウイスキーのマチュレーションピークとは、「それぞれのウイスキー原酒が本来持つ香味的特長、個性が最も良く表れている状態(円熟期)」を指す。

「樽熟成をさせる前の蒸留液の性状、熟成させる樽の種類、温湿度環境によって、熟成のピークに達するタイミングは異なり、それぞれの原酒がたどる熟成の軌道に違いが生まれる。このウイスキーは何年ものですか、と聞かれることがしばしばある。一般に、ノン・エイジの製品は原酒が足りないからエイジ表示をしないのだろうと思われている。

しかし、私どもは原酒の熟成年数はあくまで数字であり、品質の良し悪しを決定づける唯一の基準ではないと考えている。この考え方は創業以来一貫している。ウイスキー造りの基本は原酒のマチュレーションピークに基づいてどういう味わいを造るかにあると思う」と、田中さんは言う。

 

田中さんによると、原酒のタイプによるマチュレーションピークの一般例は次のようだ。

「原料やつくり方によって熟成のピークは異なる。たとえばグレーンウイスキーの場合、熟成が新樽か古樽か、バーボンバレルかその他の樽かで違ってくる。一般にヘビー・グレーンの場合のマチュレーションピークは5~8年で、これはケンタッキーのマスターディスティラーの共通認識になっている。熟成5年未満だとバーボンの特徴は出るがまだ若さを感じさせる。5年経つとバーボンらしさが出てきて、8年を過ぎると華やかさが減り、樽由来の特徴が勝ってくる。同様にモルトウイスキーの一般的なマチュレーションピークは12年~18年と言えるだろう」。

 

さて、熟成のピークに達したウイスキーはどのように飲んだらよいのだろう。

①原酒の香り、味わいを感じるには、まずはストレートで。

②次に、ウイスキーの5分の1ほどの水を足して立ち上る香りを感じる。洋梨やトロピカル・フルーツ、オレンジピールの香り、さらに焼き菓子やマロングラッセのニュアンスが表れる。50%のアルコール分に閉じ込められた香味が、水を加えてアルコール分が下がることで溶けきれなくなり、グラスのなかに少しずつ解き放たれてくるからだ。

 

これは2017 年4月から富士御殿場蒸溜所のファクトリーショップとキリンオンラインショップ「DRINX(ドリンクス)」で限定販売してきたもの。飲んだ人から高い評価を得たので販路を拡大し、全国発売することになった。「キリンウイスキー富士山麓樽熟原酒50°」とともに、富士御殿場蒸溜所でつくるウイスキーの魅力を伝え、ウイスキーの楽しみ方の幅を広げるのが狙いだ。

 

WANDS2018年10月号は「日本ワイン・秋編」「ウヰスキーの新しい時代」特集です。

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