ワインツーリズムの聖地、ミッテルライン、ラインガウを巡る

ドイツワイン協会(DWI)とガイゼンハイム大学の共同調査によると、年間5000万人がワインのためにドイツのワイン産地を訪れ、55億ユーロを費やしている。2015年に連邦政府がワインツーリズムを重要な市場セグメントと位置付けたことを背景に、13生産地域から合計900のワイナリーと4,500の観光客を対象に2年掛けて調査した結果だ。

世界が注目し、ワインツーリズムの手本とするカリフォルニアは小さなナパ・ヴァレー一局集中型であるのに対して、ドイツは分散型だ。ナパの場合は、1968年の農業用地保護法制定による景観保全から始まり、富裕層をターゲットにしたブランディング戦略の努力が実った結果としてのワインツーリズム確立だ。一方、ドイツは古城が建ち並ぶミッテルライン、ローマ時代の遺跡を擁するモーゼル、ドイツワイン街道のあるプファルツなど、ワイン産地巡りが自ずと歴史探訪の旅にもなる。また、古くから水運が発達していた川沿いからワイン産地が拡がって行ったため、急斜面のブドウ畑が渓谷に迫る美しい景観が方々に点在するアドバンテージがある。

ワイナリーが訪問客に対してどのようなサービスを行っているかをDWIが調査した結果(※表1)を見ると、85%がテイスティングと施設内ツアーと回答しており、ここは恐らく他国と変わらない。次に続くのがセラードア (58%)、ヴァンデルング(54%)、ホーフフェスト、ワインパーティ(53%)だ。ヴァンデルングは散歩ともハイクとも取れるドイツ人の大好きなレクリエーションで、ここにもまた地の利を感じる。ワイン産地のあちこちに、歩いて楽しめる小径がブドウ畑の中に作られている。ホーフフェストはワイナリーに限らず昔からある習慣で、城や貴族の邸宅あるいは農家など大きな建物の中庭で催すもの。
地元のお祭り的な開かれた雰囲気で敷居が低く、新規ファン獲得に効果がある。他にドイツらしいのは、オープンエアのワインスタンドで、地域のワイナリーのアイテムが集まっていたり、1つのスタンドをワイナリーが交替で使ったりして、気軽に立ち飲みできる。やベーゼン(シュトラウス)ヴィルトシャフトはワイナリーが1年のうち4カ月だけ営業が認められている自社ワインと軽食を出す施設で、その規定はカール大帝が公布したと言われるくらい歴史あるものだ。

一言でいえば、ドイツのワインツーリズムは極めてオープンでアクセシブル。ワインが主目的でなくても他の観光資源やアトラクションが近くにある。予約なしで利用できるものが多く、がっちり旅程を固めなくても良い。公共交通機関が使えて比較的低予算で回れる。

そんな条件が全て揃った2つの生産地を巡った。ライン下りのハイライト、世界文化遺産「ライン渓谷中流上部」のエリアそのものと言って良いミッテルライン。ドイツの玄関口フランクフルト空港から最も近くカール大帝の時代からのワイン造りの歴史を誇るラインガウ。初心者でも楽しめ、ワイン通をも満足させる、ワインと観光の王道ルートだ。

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