ルイ・ロデレールによるデュラスの復活

エルミタージュからデイリーワインまで、細心の注意を払い生まれるワインのボトルとコルクには“DELAS”の紋章が刻まれている。

エルミタージュをはじめ北部ローヌの生産者として名高いデュラスは、
1835年創業で長い歴史を誇る。
しかしその名声を取り戻したのは1993年以降。
シャンパーニュのルイ・ロデレールのグループに入ってからだ。

取材・文 名越康子


 デュラスは1977年、3代目ミシェル・デュラス氏の代に友人でもあったシャンパーニュ・ドゥーツの一族に経営を託した。そして1993年にドゥーツとともにルイ・ロデレールのグループの傘下に入った。本格的な改革が始まったのは1996年にルイ・ロデレールの元副社長ファブリス・ロセ氏が社長に就任してからだ。ロセ氏は翌年にジャック・グランジ氏をテクニカル・ディレクターとして迎え入れた。グランジ氏は、シャプティエやジャン・リュック・コロンボで経験を積んだ人物で、区画ごとの栽培管理、枯死したブドウの改植、急斜面の畑の石垣の改修を行い、醸造や熟成についても一新した。彼らの手腕により、デュラスは一目置かれる存在へと復帰した。

2006年になると変革は次の段階へ進む。クローズ・エルミタージュの畑を買い足し、自社畑はエルミタージュの10ha、サン・ジョゼフの2haを合わせ、合計で30haとなった。また、「クローズ・エルミタージュドメーヌ・デ・グラン・シュマン」を新たにラインナップに加えた。さらに2009年には、エルミタージュにおいて単一区画の「レ・ベッサール」に加えて、レルミット、ル・サボ、レ・ベッサール3区画のブレンドに「ドメーヌ・デ・トゥーレット」と名付けた。これらにより、デュラスは自社畑のブドウだけで造るワインを全面に出し、「ドメーヌ」のイメージを強くすることに成功した。

左から「エルミタージュ・ルージュ ドメーヌ・デ・トゥーレット」、「コート・デュ・ローヌ ルージュサン・エスプリ」、「「コンドリュークロ・ブーシェ」。

 

その後も良年だけに数千本のみと少量生産ながら、「レ・ベッサール」の他にも単一区画キュヴェを複数生み出している。例えば、「コンドリュー クロ・ブーシェ」はシャトー・グリエに隣接する真南向きの契約栽培の区画だ。いわゆるネゴシアンものであっても、どのような品質のブドウが必要なのか栽培家と綿密にやり取りして管理するのは、ルイ・ロデレール・グループの理念を厳格に遵守している証だろう。

例えばデイリーラインの「コート・デュ・ローヌ サン・エスプリ」は、赤も白もフレッシュなアロマや果実感を保つためにステンレスタンクだけで醸造されている。1万円を超えるフラッグシップのエルミタージュから、2,200円のコート・デュ・ローヌまで、適材適所で細かな対処をしている。2015年に180周年を迎えたことを記念して、タン・エルミタージュに敷地を購入した。2019年に完成した新たな醸造所は、デザインもスタイリッシュで美しい。そこには区画ごとに醸造管理できる小ぶりのコンクリートやステンレスのタンク、ブルゴーニュタイプの新旧の小樽が整然と並んでいる。すべてグラヴィティ・フローで移動できる設備も整っている。段階を踏んだ改革とその積み重ねにより、デュラスは生まれ変わり、さらに磨きをかけ続けている。

創業180周年を記念して2015年にタン・エルミタージュに土地を取得。2019年に完成したモダンで美しい醸造所。

 

問い合わせ:都光
☎ 03-3833-3541 https://www.toko-t.co.jp

 

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