- 2026-4-28
- Wines, フランス France, ボルドー Bordeaux

フィオーナ・モリソンMWは、近年ボルドーがいかに変化してきたのかについて、以下のように説明した。
ボルドーの今 気候変動対策
「気候変動でさえ、ある意味楽観的に捉えている」と、フィオーナ。
気候変動により、この20年間で平均気温が1〜1.5℃上昇した。気温上昇だけでなく、雨は台風のようになり洪水を起こし、寒いと霜害が、熱波は干ばつになる。昨年は、ポムロールのシャトー・ラフルールではアペラシオンの認定を取り下げても(ヴァン・ド・フランスへ)灌漑をすることに決めたことも、大きなニュースとなった。
メドックの海に近い地域は比較的涼しい。大西洋とジロンド川に挟まれ、その南は深い松の森があるため、このエリアではカベルネ・ソーヴィニヨンは耐えられている。サンテミリオンやポムロールは、海の影響少なく大陸性気候のため暑さが増してきている。こちらのメルロは、畑の温度を下げたり、乾燥を防いだりするための対処が必要だ。ブドウ品種を変更したらどうか、とも言われるがあまり現実的ではない。
行っている対処法をいくつか挙げる。
*遅い剪定:これにより生育サイクルを遅くし、霜害の被害を最小限に。今年も3月末に霜が降りた。芽吹きが始まった頃だがダメージは最小限に抑えられた。
*キャノピーマネージメント:幹の高さをとり、葉の表面面積を少なくしながら日焼けを防ぐために傘のように仕立てる。キャノピーを小さくして光合成を抑える工夫により、糖度をコントロールする。
*畝の向き:以前は畝が東西になるように植え、正午に日照量を存分に得られるようにしていた。しかし今では改植時に畝を南北にして、正午の最も日照量多い時には畝間に日が差すように変更している。
*台木の選択:30〜40年前は湿度に耐えられる台木を選んでいたが、今では水不足に耐えられるものを選ぶようになっている。
*カバークロップ:昔は耕されて畑の土が見えていたが、今では豆科などのカバークロップで覆われるようにし土壌からの蒸散を抑え土壌の温度を低く保つと共に、カリウム、マグネシウム、窒素、リンなどもバランス良く取り込む。
*土壌の微生物:バイオダイナミックの500番として知られる、牛の角に詰めたプレパレーションも用いて、土壌の微生物・有機物を育み、ミミズなど土中の生態系も重要と考えている。
*遅い収穫:収穫期の日較差が大きいことが大切。9月初めまだ気温が30〜35℃と高く、収穫する人にとってもブドウにとっても良い環境ではないため、なるべく遅く収穫するよう工夫している。また、収穫は早朝など涼しい時間帯に行っている。
ボルドーの今 モダンスタイルのワイン造り
「ボルドーでは近年、モダンなスタイルでのワイン造りがトレンドになっている」。
<一般的な新世代のワインの特徴>
*よりフルーティーで、軽やかで、ソフトなタンニンのワイン。つまり、飲みやすい赤ワインを求めている。
*クリスピーでクランチーな、より良い酸を備えた、若くて冷やして飲む赤ワイン。
*カルメネール、プティ・ヴェルドなど、かつては成熟が困難であった品種の見直し。
*ヴィーガンのキュヴェも増加。
*醸造にテラコッタやアンフォラも使用。
*酸化への理解も深まった結果、添加する亜硫酸量はかつての1/3から1/2に減少。
*パッケージにも変化があり、スクリューキャップ、BIB、缶も増加。
*昔の古いシャトーの写真や絵ではなく、よりシンプルでモダンなラベルに。
<セラーでの最低限の介入>
*30年前は収穫したブドウを一つのタンクに入れておしまいだった。しかし今では、セラーを改築し、区画の広さに合わせた発酵槽を導入し、区画ごとに醸造する方向性。
*アロマを大切にして、フレッシュさとタンニンのフィネスを重要視するようになった。そのために、マセレーションを短くし、温度も低くして抽出を軽めに行うようになった。軽いポンピングオーバー、もしくはインフュージョンが増えており、タンニンがソフトで優しくなった。
*酸素の扱いも変化した。酸化が減りブライトさが守られ、エネルギッシュで明るいワインになってきている。小粒で果皮が厚いブドウには、マイクロオキシジネーションがよく働いたが、今は栽培が変わりブドウそのものの特徴も変化してきている。ボルドーにおいても、全房発酵が優しい抽出につながっている例がいくつか見られる。いずれにせよ、いかに酸素をハンドリングするのが良いのかを検証しているところ。
<熟成に関する技術>
*酸素のコントロールにより亜硫酸を少なくできるようになってきた。
*容量が大きな樽を使用し、樽熟成期間を短縮、新樽率を減らす方向性(15年前はラフィット、ペトリュス、マルゴーなど100%新樽が当たり前だったが、今では50〜70%)。
*セメント、コンクリート、ステンレスタンクも熟成に使用。
*アンフォラ、卵などさまざまな容器が使用されている。
*そして、瓶詰め後の熟成期間を長期にする傾向にある。
<サステナビリティーを重視>
*8,000シャトー(減少傾向)のうち、75%の畑が何かのサステナブル認証を取得。
*ジロンド県でワイン関連の仕事の従事者は50,000人。
*2020〜2021年にオーガニック認証取得(もしくは転換中)の畑は43%増加。フランスでの伸長No.1 の産地。
*HEV認証取得はフランスで一番多い。
*温室効果ガス削減を7年で24%も実現した。
*85%の森を維持している。
ボルドーといえば、世界のワイン界で不動の地位を確立した産地だ。しかし近年では他地域・他国の産地からの多くの情報発信や高品質ワインの続出で、少し押され気味の感もあったかもしれない。以上の事柄を加味すると、ボルドーワインの新たな側面を垣間見ることができ、改めて見つめ直す良い機会になりそうだ。
フィオーナ・モリソンMWが、シャトー・ル・パンの生みの親で夫のジャック・ティエンポン氏と醸すカスティヨン・コート・ド・ボルドーの「レートル」、サンテミリオンの「リフ」
正規輸入代理店:ラック・コーポレーション
text by Yasuko Nagoshi
「フィオーナ・モリソンMW 『レートル』と『リフ』を語る」も、ぜひご覧ください!


















最近のコメント