マルクス・フーバー+レンツ・モーザー=NEW CHAPTER

ふたりの男がグリューナー・ヴェルトリーナの未来に掛けた、新たな幕開けの1本

 

グリューナー・ヴェルトリーナ(以下、GV)と言えば、ニッチ市場ながらもここ15〜20年で世界的にも認知度を上げて成功したオーストリアの品種だ、との印象が強い。しかし、自社畑をすべてGVに改植したMr. GVとも言うべきレンツ・モーザーと、近年若手醸造家で注目の的のマルクス・フーバーが、「明日のグリューナー・ヴェルトリーナ」のためにタッグを組み「ニューチャプター」が生まれた。

一体、どんなプロジェクトなのか。興味津々だ。しかも、そのオンライン取材のために届いたワインは、彼らの作品だけでなく、ボルドーとニュージーランドの白ワインも含まれていた。

まるでブルゴーニュ! 石灰質土壌の東向きのブドウ畑

「ニューチャプター」を生む畑は、トライゼンタールにある。オーストリア北部のニーダーエスターライヒ州の産地で、ウィーンより西に位置し、ヴァッハウ、クレムスタル、カンプタルの南にある。2006年にDACに認定された、オーストリアで最も小さいワイン産地だ。

マルクス・フーバーはこの産地で最も有名な生産者で、フーバー家の10代目にあたる。

「ここはヒルサイドで、オーストリアで唯一GVが石灰質土壌で栽培されている場所です。丘の頂には森が茂り、冷涼な気候なので爽やかな高い酸が保たれ、ミネラルも豊か。トライゼンタールの畑のうちGVは65%も占め国内でもとても高い比率ですが、私の畑では75%がGVです。今回のプロジェクトには、うちの畑の最高区画のGVを使用しました。樹齢70年以上の古木も含まれていて、ブルゴーニュで言えばプルミエ・クリュに相当する区画です」と、マルクス。

冬の剪定により収穫量が制限され、平均樹齢25年以上で古木も植わる区画は、根が深く乾燥した年でも水不足にならない。石灰質土壌で全て東向き斜面の丘は、まるでブルゴーニュのシャブリのようだと言う。有機栽培の畑では、毎年2畝ごとに異なる草花を育てている。オンライン取材があった4月2日は、ちょうどブドウ樹の剪定された枝から春の訪れの印である樹液が出始めたところだった。

15年の友情

一方で、相方のレンツ・モーザー(5世)は、GVのアンバサダー的存在でもある。祖父のレンツ・モーザー3世は、いわゆる垣根仕立て、新しいトレリスシステムを90年前に導入した人物として知られ、父は1978年にオーストリアで初めてバイオダイナミックを採用している

「今ではオーストリアと言えばGVというイメージが強いですが、私と父が1980年代前半に国内外で広めていった品種です。マルクスとは父子ぐらいの年の差があるけれど、考え方や哲学がとてもよく似ていて15年来の友人です。昨年、パリのヴィネクスポで会い、一緒に何かしよう! と、話し合ったのがこのプロジェクトのきっかけになりました」と、レンツ。

「ニューチャプター」は、GVの新しいスタイル

「ニューチャプター」は、ひとつだけのワインを2名で造る「シャットー・コンセプト」だと言う。そして、その狙いは「GVを世界のひのき舞台に乗せること」。外から見ていると気がつかないが、オーストリアで生まれるGVの90%がドイツ語圏で消費されているのだそうだ。その範囲を世界に広げたい。それが、このプロジェクトの大きな目標のひとつだ。

マルクスとレンツは、まず100種類以上の世界のトップワインを試飲した。そして、これまでのGVと比較して、世界のひのき舞台に立つために足りないものは何かと考えた。コク、複雑さ、そして豊満さもある。しかし、世界で成功している白ワインには、生き生きとした果実味、飲みやすさ、フレッシュさもあるとわかった。だから、パワフルだけれども、豊満ではないGVが必要だと考えた。

新スタイルのワインのためのブドウは、トライゼンタールの最高の区画から、4週間かけて収穫した。生き生きとした果実やフレッシュ感に溢れたブドウから、複雑さが増すブドウまで、異なる段階で収穫し、最終的にブレンドすることにした。収穫の最初のブドウと、最後のブドウでは、糖度が85エクスレから100エクスレまで差がある。ブリックスに直すと、およそ19度から21度へ上がることになる。

また、GVの大半はエレガンスとフィノスに欠けると考え、法律の範囲内で、1〜2%リースリングとムスカテルをブレンドすることにした。これにより、香りと味わいのプロファイルが発展するとわかったのだ。

「これまで、オーストリア国内では単一畑の重要性は言われてきたもののブレンドはあまり重要視されてきませんでした。他のオーストリアのGVとは異なる、とのメッセージを伝えるためにも、これからのGVのためにも、ブレンドは芸術であると言いたいですね。ベストな畑のベストなクリュを全て別々に収穫して醸造し、最後にブレンドし最高のものを造りました」と、マルクス。

「スティーブ・ジョブではないけれど、人は常にこれからどうなるのかを考えて新たなものをクリエイトしていくことが重要だと考えています。ワインの嗜好は極めて個人的なものですが、明日皆さんが何を欲しているのかを考えながらワインの品質を追求していく必要があると思っています」と、レンツ。

その結果生まれた「ニューチャプター」は、「力も複雑性もありながら、豊満ではなく決して重くなることがない。ピュアでミネラル感があり、フレッシュで飲み心地の良いワイン」。自分たちにとっても、オーストリアのグリューナー・ヴェルトリーナのためにも新たな幕開けのきっかけとなるよう「ニューチャプター」と命名した。

彼らが選んだ個性的で明確なスタイルの白ワインのベンチマークのうち、「シャトー・カルボーニュ2018」は、「GVに似ているし、ミッドパレットのレモンのようなシトラスノートが、ニューチャプターとよく似ている」。「クラウディ・ベイ2020は、この10年で最も成功したヴィンテージ。このカテゴリーで、世界で最も成功しているワイン。なめらかで芯 がしっかりし、ミネラルも豊か」。

 

 

「ニューチャプタター2020」

みつ、柑橘類、りんご、桃、アプリコット、ほのかにライムのような涼しげなトーンも。熟した果実とフレッシュさ、フローラルな香りが融合。なめらかなビロードのようなテクスチャーで、厚みがあるが、キリッとした酸と後味のミネラルがフレッシュさを与え、あとを引く味わい。みずみずしさと豊かさと なめらかさと強い芯のコントラストが絶妙で、本当に、一口飲むとまた一口飲みたくなるワイン!

品種:グリューナー・ヴェルトリーナ(1〜2%リースリング、ムスカテル。リースリングは、わずかなアロマと酸を与えるスパイスのような役割。ムスカテルも同様に、ほんのりとフローラルなアロマをもたらす)。

収穫:10月初め〜11月初め(ボトリティスなし)

醸造:部分的にホールバンチプレスも。スキンコンタクト6〜7時間。ステンレスタンクと、地元のアカシアの大樽(ニュートラル)で発酵。自社畑のブドウから選抜した天然酵母をラボで培養して用いている。だから、独自の酵母ではありながらブラックボックスのリスクは取らない、という姿勢。500ℓ樽で数か月熟成。ノン・マロラクティック。

ラベル:力強い印象を与えるため、ボトルやボトルデザインにもこだわった。

 

日本では、これから輸入元を募集とのこと。興味のある方は、マルクス・フーバー氏に直接メールでお問い合わせください!

Weingut Markus Huber

markus@weingut-huber.at

(Y. Nagoshi)

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