スプリングバレーブルワリー東京の新定番「代官山セッションエール」

「僕たちはクラフトのおいしさを知ってしまった」(長谷川博己氏)

「スプリングバレーでね」(原田泰造氏)

「1.5倍の麦のうま味、4種類のホップの香り、それが一気に口に広がる……」(長谷川博己氏)

「ま、そういう話はまた後で」(麻生久美子氏)

おなじみ「豊潤 <496>」のCMは、スプリングバレーブルワリー東京の一角で撮影された。

確かに、ビールと言えばナショナルブランドが当たり前の日本では、会社やブランドごとの特徴の違いぐらいしか気にしない人がほとんどなのだと思う。そこに一石を投じたのが「豊潤 <496>」。缶でももちろん美味しいが、実際に代官山で飲むとさらにもう一段違う味わいが楽しめることは前回書いた。

仕事とは言えこうやってクラフトビールを追いかけていると、クラフトビールの楽しみはワインのそれにちょっと似ている部分があると感じ始めている今日この頃だ。しかも、通常のワインより圧倒的にアルコール度数が低いので、飲み終わった後のアルコールの抜けが早い。だから、一般的な日本人のアルコール耐性であれば、身体が楽に感じるに違いない。事実、先だっての取材は午前中に行い、せっかくだからとランチをいただきながら一杯飲んだ。しかし、午後の仕事に全く影響なく、むしろスイスイと進んだぐらいだ。

 

さて、今回はスプリングバレーブルワリー東京の新定番「代官山セッションエール」が発売開始されたと聞き、再び代官山に足を運んだ。そして、実際にこのビールを開発した、ヘッドブリュワーの古川淳一さんにお話を伺うことができた。

「代官山セッションエール」は、スプリングバレーブルワリー東京で最も人気の定番「ギャラクシー ウォーカー」の進化版だと聞く。

何がどう変わったのだろうか。

どちらも、華やかな香りで知られるギャラクシーホップを使用していること、アルコール度数が低めであることが共通点だ。しかし、「Galaxy Walker」がグレープフルーツの香りが主体でアルコール度数4.5%であるのに対して、「代官山セッションエール」はパッションフルーツやマスカットなど様々な果実の複雑な香りがしてアルコール度数4%だ。

スプリングバレーブルワリー東京のリストを眺めると、アルコール度数は4%から9.5%までと幅広く、5.5%以上が多い。「豊潤<496>」も6%だ。ちょっと特別なクラフトビールは、味わいが濃く、同時にアルコール度数も高くなるのが一般的のようだ。

しかし、古川さんが「アルコール度数低めで美味しいビール」に注目したのは、クラフトビールに関わる以前にオーストラリアへ数回の海外出張をしていた時だと言う。オーストラリアのビールは、気候や純アルコール量に応じた課税制度の違いにもよるのか、日本と比べるとアルコール度数が低めの3.5〜5%程度の銘柄が多く、それらがとてもおいしく感じた。その経験から、「アルコール度数は低くても満足感の高いクラフトビールを造ってみたい。その需要は必ずある」と考えていた。

たとえば、麦芽のクッキーのような香ばしい香りを付与することで、「薄い」と思われない、プラスの味わいに寄与する。香りが複雑である方が、味わいに奥深さを出して美味しいと感じやすい。「ギャラクシー ウォーカー」を3年間造り続けている中で、色々な試作も並行して行ってきた結果、「代官山セッションエール」の誕生に至ったと言う。

ちょうど古川さんに話を聞く前日に、低アルコールの白ワインを試飲する機会があった。9%で、言われれば少し軽やかな印象ではあったが、香ばしさもありなかなか美味しいワインだった。カリフォルニアの生産者曰く「翌朝は早くから精力的に活動したいという前日の夕食に、美味しいけれどアルコールが低いワインが飲みたい。そういう自分のために造り始めたら、とても評判が良くて」。やはり、そういう需要はあるのだ。

 

まさにパッションフルーツやマスカットが感じられる華やかな香りで、フレッシュでクリーミーでとても飲みやすい。ザ・クラフトビール、とも言える「豊潤<496>」の後に「代官山セッションエール」を飲むと、クラフトビールの幅広さがより実感できるかもしれない。(Y. Nagoshi)

*6月21日から、東京都の方針に沿って「2人までのお客様を対象に90分間19:00までの限定」でお酒の提供を再開しました。

スプリングバレーブルワリー東京

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