SBV島村宏子社長に聞く クラフトビールの可能性

クラフトビールの展開は、これからの日本のビール市場を面白い方向へ進める大きな役割を担っていると感じている向きが多い。キリンビールでは、クラフトビール事業を2011年秋に始め正式には2015年から開始した。そのきっかけは、20代を取り込むことでビール界を盛り上げるためだったという。実際にどのような層が反応しているのか、今後の可能性についてなど、スプリングバレーブルワリーの島村宏子社長に感触を聞いた。

 

幅広い層が反応

今でも若い層へ向けてアピールしていることに変わりはないが、実は幅広い年代に広がってきているという。インタビューのため代官山のスプリングバレーブルワリー東京を訪れたのは金曜日の午後だったが、多くの人がテラス席でくつろぎ、既に飲み比べセットを試しているテーブルが散見された。

朝8時からの営業で朝食やブランチといった使い方をする人や、子供連れの若い女性など、ビールだけが目的ではない。代官山という立地にあるその空間を活用しにくる客人が「特にリニューアル後に増えた」という。昨年の改装後はテラス席が広がったことに加え、1階店舗奥のタップの数が増えた。開放的な空間を楽しむ人がいる一方で、タップを目の前にしたバー的な設定でクラフトビールに直面する人もいる。多様な層がクラフトビールのある空間を多様な使い方をすることも、クラフトの特徴である「多様性」にちょうどしっくりきているようだ。

「ここがビールを知ってもらうきっかけになれば」との考えが、上手く機能している。

 

こだわり、そして満足感

しかし、クラフトビールは一般的なビールより随分高価だ。面白さや美味しさで、その付加価値をどれだけプラスできるだろうか。

「クラフト好きの人は、自分の好きなものをライフスタイルに合わせて選び、お金を使っているこだわりがある人が多い。好きなもので自分の環境を埋めたいという傾向がある。そして、好きなものを見つけると、それを知人友人にも勧めていく」。SNSが発達している現代では、この口コミの威力がとても大きい。また「昔のステイタスシンボルが今ではそうではない。例えば車もそうだが、様々なものが今では共有できる。消費の理由を見つけても、自分で所有するかあるいはシェアするか、という選択肢がある」とも言う。

このような時代にある中で「クラフトには選ぶ理由がある。サッカーチームを応援する感覚に似て、味わいだけでなくブルワリーの背景や特徴、造り手の素材へのこだわりなど。クラフトのファン層は既にクラフトの中に価値を見出していて、時間の使い方も含めて満足感を得ている」。

また、傾向として「食に精通している人がクラフトへの関心が高い。料理との親和性もあり、ワイン好きも入ってきている」。ビアソムリエの講習会を開くと、既に日本酒やワイン、ウイスキーなど何らかの資格取得者の割合が高く、味わいだけでなく知識欲に訴えかける側面もあるようだ。

ビール類の世界でも、他の世界の例に漏れず二極化が今後も進みそうだ。

 

伸長の基盤

「緩やかではあるが、着実に毎年伸びている」クラフトビール市場の牽引役として、タップ・マルシェの存在が挙げられる。それぞれのクラフトビールを美味しい状態で消費者まで届けるための手段がなければ、この市場は広がらない。特に小規模なクラフトブルワーにとってロジスティックの部分は、大きな壁だったのではないだろうか。それまではいわゆる大樽は15〜20ℓの大容量だった。しかし小型のディスペンサー、タップ・マルシェの場合には3ℓの小型ペットボトルで簡単に入れ替えができる。しかも初めは4タップだけだったが、昨秋より2タップも導入された。「料飲店の課題となっていた部分に貢献できたと考えている」。

また、B to Cの「CLUB SVB」だけでなく、B to Bの「CLUB 496」という業務用のコミュニティサイトも立ち上げた。新商品やイベントの案内はじめ、各種情報を発信していて「地方の人が多くメンバーに入ってきている」という。今後はB to CとB to Bの連携も課題にしたいと考えているようだ。

クラフトビールは実に多様で個性的なものが多い。今春SVBから期間限定で発売された「Farm to SVB」第一弾の広島県因島産のはっさくとのコラボレーションは、好評で予定期間よりずっと早く完売してしまったという。

個性的だからこそ、個人でも店舗でもどのクラフトを飲んでいるか置いているか、それが「個性を主張できるツール」になってきている。それが現代の人たちのライフスタイルにちょうど合致している。だから、ゆっくりではあっても堅調に伸びていくことを確信しているのだ。

 

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