- 2016-2-3
- Wines, スペイン Spain
サッカー好きの方には馴染みの深いFCバルセロナでスペイン代表のアンドレス・イニエスタの実家は、カスティーリャ・イ・ラ・マンチャ州のマンチュエラ地方にある。マドリッドから車で40分ほど南東におりた場所だ。ここでアンドレスは、家族のために夢のワイナリーを建設し、同時にこの地域の村おこしにも貢献している。
アンドレス・イニエスタの家族は、父方も母方もこの地域の地元品種ボバルの畑を共に所有していた。しかしこの地域の葡萄やワインは、長年ブレンド用として販売されてきた。一家にとって、いつか自らのワインを造ることが長年の夢だったのだ。そして、父ホセ・アントニオが1990年代から本格的に葡萄栽培を始め、2000年以降には畑を買い足し、アンドレスとワイナリーの建設を計画し始めた。2006年からは近くの醸造所を間借りしてワイン造りを試みている。
ついにワイナリーが完成したのは2010年。この年から「ボデガ・イニエスタ」のワインが醸造され始めた。折しも2000年頃に、D.O.マンチュエラが認定されている。
ここはメセタで標高700〜800mという地にあり、寒暖の差が激しく、真夏には日中に42℃まで上がるが夜間は20℃までになる。土壌は下層が石灰岩で、表土はシルトと粘土という構成だ。
かつて10haだった自社畑は、今では170haにも広がり、更に100haの契約畑からも葡萄を買い入れているという発展ぶりだ。ワイナリーにはレストランも併設し、ワインツーリズムができる仕組みを造り、地元の雇用や活性化にも一役買っている。
アンドレス・イニエスタがちょうど試合で昨年末に来日したのに合わせ、社長のアグスティン・ラサロ・カバニェーロと、輸出部長のカルロス・フェルナンデス・アセンシオがワインのお披露目を行った。手頃な価格でアプローチしやすい白、ロゼ、赤が揃っているが、印象的だった特別なキュヴェを紹介する。
「フィンカ・エル・カリール・バレリア2013」
イニエスタ選手の娘の名前を冠したキュヴェ。シャルドネ67%、ヴィオニエ33%。330ℓのフレンチオークで30日間醗酵、2か月熟成。香ばしい香りとパイナップルのような熟した果実の香りが華やかで、とてもなめらかな食感。オイリーさもあるが酸もしっかりしているため、引き締まっている。良い年のみで1万本ほどというが、税込1,598円でお値打ちだ。
「フィンカ・エル・カリール・パオロ・アンドレア2012」
イニエスタ選手の第2子で長男の名前パオロ・アンドレアを冠したキュヴェ。地元品種のボバル100%。まだボバルだけの赤ワインは少ないようだ。この品種は、乾燥した気候に強く、ゆっくりと成熟するのが特徴だ。父方と母方が長年所有している区画の葡萄を使用。樹齢70〜80年の株仕立てで、接木をしていないという。フレンチオークの新樽で12か月熟成。こちらも良い年にしか造らない。樽の要素は表立たずほんのり香ばしい程度で、ベリー系果実やチェリーのリキュールのようなフルーティーな香り。なめらかでジューシーな味わいで、酸も適度にあり、ボリューム感もある。最後にタンニンが味わいを引き締め、スパイシーさが余韻に残る。2016年2月より発売予定。
(Y. Nagoshi)
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