WOSA Japan ウェンズデー・ウェビナー セッション4-2「シュナン・ブラン」

 2022年6月15日(水)、WOSA Japan(南アフリカワイン協会)による「ウェンズデー・ウェビナー」が開講された。これはWOSA Japanプロジェクトマネージャーの高橋佳子DipWSETが、生産者へのインタビューを交えながら南アフリカワインの情報を取り上げ、テーマとなる産地の個性を掘り下げていく定期開催の企画である(前回3月2日(水)シーズン4第1回「「オールド・ヴァイン(古木の)セミヨン」の記事はこちら)。

 シーズン4第2回のテーマは、南アフリカを代表する白ブドウ品種シュナン・ブランだ。ビデオ出演のゲストワインメーカーは3社:KWVのコブス・ファン・デル・メルヴァ氏、アスリナのヌツィキ・ビエラ氏、ステレンラストのターシャス・ボソッフ氏。そしてゲストテイスターは前回から引き続き、日本最優秀ソムリエであり、三ツ星フレンチレストラン銀座ロオジエのシェフソムリエ、井黒 卓氏である。

WOSA Japanプロジェクトマネージャーの高橋佳子DipWSET(左)と銀座ロオジエのシェフソムリエの井黒卓氏。

 

以下、内容をサマリーする。

【シュナン・ブラン】

 フランスのロワール地方を原産とするシュナン・ブランは、1655年にヨーロッパから南アフリカに持ち込まれた。かつてスティーンと呼ばれていたが、1963年にロワールのシュナン・ブランと同種であることが大学研究によって明らかとなる。栽培面積は南アフリカ全土の18.6%を占める1万6,827ha(2021年)で世界最大であり、ロワールの栽培面積のじつに約2倍である。病害に強く、酸が豊富で安定した収量を得られることから、シュナン・ブランは南アフリカのワイン産業を支えてきた屋台骨の品種だ。
「古木が多く残る一方、干ばつなどの影響で植え替えも進んでおり、新たな植樹の割合の率も高い」(高橋氏)。
「リンゴ酸が豊富なためフレッシュで、樽との相性も良い。メインディッシュの魚料理などと合わせやすい。ニュートラル品種と言われているが、シャルドネより香りがあり、酸もしっかりしている。ゆえにワインメーカーとしても、面白い品種なのだと思う」(井黒氏)

 

【ワイナリー① KWV】

 1918年にKWV(Ko-öperatieve Wijnbouwers Vereniging Van Zuid Afrika 南アフリカぶどう栽培家協同組合)としてスタートした同国最大手のワイナリー。 ゲスト出演は、KWV内で白、ロゼ、スパークリングを担当するワインメーカー、コブス・ファン・デル・メルヴァ氏。KWV全体で大切にしていることは「お客様の声に耳を傾けること。求められるスタイルのワインを最大限の品質で造ることが私たちの使命。シュナン・ブランをはじめ、業界一丸となって南アフリカワイン全体のブランドを構築していくこと」であると言う。

「KWV クラシック・コレクション・シュナン・ブラン 2021」
「シュナン・ブランの品質はテロワールが決め手」とは、先のファン・デル・メルヴァ氏の言葉だ。今回のセミナーで紹介された「KWV クラシック・コレクション・シュナン・ブラン」は名の通り”クラシックで重要な2つの産地”のブドウを使用。ひとつは花崗岩質土壌が分布するパール地区。シュナン・ブランにとって成熟が常に最適なエリアと言う。熟した果実味とミネラル感のあるブドウとなり、ストーンフルーツ系の果実味で酸が豊富で、出来たワインに余韻をもたせる。もうひとつの産地は、パール地区から北の、頁岩質土壌のマルメスブリー。ブドウは骨格があり、トロピカルフルーツ系の円熟味のある味わいとなる。特徴の異なる2つの産地のブドウをブレンドするのだが、そもそも南アフリカのクラシックスタイルとは「ストレートに果実の特徴を出すこと」だと言う。このため醸造は低温発酵、すべてステンレスタンクで行い樽は不使用。さらに糖度の確認のため、収穫時には実際に畑のブドウを食べて風味を確認すると言う。2021年のヴィンテージについては「凝縮感と果実味、新鮮さをキープし、どのワインも満足いく仕上がりになった」と好調だ。

(井黒ソムリエのコメント)
「低温発酵に由来する、白い花や青リンゴの香りなど、ピュアなシュナン・ブランの特徴が出ている。加えてヨーグルトのようなイースト香も感じられる。味わいはみずみずしい酸があり、快活という言葉がぴったりで夏にちょうど良い。フレッシュなワインなので、淡白なさっぱりした料理に」。
(生産者より、おすすめのペアリング)
「シーフードやクリーミーな食事に合わせやすい。冷やしすぎない方が良く8〜10℃が適温。ブライー(南アフリカのバーベキュー)にもおすすめ。アウトドアでも楽しめるワイン」

 

【ワイナリー② アスリナ】

 南アフリカ初の黒人女性醸造家ヌツィキ・ビエラ氏のワイナリー。昨年初挑戦したと言う、彼女の造るシュナン・ブランは画期的だ。「以前からスキンコンタクトで白ワインを造ってみたかった。果汁を果皮と一緒に発酵させたらどんな白ワインになるのか興味があった」と話すビエラ氏。一方で、同じ様に果汁を果皮と一緒に醸すギリシャやイタリアのオレンジワインはどれも「イメージしていたものではなかった」そうだ。彼女が目指すのは「クリアーな味わいで、あくまで白ワイン。けれども果皮の特徴が加わったもの」だった。

「アスリナ スキンコンタクト シュナン・ブラン 2021」
ビエラ氏は昨年、イメージ通りの白ワインを造るため、リスクを承知でシュナン・ブランのブドウを5トン購入し試験的な醸造を行った。毎朝試飲をしながら発酵の様子を観察。7日目の試飲で「あと数時間」と読み取り、その日にプレス。「最初はフェノリックでタンニンが感じられたが、オリと一緒に2か月ほど置き、安定化処置を行った。わずかなタンニンが感じられる白ワインをイメージして仕上げた」。
そうして実際に出来上がったワインはまさにイメージ通りだったと言う。「私にとって、このシュナンは赤ワインと白ワインの中間的な位置付け。タンニンが感じられるけれども、赤ワインではなく、そのバランスに注目している」。”スキンコンタクトで白ワインを造ったらどうなるのか”という純粋な好奇心から発し、そのワインの成功にビエラ氏はビデオでも晴れやかな笑顔を見せ、今後も注力していく意気込みだ。
2021年のヴィンテージについては「厳しい干ばつが終わって、通常の冬が戻ってきました。剪定、収穫管理も順調」と、良い収穫年となったと述べた。

(井黒ソムリエのコメント)
「オレンジワインは醸しすぎると根や土の香りになるが、これはフルーツの香りが生き生きとしていてクリーンなパレット。まったく違う。苦味はほとんど感じないが、若干、後味でフェノリックビターを感じられ、それが味わいを立体的にしている。ボディとふくよかさがあって、フォルムもきれい。少し脂の乗っているタイやイサキなど旬の魚と合わせたい」。

 

【ワイナリー③ ステレンラスト】

1928年設立、ステレンボッシュの家族経営の名門ワイナリー。シュナン・ブランの名手で、ステレンボッシュに古木の多く残る400haの畑を有し、控えめでフルーティーなタイプから、凝縮感のあるリッチな「オールド・ブッシュ・ヴァイン」まで、様々なスタイルのシュナン・ブランのワインを造っている。今回のセミナーで紹介された「アーティソン マザーシップ・シュナン・ブラン」は、彼らのワインでも比較的新しいラベルで、”規定概念にとらわれないワイン造り”をモットーに醸造されたと言う。
ビデオ出演したワインメーカーのターシャス・ボソッフ氏は、ステレンボッシュ内にある自社の「オールド・ブッシュ・ヴァイン」と「マザーシップ」の区画の違いを次のように解説した。「この2区画は20〜30mほどしか離れていないながら、まったく個性が異なる。オールド・ブッシュ・ヴァインは朝日を浴びる斜面で、マザーシップは夕陽を浴びる斜面だ。朝日を浴びる斜面のシュナンは、リンゴやライムのような酸味の特徴があり、パワーはあるが抑制的。一方で夕陽を浴びる斜面はより暖かくなるので、シュナンはトロピカルフルーツなど、よく熟した果実味となる」。

●シュナン・ブランについて
ボソッフ氏は、シュナン・ブランそのものの特徴について「嫌気的にも、酸化的にも扱うことができる。扱いやすさも特徴。自然の酸が高くてpHが低い」と述べる。自社の古木のシュナン・ブランは樹齢35年以上、ほとんどがブッシュヴァイン仕立てで無灌漑。さらに新たな植樹もブッシュヴァイン仕立てと言う。理由は収量を少なめにでき、ゆっくり成熟させることができるから。成熟スピードが遅くなると、ブドウのストレスが軽減されて自然の酸度が保たれ、結果、凝縮感がありながら酸もしっかりある良質なワインが出来るとのことだ。

●シュナンとシャルドネ、2つの違い

「シュナンには新鮮さや酸味が必要」と、ボソッフ氏はシュナン・ブランとシャルドネの明確な区別を提示した。「シャルドネは果皮にほとんど風味がなく、スキンコンタクトをやってもあまり意味がないが、シュナンでは有効。一方でシュナンでマロラクティックをすると、リッチだがやぼったくなる恐れがある、シュナンは引き締まったワインでなくては!」。

「アーティソンズ マザーシップ・シュナン・ブラン 2020」
このアーティソンズのラベルは”手づくり”がキーワードで、生産本数が1263本と少ない。細やかな醸造ステップによって出来たワインで、ボソッフ氏はビデオで詳しく解説した。栽培は、樹齢50年以上、ミネラルが豊富な鉄分の多い土壌で無感慨。発酵は野生酵母のみ。
「通常、野生酵母は発酵力が強くないと言われているけれども、それだけ発酵がゆっくりと進む。すると酸が保たれる。そしてpHも低く保たれてワインの酸味が良くなり、長期熟成も可能となる」とボソッフ氏。「結果、マロラクティックも起こりにくくなる」と言う。醸造は、6〜12時間スキンコンタクトし、果皮から風味を引き出してプレスする。果汁を沈殿物と分離した際、残った部分の上澄に野生酵母がいるため、その部分を発酵槽(半分フードル、半分卵形コンクリートタンク)に入れて自然発酵を行う。発酵後にフードルのワインをコンクリートタンクに移して満タンにする。その後、卵形コンクリートタンクで9か月熟成。熟成のポイントは「コンクリート内の小さな穴に酸素が含まれ、これがオーク樽での熟成と似た役割を果たしてくれる」とボソッフ氏。さらに仕上げ段階で1%未満のシュナン・ブランの貴腐ワインを、ワインの出来に応じてブレンドする。

(井黒ソムリエのコメント)
「樽熟成していないのに、まるで樽由来のような風味、深みに驚いた。スキンコンタクトや卵形コンクリートタンクでのシュール・リーが、飲んだ時のなめらかさに表れている。しょっぱいと思うくらいの、全体を引き締めるチョーキーなミネラル感が特徴的。表情の変わる、万華鏡のようなワイン」。

 

(まとめ)

 今回登場した3つのシュナン・ブランは、いずれもこの品種の持ち味である豊かな酸を十分に保たせた上で、そこに各生産者が思い描くエッセンスをプラスしたワインだった。KWVはピュアな味わいとバランス。そしてアスリナやステレンラストは、スキンコンタクトや成熟スピードのコントロールにより、風味豊かで複雑性のあるシュナン・ブランに成功している。時にシャルドネと並び”ニュートラル品種”と呼ばれることもあるシュナン・ブラン。しかし後半のステレンラストのボソッフ氏の言葉のように、シュナン・ブランによって各生産者がどのようなスタイルのワイン造りを目指しているかをまずよく知ることが大切だろう。公開されている各ビデオインタビューはぜひ視聴をおすすめする。

本ウェビナーは、WOSA JapanのFacebookよりアーカイブ視聴可能。ページはこちら

【次回のウェンズデー・ウェビナー】
・日時:2022年9月14日(水)15:00〜16:00
・テーマ:ピノタージュ

WOSA Japan公式ページはこちら

 

(N. Miyata)

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