気候変動で変化するシャンパーニュ:近年の動向

写真/セミナーで解説した島悠里(WSET Dip)氏と、今回の試飲会で出展されたワインの一部。

 

6月16日、シャンパーニュ委員会は「シャンパーニュの多様性」をテーマとする試飲会とセミナーを都内で開催した。試飲会場では大手メゾンから小規模生産者、協同組合まで、25生産者のアイテムが出展された。当日のセミナーでは、シャンパーニュに精通しているワインライター/エデュケーターの島悠里(WSET Dip)氏が講師として登壇し、シャンパーニュの近況をレポートした。

シャンパーニュの作付面積は34,300ha。そこに319の村(クリュ)があり、17の村がグラン・クリュである。畑の区画の数は2万8,000にもおよぶ。その畑の90%はブドウ栽培農家が生産し、メゾンが所有する畑は10%にすぎない。
「シャンパーニュはじつに長い歳月を経て土地の理解が深まってきた、歴史的なワイン産地。さらにその高品質の源は、メゾンとブドウ栽培農家との強い連携体制にある。メゾンが全体像を理解し、農家が狭い範囲で、自分たちの土地を理解している。互いに尊重し合う連携体制が重要となってくる」と島氏は解説する。
土地の個性を表す例のひとつが、テタンジェの「コント・ド・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン」である。コート・デ・ブラン地区の5つのグラン・クリュのシャルドネをブレンドしており「テタンジェのスタイルとともに、コート・デ・ブランの土地の個性を示す」と島氏は言う。別の例ではルイ・ロデレールは、グラン・クリュであるアヴィーズ村(コート・デ・ブラン地区)の4つの区画をブレンドし、土地を表現している。

 

そして最近の動向について、島氏は次の3点を挙げた。

1)若手や新たな造り手の活躍。それに伴い、昔は注目されていなかった村が発展している。モンターニュ・ド・ランス地区は好例で、ムニエで成功しているジェローム・プレヴォーらを輩出している。

2)品種の多様性。主要3ブドウ品種以外への品種への関心が高まっている。具体的にはアルバンヌ、プティ・メリエ、ピノ・ブラン、ピノ・グリなどで「アルバンヌは、昔は冷涼なシャンパーニュでは難しいとされたが、温暖化の影響で気温が上昇している今、晩熟で酸が高いため期待されている」と島氏。

3)スタイルの変化。背景には温暖化がある。ブドウの熟度が上がっているためドサージュが減っている。「フレッシュさが求められる時代に変わってきていると感じる。時代とともに南向きから、北向き斜面へ注目が移るかもしれない」。
ルイナールの例では、気候変動によってアロマのプロファイルに変化があるため、それに対応した新キュヴェ「ブラン・シンギュラー」をリリースしている。
また、ブドウがよく熟してきたことにより、2018年頃から、コート・シャンプノワのスティルワインも増えてきた印象という。

なおシャンパーニュ委員会は、具体的なイニシアチブを掲げて環境保護対策を進めている。例えば、2050年までのCO2排出量の75%削減、2030年までに全栽培地のエコ認証取得などを目標としている。

2022年のシャンパーニュの売上高は63億ユーロ以上で、過去最高を記録している。日本は第3位の輸出国で、重要マーケットだ。それも「多様なシャンパーニュが良質な状態で飲める、世界的にも稀有なマーケット」と島氏は述べた。

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