ビオディナミでアブルッツォの風土を 「愛しの石」ピエトラモーレ

左から「ヴィーノ・フリッツァンテ メトド・アンチェストラーレ」「ペコリーノ・スペリオーレ 2019」「トレッビアーノ・ダブルッツォ スペリオーレ 2019」「モンテプルチャーノ・ダブルッツォ 2019」。

 

イタリア中部アブルッツォに、石を愛する、と称えるワイナリーがある。アンティカ・テヌータ・ピエトラモーレだ。「Pietramore」は、イタリア語で愛しの石、という響きを持つ。それぞれのブドウ品種に適しているのはどんな土壌か。足元の石を見てよく観察せよ、との思いだ。

アブルッツォ州のキエーティが拠点で、約80haの畑を所有。自然をいたわったブドウ栽培で、ビオディナミに特化。2018年にデメターを取得、オーガニックとヴィーガン認証も持っている。ラベルは土壌の写真と星座が融合したデザインで、「昔の人々は、月の満ち欠けで収穫時期を決めていた。ラベルはその古い習慣を表している」と、オーナーで醸造責任者のマッシミリアーノ・バルトロメイ氏は語る。海と山との距離が近く、風がよく通るアブルッツォは、ビオディナミ農法に良い条件がとくに揃っている。

7月27日、「神田明神下みやび」で開かれたメーカーズ・ディナーでは、4種のビオディナミのワインが供された。

・「ヴィーノ・フリッツァンテ メトド・アンチェストラーレ」はトレッビアーノで造った、亜硫酸無添加のペットナット。原産地呼称はコッリ・アプルティーニIGP。酵母の香りとソフトな酸味が食欲をそそる、食前酒にぴったりの1本。グラスに注いだ後、温度による味わいの変化も楽しめる。「まさに生きているワインだ」とバルトロメイ氏は胸を張る。

・「トレッビアーノ・ダブルッツォ スペリオーレ 2019」は樹齢40〜50年。一般的にトレッビアーノは収量が高く、シンプルなスタイルになりがちだが、このワインは古木のため収量が少なく凝縮感があり、力強い。会を運営したソロイタリア代表の林茂氏は「ビオディナミのワインはエキス分が強いため、アロマの控えめなトレッビアーノはえぐみが出やすい。だから味のしっかりついた料理とのペアリングが良い」と話す。一方で次に紹介するペコリーノは「品種由来の強いアロマがエキス分とバランスを取る」と言う。

モンテプルチャーノに合わせたみつせ鶏の焼きつくね串。

・ペコリーノはアブルッツォで人気沸騰中の白ブドウ品種で、ここ10年で作付面積は4〜5倍ほどにもなっているそうだ。ピエトラモーレでは樹齢40年のペコリーノの古木を所有しているが、その頃は「トレッビアーノに比べて生産性が低く、顧みられなかった。近年、その長期熟成ポテンシャルが発見され人気を博している。樽熟成しなくても、皮と種に含まれるアントシアニンからハチミツのニュアンスが出てくる」とバルトロメイ氏。樹齢40年の「ペコリーノ・スペリオーレ 2019」はステンレスタンクで発酵しシュール・リー。熟した黄色い果実、アーモンド、炒ったヘーゼルナッツの香りに、ミネラル感も。なめらかなタッチで熟成ポテンシャルは7〜8年と言う。完熟したブドウを選果しているので味がしっかり詰まっている。

・「モンテプルチャーノ・ダブルッツォ 2019」は海に近い畑と山側の畑から造られる。海の畑が果実味を、山の畑がアロマをもたらしていると言う。醸造では開放桶で足踏みでプレスし、マセラシオンの後、果汁の一部を抜きとってさらに凝縮感と色合いを高める。タンクで6か月、瓶で2か月熟成。ふくよかなボディで、ダークチェリー、海藻のノートも。細かなタンニンで口当たりはやわらかい。「もともとモンテプルチャーノはタンニンやフェノール分が豊富で、個性が強く力強い。それをどう表現するか、どうやって優しく造るかが重要だ」と、バルトロメイ氏。

輸入元:アプレヴトレーディング

右から、オーナー醸造家のマッシミリアーノ・バルトロメイ氏、コマーシャル責任者のマリア・ピア・レオーネ夫人、運営したソロイタリア代表の林茂氏。

(N. Miyata)

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