ガルダ湖岸に広がるヴァルテネジを代表する生産者コスタリパCostaripa by マッティア・ヴェッツォーラ

ガルダ湖岸に広がるヴァルテネジはイタリアでも最良のロゼワインの一つが造られる産地だ。瓶内二次発酵スパークリングも秀逸なものが生まれ、注目を集めている。ヴァルテネジを代表する生産者がコスタリパだ。

 

ヴァルテネジはガルダ湖南西岸に広がるなだらかな丘陵地帯だ。デセンツァーノからサロまで20キロにわたり南北に延びる湖岸に沿って広がるブドウ畑は東向きで、朝の太陽の恩恵を受ける。イタリア最大の湖であるガルダ湖は冬でも水温が7度以下になることはなく、温暖な亜地中海気候を生み出す。ヴァルテネジでは冬でも気温がマイナスになることは稀である。そのおかげで、柑橘類が栽培可能な世界的北限となっている。年間日照時間3000時間(世界平均2500時間、日本平均は1850時間)と太陽に恵まれ、朝夕にやさしい風がガルダ湖から吹く。氷堆石丘陵の軽い土壌で、水はけがいい。

「ヴァルテネジには約67種類の土壌があり、私たちのワインに調和、アロマの複雑さ、軽やかな口当たり、ミネラルの持続性を与えてくれます」と話すのはコスタリパのオーナーで、著名な醸造家マッティア・ヴェッツォーラだ。

 

ロザマーラ

ヴァルテネジは優美で、軽やかなロゼワインが造られることで知られる。コスタリパがあるモニガ・デル・ガルダでは上院議員ポンペオ・ゲラルド・モルメンティが1896年にキアレット・ディ・モニガを造り、これがイタリア最初のロゼワインとされる。使用された品種はグロッペッロ・ジェンティーレで、洗練され、デリケートな品種だ。寒さに弱いグロッペッロにとって温暖なヴァルテネジの気候は理想的だ。コスタリパの代表的なロゼワインであるヴァルテネジ・ロザマーラはグロッペッロを主体に1983年から造られている。著名な「ガンベロ・ロッソ・イタリアワインガイド」で最高評価であるトレ・ビッキエーリを獲得したこともあり、イタリアを代表するロゼワインの一つだ。ロザマーラ2021は淡いピンク色で、グレープフルーツ、オレンジ、ピーチ、赤い果実の香りにスミレとかすかな胡椒が混ざる。イキイキとした味わいで、かすかにアーモンドを感じさせ、上品なミネラルが長く続く。太陽と湖の風を感じさせるみずみずしいロゼワインでとても魅惑的だ。ブドウの樹齢は25年以上と高く、完璧に成熟したブドウだけを朝の涼しい時間帯に収穫している。そしてブドウを無理に圧搾せず、自然な重みで涙のように滴るフリーラン果汁だけを使用している(「ラクリマ方式」ラクリマはイタリア語で涙を意味する)。果汁の35%は古いオーク小樽(228リットル)で発酵、6ヶ月熟成させることによりアロマとヴォニュームに広がりを与える。

ロゼには珍しく驚くべき長期熟成能力を示すのがヴァルテネジ・モルメンティで、2年の小樽(400リットル)熟成、3年の瓶熟成を経てリリースされるロゼワインだ。2015ヴィンテージはガンベロ・ロッソ・イタリアワインガイドのイタリア最高のロゼワインに選ばれている。10~15年の熟成能力がある軽やかながらも堅固で、複雑なワインだ。

 

マッティア・ヴェッツォーラ・メトド・クラッシコ・ブリュット

コスタリパはロゼワインだけでなく瓶内二次発酵スパークリングも素晴らしい。マッティア・ヴェッツォーラは1981年から2021年まで40年にわたりフランチャコルタの名門ベッラヴィスタの醸造責任者を務め、優美極まりないスタイルを築き上げた功績者だ。その優れた感性を活かして、自分のワイナリーでも洗練されたスパークリングワインを造る。マッティアが瓶内二次発酵スパークリングに出会ったのはコネリアーノ醸造学校を卒業した1972年にシャンパーニュ地方を最初に訪問した時だ。

「コネリアーノ醸造学校ではすでにステンレスタンクなどの新しい技術に触れていました。ただシャンパーニュ地方では木の縦型プレス、小樽発酵など伝統的なワイン造りが行われていました。抜栓してから12時間が経ち、ガスも抜けて、温度も高くなったシャンパーニュを飲む機会があったのですが、完璧にバランスとアイデンティティを保っていました」。シャンパーニュに感銘を受けたマッティアは翌年の1973年にシャルドネとピノ・ネーロでマッティア・ヴェッツォーラ・メトド・クラッシコを造る。「スパークリングワインはイタリアの醸造家から軽視されていましたが、私は真剣なワインで、複雑で、魅力的だと考えていました」。

その後、50年間にわたりマッティアが瓶内二次発酵スパークリング造りにおいて追求してきたのは、技術よりも手作業、感性、直感を重視する職人的なスタイルだ。畑では自然な栽培を行い、土壌についてはビオディナミ哲学を導入する。完璧に成熟したブドウを区画ごとに収穫、醸造、熟成するのでベースワインは40種類を超す。発酵、熟成には一部小樽(35年以上のものもある)を使用する。動瓶は手作業だ。「完璧を目指すのではなく、大地との感覚を保ち、感性を磨いてワインを造ることが重要です」

シャルドネ100%で造られるマッティア・ヴェッツォーラ・メトド・クラッシコ・ブリュットは繊細な白い花、リンゴ、洋梨のアロマにサルヴィアなどのハーブが混ざる。味わいは優美で、柑橘類を想起させ、きめが細かく、絹のような口当たりで、フレッシュだ。シャルドネ80%、ピノ・ネーロ20%で造られるとマッティア・ヴェッツォーラ・メトド・クラッシコ・ブリュット・ロゼは赤い果実、チェリーにかすかにオレンジが混ざる。味わいは調和がとれて、なめらかで、これも絹を想起させる繊細な口当たりだ。両方とも軽やかで、細部が鮮明で、複雑で、とてもしなやかだ。一貫したマッティア・ヴェッツォーラ・スタイルが明確に見られる。

 

マッティア・ヴェッツォーラ・メトド・クラッシコ・ブリュット・ロゼ

イタリアを代表する醸造家の一人であるマッティア・ヴェッツォーラはなんと5回もイタリア最高の醸造家に選ばれていて(2004年イタリアソムリエ協会により、2008年ガンベロ・ロッソ・イタリアワインにより、2014年イタリアソムリエ財団により、2015年ドイツソムリエ協会により、2020年にフード・アンド・トラヴェル・イタリア誌により)、輝かしいキャリアを誇る。

1928年にマッティアの祖父が創設したコスタリパは現在3代目のマッティアと4代目の息子ゲラルド、娘ニコールが運営している。2004年に完成した新醸造所を2020年に拡張して瓶内二次発酵スパークリング造りのためだけのスペースをつくった。ワインショップも完成し、訪問客を迎え入れる体制も整っている。2022年からベッラヴィスタを引退してマッティアが自らのワイナリーに専念することもあり、独自の哲学とワイン造りを行うコスタリパのさらなる躍進が期待される。

(Isao Miyajima)

 

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