M.シャプティエ 7代目当主ミッシェル・シャプティエ氏 ワインを通して独自の哲学を語る

 

北部ローヌのタン・エルミタージュで1808年に創業したシャプティエは、1990年に今の当主で7代目となるミッシェル・シャプティエ氏が継承した。ローヌでいち早く1991年からバイオダイナミック農法への転換を始め、1999年にはデメテールの認証を取得したことでも知られている。久しぶりに来日したミッシェル・シャプティエ氏が近況を語った。

まず、5年ほど前から造っているスパークリングワイン「ラ コンブ ピラット ブリュット ナチュール ビオ 2019」を披露した。 ヴィオニエ100%で、アンセストラル法により4.5気圧の優しい泡立ちだ。白い花や柑橘類の上品な香りで、キリッとした酸と塩っぽさがあり、柑橘類の日向夏を食べたような後味が印象的。

「余韻の塩味はバイオダイナミック農法に起因する。このようなミネラル分は土壌に由来するもので、土中の活発なバクテリアの存在が重要」とシャプティエ氏。

「エルミタージュ ブラン シャンタルエット 2018」と、「エルミタージュ ブラン ドゥ ロレ 200」を比較試飲した。前者は、まだ閉じ気味で、ハチミツ、洋梨のコンポートのような香りで、なめらかな粘性さえ感じるテクスチャーで、ほのかな苦味があり、ミツロウのような余韻。後者は、静かな香りでハチミツやスパイスが感じられ、味わいもしなやかで粘性や弾力も感じられるが落ち着いた味わいで、余韻にはうま苦味が感じられる。

同社ではエルミタージュもクローズ・エルミタージュも白はマルサンヌ100%。その理由を次のように説明した。

7代目当主ミッシェル・シャプティエ氏。

「マルサンヌは酸が低いが、エレガントな苦味が長期熟成可能性をもたらす。収穫年から7年ほどの若い段階ではフルーティー。次の7年間は思春期のような時期で果実風味は苦味へと変化する。そしてさらにその後、スパイシーさが現れる」。シャプティエ氏は、料理との組み合わせの観点からも、ワインは甘味や酸味より苦味や塩味の方が重要だと考えている。そして、自生酵母のみで発酵させることで独特のアロマを導き出せる。

「シンフォニーのように、オーケストラのバリエーションが多いが、香りはあまり複雑過ぎたり強過ぎたりしないようにと考えている」と、付け加えた。

また、収穫時期は遅いと言う。酸は求めていないため、完熟を過ぎた頃に収穫。ちなみに収穫日は分析に頼らずブドウを食べて収穫日を決めるそうだ。

近年の気候変動についての見解も興味深い内容だった。

「直近の2023年は暑いヴィンテージだったが、そうとは思えない結果が出た。この20年で動物も植物も気候変動に対応してきていると感じており、ブドウも例に漏れない。2003年はとても暑かった。2020年も2003年に良く似た暑さだったが、2020年のワインの味わいは2003年とはまったく異なる。DNA情報が変化してきているのだと思う」。

そして、M.シャプティエの看板ともいえるエルミタージュの赤、2アイテムもh比較試飲した。

「エルミタージュ ルージュ モニエ ド ラ シズランヌ 2015」は3つの畑のブレンドで土壌は花崗岩と沖積土壌。「エルミタージュ ルージュ ル パヴィヨン 2012」は、花崗岩の単一畑。前者は、ゲイミーさが感じられるが大変若々しく、とてもバランスの良い味わいでタンニンがほど良く味わいを引き締めている。後者は、黒系果実とスパイス、香ばしさなどの香りがとても華やかでハツラツとしている。厚みがありなめらかなテクスチャーで、酸もフレッシュ、ストラクチャーも強く、時間とともにどんどんと広がりを見せる。

赤ワインについては、以前は100%除梗していたが、2020年から少しずつ全房発酵も行っている。およそ20〜30%全房にすることで、アルコール度数が0.3〜0.4%下げられるからだ。また、アルコール度数が高いと樽熟成中に樽の要素を吸収しやすいため、熟成用の樽の容量を600ℓから1,200ℓへと変更し始めている。M.シャプティエが追求するスタイルを継続するために、微調整を重ねているようだ。また、2017年には8代目が参画したという。今後の動向も注視したい。(Y. Nagoshi)

輸入元:サッポロビール

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