【生産者来日レポ】和に沁み入る サヴォワワインを知る

1月末、フランス東部サヴォワのワインを知る機会があった。山岳地帯のワイン産地だ。サヴォワの東はアルプス山脈の裾野で、山を越えればピエモンテ。19世紀まで、この一帯はサヴォイア家の統治下にあった。1860年、サヴォワ地方はニース伯領とともにフランスに併合される。

「うちは6代続く家族経営だが、1860年以前の古いワインの資料は、言語がフランス語ではないので読めない」

来日した生産者のひとり、ドメーヌ・デュプラの6代目ジェレミー・デュプラ氏のコメントが印象的だった。

 

来日した生産者8名とサヴォワワインを楽しむディナー会に参加した。主催はサヴォワ・ワイン生産者委員会(CIVS)、ナビゲーターは、ワインディレクターの田邊公一氏。東京・広尾の「蕎麦割烹こうもと」で、和食との相性を確かめた。田邊氏は「サヴォワ全体的に言えるが、うま味の強いワインが多い」と話す。だから、出汁や味噌を効かせた和食に抜群なのだ。食事の席では生産者ら間でも熱心に「umami」の言葉が交わされた。

メゾン・ヴィアレ クレマン・ド・サヴォワ NV。茶碗蒸しやおひたしに馴染む優しいミネラル感。

サヴォワワインは生産の70%が白で、品種はジャケールが最多。AOPができたのは1973年のことで、その頃からクオリティワインの産地として発展してきた。現在、AOPは3つあり、さらに20の地理的名称の表記が認められている。

 

〈供された8種〉

メゾン・ヴィアレ クレマン・ド・サヴォワ NV
AOP:クレマン・ド・サヴォワ
ジャケール40%、アルテス40%、シャルドネ20%。瓶内熟成12か月以上のクレマン。芳しい白い花の香り、花の蜜やリンゴの味。清々しい酸味が和食のおひたしの苦味とバランスを取り、ミネラル感が、茶碗蒸しの出汁と調和する。

 

メゾン・カヴァイエ テール・ド・ファミーユ 2022
AOP:サヴォワ シニャン
品種はジャケール。粘土石灰質の畑。豊かなミネラル感が最大の特徴で、からすみとぴったり。酒質はクリーンで、魚介類に馴染む。

 

お造りと合わせたドメーヌ・デュプラ テール・ブランシュ 2022

ドメーヌ・デュプラ テール・ブランシュ 2022
AOP:サヴォワ アプルマン
畑は花崗岩を含む氷堆積土壌。樹齢55年のジャケールを、ドゥミ・ミュイ樽で15か月、シュール・リーで熟成。柑橘の香りに、貝殻のようなミネラル、しっかりとうま味。生産者は「土壌の花崗岩質がフレッシュな酸の源」と言う。

 

ドメーヌ・デ・クロ・ブラン ゴッド・セーヴ・ザ・アルテス 2022
AOP:ルーセット・ド・サヴォワ
品種はアルテス。力強い白ブドウ品種で、ジャケールよりもアルコール度数が上がりやすい傾向にある。粘土石灰質の畑で、自生酵母で発酵。黄色い果実やスパイス、土っぽさを伴ううま味がある。味噌で味つけしたきのこ、生姜、香ばしく焼き上げたサワラとともに。

 

シャトー・ド・ラ・ジャンティオミエール モンドゥーズ フュ・ド・シェーヌ 2020。滑らかな食感の和牛との相性には、生産者らも舌鼓を打った

メゾン・パースヴァル シャトー・ド・ラ・ジャンティオミエール モンドゥーズ フュ・ド・シェーヌ 2020
AOP:モンドゥーズ
品種は黒ブドウのモンドゥーズ。傾斜が40度にもなる畑。完全除梗し、フードルで15か月熟成。ブルゴーニュグラスで飲むのがおすすめ(試飲会場で小ぶりのグラスで試飲した時と、印象が大きく変わった)。スミレ、赤い果実、みずみずしい酸をそなえてエレガント。

 

ドメーヌ・キャレル&サンジェ ル・マレステル 2020
AOP:ルーセット・ド・サヴォワ ル・マレステル
サヴォワ地方がフランス併合前の1830年に創業、現在6代目。このワインは樽熟成に5〜10年かけたアルテスで、長期熟成により土やアーモンドのニュアンスを醸し出す。ごぼうの料理に。マレステルという地名は、アルテスをサヴォワに持ち込んだと云われるマレット伯爵に由来する。

 

ドメーヌ・ベルトリエ レ・サラン 2021
AOP:サヴォワ シニャン-ベルジュロン
サランは「塩味のある」という地名を表し、畑は白い石灰質土壌。品種はルーサンヌだが、サヴォワでは昔ベルジュロンと呼ばれていた。同じ名の村がある。
自生酵母で発酵、SO2無添加。醸造は樽、ステンレスタンク、アンフォラで12か月熟成。こくがあり、まろやかで、胡麻蕎麦のほのかな苦味と、ワインの苦味が一体感をつくりだす。

 

ドメーヌ・フロラン・エリティエ アルテッシマ 2020
AOP:ルーセット・ド・サヴォワ フランジー
アルテスに特化した生産者で、オーガニックとバイオダイナミクスの認証を取得。「究極のアルテス」という響きのこのキュヴェは、卵形コンクリートタンクで18か月熟成。花梨、金木犀の香りが長く続く。サヴォワ産チーズ、麹のうま味とともに、その余韻を楽しめる。

(N. Miyata)

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