アルゼンチンの革新、エル・エネミーゴ

写真:「エル・エネミーゴ」のレンジでは、7種(シュナン・ブラン、セミヨン、シャルドネ、シラー&ヴィオニエ、マルベック、カベルネ・フラン、ボナルダ)を展開し、アルゼンチンワインの多様性を体現している。写真はそのうちの4種。

エル・エネミーゴは、アルゼンチンワインの革新性を示す好例である。2008年に設立されたこのワイナリーは、アルゼンチンの雄カテナ・サパタのヘッドワインメーカー、アレハンドロ・ヴィヒル氏とカテナ家の末娘アドリアーナ・カテナ氏のジョイントベンチャーとして誕生した。エネミーゴとはスペイン語で“敵”の意味だが、「大元の安定したところにいると、新しいものを生み出さない」という信念のもとで、この商号が選ばれた。

エル・エネミーゴのヘッドソムリエ、ホアキン・ディアス氏。

2024年10月、アルゼンチン大使公邸でエル・エネミーゴのワインセミナーが開催された。特筆すべき点は、マルベックではなくカベルネ・フランに注力していることだ。同社のヘッドソムリエ、ホアキン・ディアス氏は「カベルネ・フランはテロワールを表現するのに適している」と語る。曰く、カベルネ・フランはマルベックとカベルネ・ソーヴィニヨンの中間的な特徴を持つ。「マルベックは甘くて優しいので日常で飲む。カベルネ・ソーヴィニヨンは凝縮していて強い。カベルネ・フランはその間に落ち着く」。

エル・エネミーゴがテロワール研究を進めているのは、メンドーサ地方のグアルタジャリーだ。従来のアルゼンチンワイン生産の中心は東部のルハン・デ・クージョにある。しかしエル・エネミーゴは複雑な味と酸の高いワインを造るため、西部、アンデス山脈側の涼しい地域に新たな畑を開拓した。この地域は、わずか15km圏内にウィンクラースケールの1から4までの気候条件が存在するという特徴を持つ。ディアス氏は「グアルタジャリーの高地は1,500m超えで、ブルゴーニュやシャンパーニュに匹敵する環境がある一方、900m以下の地域ではローヌのシャトーヌフやプリオラートに似た条件がある」と説明。この多様性が、異なるスタイルのワイン製造を可能にしている。

「グラン・エネミーゴ シングル・ヴィンヤード グアルタジャリー 2019」(左)と「同 アグレロ 2019」。それぞれカベルネ・フラン85%、マルベック15%。

同社のフラッグシップワイン「グラン・エネミーゴ シングル・ヴィンヤード グアルタジャリー 2019」は、標高1,470mの単一畑、石灰岩質で岩が多い土壌。引き締まった酸と優雅な果実味に、硬質なミネラル感が心地良い。ジェームズ・サックリングとロバート・パーカーそれぞれで100点満点の評価を獲得。この快挙は、エル・エネミーゴの品質追求の成果を如実に示している。

日本では北山商事が2020年から輸入を開始。同社はアルゼンチンワインの輸入に特化した事業を展開する。代表の北山薫氏は、在ペルー日本大使館勤務時代にアルゼンチンワインの魅力に触れ、日本ではまだ知られていないこの国のワインの魅力を紹介することを使命としている。

(N. Miyata)

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