DOリアスバイシャス – 世界が注目する高級白ワイン

講師を務めた菊池貴行氏。

2024年10月、DOリアスバイシャスのマスタークラスが東京で開催された。大西洋に面したスペイン・ガリシア地方の高級白ワインが集結。「ティンガナ」シェフソムリエの菊池貴行氏が、その魅力を語った。

大西洋に面したスペイン北西部、ガリシア地方に位置するリアス・バイシャス。9世紀、聖ヤコブの亡骸が流れ着いたという伝説がある。北部をリアス・アルタス、南部をリアス・バイシャスといって区別しているが、その伝説をもとに、1200年ほど前から、大寺院を詣でる巡礼がそこを通るようになった。その歴史は、ワイン生産の発展とともに歩んできた。現在ではDOリアス・バイシャスとして、高品質な白ワインを世界に送り出している。
年間降水量は平均1,000mm〜1,500mm。雨の量はスペインの他の地域の2〜3倍に及ぶ。日照時間は年間2,200時間でバランスをとっている。冬は温暖で霜のリスクがなく、夏はゆっくりとブドウが熟成する。大西洋性気候と花崗岩土壌が、独自のテロワールを形成している。

マスタークラスと試飲会に合わせて来日した、DOリアス・バイシャスの事務局長ラモン・ウイドブロ氏。

DOリアス・バイシャスには、177軒のワイナリーと5,000名のブドウ栽培者がいる。総面積は4,537haで、畑の97%をアルバリーニョ品種が占める。「アルバリーニョは、アルコール度数は12%を超えるのが一般的で、14%のものもある。天然の高い酸も併せ持つ。伝統的な栽培方法はペルゴラ(棚仕立て)で、湿気や病気を防ぎ、葉や実に十分な日光を与えている。なお現在は、機械作業が容易なエスパルデラ(垣根仕立て)への移行が進んでいる。収穫量は減るものの、高品質なブドウ生産が期待されている」と、菊池氏。

近年は大手ワイナリーの参入が顕著な産地で、リアス・バイシャスの高品質化を後押ししている。クネ、ラモン・ビルバオ、マルケス・デ・ムリエタ、ベガ・シシリアといった名門が参入し、世界的な高級白ワインの産地として確立しつつある。「この背景には気候変動の影響も無視できない」と菊池氏は指摘する。たとえばスペインで同じく白ワインの生産地として有名なカタルーニャ地方では、近年、深刻な干ばつの問題が続いている。そこで恵まれた雨の気候を持つリアス・バイシャスへの関心が高まっているのだ。

マスタークラスで紹介された8種のワイン。

 

サブゾーンは5つで、最大の栽培面積を誇るバル・ド・サルネスは、海岸沿いの冷涼な気候と花崗岩土壌が特徴で、鮮烈な酸味と複雑な風味を持つワインを生み出している。一方、内陸部に位置するコンダード・デ・テアは、より温暖な気候と浅いスレート土壌により、完熟したブドウから豊かな果実味のワインが造られている。
オ・ロサルは、アルバリーニョ以外の地元品種とのブレンドで知られ、多様性に富んだワイン造りが行われている。ソウトマイヨールは最小のサブゾーンで、ワイナリーは10軒ほどしかないが、独自の個性を持つワインを生産。
そして2000年、最後に認定されたリベイラ・ド・ウリャは、内陸の高地に位置し、アルバリーニョ以外の白ブドウ品種(トレイシャドゥーラ、トロンテス、ゴデーリョ)や赤ワインも生産されている。菊池氏は「今後のポテンシャルを秘めた、要チェック」と評している。
以下は、マスタークラスで紹介された8種のうちの4種。

Paco Y Lola, Heritage 2019 (バル・ド・サルネス)
大樽で19か月熟成のアルバリーニョで、フルーティで甘い白桃の香り。
「後味に収斂性が残る。ルビア・ガジェーガ(高級ガリシア牛)と相性が良い」と菊池氏。

Attis Bodega y Viñedos, Attis Lias Fincas 2022 (バル・ド・サルネス)
ステンレスタンクとオーク樽で6か月間シュール・リー。「かんきつ系のコンフィ、厚みのあるアルバリーニョ。アルバリーニョでもシュール・リーをしたタイプは、瓶熟成で酸のかどが取れてきて、うま味と馴染んできた頃がおいしいと思う」と菊池氏。温野菜、冷製の肉、チョリソーなどに。

Carlos Castro Serantes, Albariño Finca 3 Pedras 2023 (バル・ド・サルネス)
天然酵母による発酵。フレッシュなタイプで「かんきつ系の黄色い香り。レモンやグレープフルーツ、白い花、ハーブの爽やかさ」と菊池氏。

Alberto Cabaco Mariño Bodegas Pentecostés, Pentecostés varietales 2022 (オ・ロサル)
アルバリーニョ62%、カイニョ15%、ロウレイラ8%、トレイシャドゥーラ8%、ゴデーリョ3%。高台の畑で、ワインの10%はオーク樽で熟成。「月桂樹やカモミール、樽由来のふくよかさと複雑味が特徴」。

 

リアス・バイシャスで生産されるワインの99%が白ワイン。生産量と輸出市場は右肩上がりで、大手資本の参入も相まって価格も高騰している。菊池氏は「リアス・バイシャスはもう手頃なワインではなく、高級白ワイン産地になっている」と強調する。2000年以降にテロワール研究が発展し、サブゾーンごとの個性が見えるようになったほか、今後は長期熟成ワイン、さらには赤ワイン生産への挑戦が期待されている。

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