新生・カリフォルニアワイン協会日本事務所は昨秋、毎年恒例の「カリフォルニアワイン グランドテイスティング 2018」を開催した。今回はカリフォルニアワインのインポーター40社余と日本未輸入ワイナリーを含む生産者がワインを試飲展示、また2部構成によるセミナーも開催した。セミナーのひとつは、「カベルネ・ソーヴィニヨンを通じて知るカリフォルニアワインのサステイナビリティ」がテーマで、講師を務めたのはワインエデュケーターでヴィニクエスト代表の小原陽子氏。以下、講演の要諦を紹介する。
サステイナビリティとは何か? ワインづくりにおいて実際に何をやるとサステイナビリティと呼ぶことができるのか? 小原氏は、その要件を
①環境的にやさしく、
②経済的に実現可能であること、
③近隣への配慮や従業員への対応など社会的に公正であること
と定義づける。
カリフォルニアでは2002年にワイン協会や栽培者組合が協力して「カリフォルニア・サステイナブル農法規約(California Code of Sustainable Winegrowing)」を策定し、その翌年からこれに基づいて活動を行っている。この規約は全409頁にわたる膨大なもので、栽培・醸造法にとどまらず、生態系やエネルギー、水の管理、人材活用や近隣および地域との関係性などの詳細を定めている。
たとえば、栽培に関する規定では、新梢密度、除葉、剪定の度合い、仕立て方など19 項目についてテーマを設定。“Balanced Vines”の項目では、チェックポイントとして、
①ヴェレゾン時には新梢の成長がほとんど無いこと、
②新梢の長さは36~54 インチ、
③北部では50%以上、セントラル・ヴァレーでは20~40%の果実が外から見えること。ただし、最も暑い時間帯である午後3時から4時の間は長時間直射日光に晒されないこと、
④空気や日光を通すため樹冠には20~40%の隙間があること、といったように事細かに定められている。
これらの規定はサステイナビリティの度合いに応じて1~4のカテゴリ区分があり、専用websiteを通した自己申告ベースで、全項目のうち85%以上がカテゴリ2以上であればCALIFORNIA Sustainable Winegrowing Allianceの認証を受けることができる、という仕組みだ。
サステイナブルを運用する際のキーワードのひとつに水資源の確保と再生利用がある。カリフォルでは水不足が深刻で、ブドウを栽培する際に必要とされる灌漑はこの課題と矛盾する。ある組織の調査によると、地中海性気候の下でブドウの成育期だけに灌漑する方法でも、必要とされる水の量はhaあたり265万ℓ、25mプール4個分となるという。ドリップ式灌漑は蒸発も少なく水を効率的に使える他、コントロールが容易で、雑草の繁殖が抑えられる、土壌や養分の流出が少ないなどの利点があるが、その一方で水分中のカルシウムの凝固などに伴うパイプの目詰まりのリスクや、初期投資が大きい、設置・設定に知識が必要といったデメリットもある。こうした中で、例えばガロでは通常1本の灌漑用パイプに対して8本を敷設し、30mx30m単位で灌漑を管理することにより水使用量を2割カットしているという。
つづきはWANDS 2019年1月号をご覧ください。
1月号は「ブルゴーニュワイン、イタリアワイン、ウイスキー」特集です。
ウォンズのご購読・ご購入はこちらから
紙版とあわせてデジタル版もどうぞご利用ください!
最近のコメント