
アサヒグループホールディングスは11月27日、サイバー攻撃によるシステム障害に関する調査結果の説明会を都内で開催した。
アサヒビール・アサヒ飲料・アサヒグループ食品で受注・出荷活動は手作業によって一部で行っていたが、システム経由での受注を12月2日から順次再開すると発表。2月までには全商品の出荷再開には至らないものの物流業務全体の正常化を目指す。
勝木敦志取締役兼代表執行役社長CEO、﨑田薫取締役兼執行役GroupCFO、アサヒグループジャパン濱田賢司代表取締役社長兼CEOが登壇し、これまでの概要や今後の復旧計画、第3半期(7-9月)や通期の決算の開示が遅れるが、業績悪化は避けられないものの中長期の戦略は変えないこと、また攻撃者との接触はなく金銭の支払いはないことなどを明らかにした。
■事案の概要
9月29日午前7時ごろに同社のシステムに障害が発生。調査を進めるなかで暗号化されたファイルがあることを確認し、午前11時ごろに、被害を最小限にとどめるためにネットワークを遮断しデータセンターを隔離した。
その後の調査で、システム障害発生の10日前に外部の攻撃者がネットワークに侵入し、パスワードの脆弱性をついて管理者権限を持つアカウントを通じて、業務時間外に複数のサーバーへの侵入と偵察を繰り返し、9月29日にランサムウエアが一斉に実行され、サーバーやPCの一部データが暗号化されたことが分かった。
勝木社長は「多くのお客様、関係先の皆さまに多大なるご迷惑をおかけしていることを心よりお詫び申し上げる」と謝罪するとともに、「このような状況にもかかわらず、お客様からは励ましの言葉や手紙を頂戴し、関係先の皆さまには不規則で通常とは異なる商品供給の対応をお願いしているにもかかわらず、大変なご協力を賜っている」と感謝した。
今回、漏えいのおそれがある個人情報(11月27日時点)は、アサヒビール・アサヒ飲料・アサヒグループ食品のお客様相談室に問い合わせした人の氏名、性別、住所、電話番号、メールアドレスなど、合計で191.4万件。なお、攻撃の影響は日本国内で管理しているシステムに限られる。
■システムの復旧
サイバー攻撃発生から約2か月にわたりランサムウエア攻撃の封じ込め対応、システムの復元作業及び再発防止を目的としたセキュリティー強化を実施。外部専門機関による鑑識調査や健全性検査、ツイカのセキュリティー対策を経て、安全性が確認されたシステム及び端末から段階的に復旧を進めている。
この間、商品受注や出荷については、電話やFAX、紙やExelによる手作業で対応が続けられてきたが、12月2日からEOS(電子受発注システム)を使った受注を再開する。アサヒグループ食品が12月2日(12月11日以降納品分)から、アサヒビールとアサヒ飲料は12月3日(12月8日以降納品分)から再開する予定。
「今後も継続した監視と改善及び追加のセキュリティー対策の強化を行い、再発防止と安全な運用維持に努める」としている。
■決算への影響
第3四半期業績は、システム障害の影響のない欧州は売上収益が前年比3.0%の減収、アジアパシフィックは売上収益3.1%で、計画はやや下回っているが事業利益は概ね計画通りに進捗。
日本・東アジアは第3四半期業績が確定できない状況だが、11月13日に発表した日本事業各社の10月概況(9月概況も含む)はアサヒビールが前年比9割超、アサヒ飲料が前年比6割程度、アサヒグループ食品は前年比7割超となっている。
勝木社長は「事業利益の進捗状況としては、日本・アジアは一定のマイナス影響を受けているが、欧州やアジアパシフィックはほぼ計画ラインで進捗している。日本では短期的な影響は避けられないが、強いブランド群を基盤としたファンダメンタルズは揺るがないものと確信している。各種システムは着実に回復に向かっており、本システム障害によって『中長期経営方針』を変更するつもりはない。引き続き、事業ポートフォリオの強靭化を力強く進捗するとともに、現在実施している自社株買いを含め資本効率の向上にも取り組み、中長期的な企業価値向上を目指していく」と話した。
■最後に
勝木社長は説明の最後に取引先や社員に対する感謝の言葉を次のように述べた。
「本件を通じて、お客様から温かいお言葉、時にはお叱りの言葉を頂戴し、私どもの商品やサービスが“おいしさ”、“楽しさ”、“豊かさ”、あるいは“よろこび”、“つながり”、“潤い”といったものをいかにお届けしてきたのかということを実感した。また、社員がいかに頼もしいかということを実感した。時間はかかったが、ここまで復旧のめどが立ってきたのは社員の驚くべき頑張りがあった。月並みな言葉ではあるが、社員のことを誇りに思っている。不適切な言葉かもしれないが、経営者冥利に尽きるという体験をさせてもらった。こうした社員がいる限り、今後さらにお客様の信頼を頂戴し、お客様に、社会に、より価値を提供して強い会社となって戻って行けると確信している」。















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