コート・デ・バールの協同組合ブランド、「ド・バルフォンタルク」が語るテロワール

10 月 9 日、ランス大聖堂の近くにあるレストラン「オ・ピアノ・デ・シェフ」で、オーブ県にある「バロヴィル生産協同組合」が特別な試飲会を開催した。この日のテーマは、「バロヴィル生産協同組合」が展開する自社ブランド「シャンパーニュ・ド・バルフォンタルク(Champagne de BARFONTARC)」のプレステージ・キュヴェ、「ラ・ヴィーニュ・オ・ロワ」の垂直試飲と料理とのマリアージュ。

 

54の栽培家が結集する協同組合

 

1962 年創設の「バロヴィル生産協同組合」は、現在、創業メンバーの 2 代目と3 代目を中心に54 の栽培農家が所属し 、バロヴィル村周辺の村々に約 130 haのブドウ畑を所有している。組合創設とほぼ同時に創設された自社ブランド「「シャンパーニュ・ド・バルフォンタルク」は、会員が暮らす3つの村、Baroville(バロヴィル)、Arconville(アルコンヴィル)、Fontaine(フォンテーヌ)の頭文字を合わせての命名だ。

シャンパーニュ産業全体のなかで大きな位置を占める協同組合を理解するために、シャンパーニュの市場構造を要約する表を作ってみた。興味深いのは、シャンパーニュの協同組合が所有する葡萄畑は合計、約 20,000ha で、シャンパーニュの全ブドウ園 34,200ha の 56%を占めている。その一方で、販売シェアは 22%に過ぎない。つまり、ほとんどの協同組合は、収穫の一部で自社ブランドシャンパーニュを生産、販売し、残りの多くのブドウ、果汁はネゴシアンに売り渡している。「バロヴィル生産協同組合」も同様で、理論上100 万本以上のシャンパーニュ生産能力をもちながらも、「ド・バルフォンタルク」として販売するボトルは年間、約 24 万本のみ。最良のブドウだけを使い、コート・デ・バールのテロワールの個性を反映させた極めて質の高い製品を販売しているということになる。

シャンパーニュの運営形態別生産、販売構成

 

運営形態 事業者数(概算) ブドウ畑占有率 ブランド販売シェア(数量) ブランド販売シェア(金額)
協同組合 (CM) 約130 56% 22% 22.2%
ネゴシアン ・マニピュラン(NM) 約360 10% 67% 約68%
レコルタン・マニピュラン (RM) 約4,700 34% (RC含む) 約11% 約10%

注記:CM(Cooperative-Manipulant)=協同組合、NM (Négociant-Manipulant)=ネゴシアン、RM(Recoltant-Manipulant)=レコルタン、RC(Recoltant-Cooperateur)=レコルタン·コオペラトゥール

 

地質学的にみると「コート・デ・バール」の土壌はブルゴーニュと繋がっていてシャブリ地区と酷似したジュラ紀のキンメリジャン泥灰岩とポートランディアン石灰岩で構成されている。キンメリジャン土壌といえば、ほぼ反射的にシャルドネで造られるシャブリを思い起こすが、コート・デ・バールで栽培されているブドウの約 90%は、シャルドネではなくピノ・ノワールだ。大陸性気候の影響を強く受けるコート・デ・バールは、ピノ・ノワールが完璧に成熟するための理想的な条件が整っていて、より豊かで、丸みがあり、力強い果実味のあるシャンパーニュを生み出す。つまり、シャブリのようなミネラルの骨格と酸を維持しつつ  、ピノ・ノワール由来の「まろやかな味わい」  と「独特の軽やかさ」  が共存する、類まれな魅力を持っている。

 

試飲会冒頭、「ド・バルフォンタルク」の運営管理を担うジェネラル・ディレクターのオリヴィエ・マルタン氏は「長期的視点」の重要性を強調し、次のように語った。

「私たちは、今日のシャンパーニュの醸造が、20年後のメゾンのイメージを形成すると考えています。私たちの使命は、目先の利益やトレンドに影響されることなく、長期的なヴィジョンで品質を追求し、テロワールを尊重することです」。

垂直試飲――6 つのヴィンテージ

今回垂直試飲した「ラ・ヴィーニュ・オ・ロワ・ナチュール」は、1997 年ヴィンテージから造られているメゾンのフラッグシップ・キュヴェでピノ・ノワール 50%、シャルドネ 50%。ドザージュを行わない「ナチュール」スタイルで、テロワールとヴィンテージの特徴が純粋に表現されている。とりわけ 2010 年以降、最初の搾汁のみを使用することで、より一層のフレッシュさと繊細さが増している。

(以下、商品名・ヴィンテージ 20点満点の点数)

La Vigne au Roy Nature 2016   16.0/20

2016年は、春の霜、長雨、ベト病の発生という困難な年であった。収量は平均を下回る6,800kg/haで、生産量は3,529本に限定された。柑橘類と白い花のフレッシュなアロマ、生き生きとした酸味と鋭いミネラル感が印象的で、ゼロ・ドザージュ特有のピュアでドライなフィニッシュがエレガンスを際立たせている。

La Vigne au Roy Nature 2014   16.5/20

2014 年は冷涼で成熟が遅れた年。収穫量は 12,000kg/ha と豊作だったが、ワインには緊張感がある。青リンゴやレモンのような引き締まった果実味と、火打石を思わせる硬質なミネラル。口に含むとピノのボリューム感が大変心地よい。生産本数は 3,513 本。

La Vigne au Roy Nature 2012   17,5/20

2012 年は 6 月 7 日の雹害により収穫量が 3,600kg/ha という記録的な少なさとなっ た。しかし残されたブドウにエネルギーが凝縮され、力強くアロマティックなワインが誕生した。白い果肉の桃やイチジク、ブリオッシュの香りが豊かに広がり、リッチな口当たりとしっかりした骨格を持つ。

La Vigne au Roy Nature 2008   15,5/20

2008 年はシャンパーニュ愛好家にとって特別な響きを持つ。収穫量は 16,000kg/haと豊富で、ブドウの品質も申し分なかった。グラスからは、熟した果実、ハチミツ、トーストしたブリオッシュの複雑なアロマが立ち上る。味わいはパワフルで、素晴らしいフレッシュさを保っている。最後の余韻も申し分ない。

La Vigne au Roy Nature 2002 16.5/20

2002 年は温暖で早熟だった年。豊かな太陽の恵みを受け、内容のあるパワフルなスタイルに仕上がっている。熟したトロピカルフルーツやコンフィチュールのような甘い香りと、洗練されたミネラルのニュアンスが感じられる。豊満でクリーミーな口当たりは、味わいのあるフランス料理とよく合うだろう。

La Vigne au Roy Nature 2000 17.0/20

2000 年は、ミレニアム・ヴィンテージ。25 年の歳月を経て、美し琥珀色に変化している。ドライフルーツ、ハチミツ、ローストしたナッツ、そしてシェリーを思わせる複雑で官能的な香り。味わいはまろやかで、酸は穏やかに溶け込み、熟成由来の旨味が口中に広がる。

 

料理とのマリアージュ――ガストロノミーの可能性

 試飲後の昼食会では、レストラン「オ・ピアノ・デ・シェフ」のエリック・ジョフロワ・シェフが考案した特別メニューが提供された。

アミューズ・ブッシュの後に出された前菜は「牡蠣とシャンパーニュのサバイヨン」、「鯖のタルタルとフランボワーズ」。これに合わせたシャンパーニュは「ラ・ヴィーニ ュ・オ・ロワ・ナチュール 2016」。牡蠣の持つ潮の香りとミネラル感が、ゼロ・ドザージュの「ナチュール 2016」の持つ塩味と完璧に調和。シャンパーニュのシャープな酸が、鯖の脂を爽やかに洗い流し、フランボワーズの酸味と果実味が新たな味覚の層を加える。見事なマリアージュだ。

 

 

皿の魚の主菜「オマール海老のコンフィとキャビア」には「ラ・ヴィーニュ・オ・ロワ・ブリュト 2016」。8g/L のドザージュが施された「ブリュット 2016」は、「ナチュール」に比べてよりふくよかでクリーミーなテクスチャーを持つ。このコクが、オマール海老の繊細な甘みと旨味を優しく包み込む。キャビアの塩気がシャンパーニュのミネラル感と共鳴し、贅沢な味わいを完成させる。

肉の主菜「鴨のマグレ低温調理と人参のレデュクション」には「ラ・ヴィーニュ・オ・ロ ワ・ブリュト2016」と共に、「ラ・ヴィーニュ・オ・ロワ・ブリュト 2013」を合わせた。鴨肉の濃厚な味わいと脂には、熟成感のあるシャンパーニュが求められる。特に 2013 年ヴィンテージは、その構造と熟成由来の複雑味で、鴨肉の力強い風味と見事に渡り合った。

この後、さらに「ラ・ヴィーニュ・オ・ロワ・ブリュト 2013」をチーズとデザートに合わせたが、丁寧に作られたプレステージ・キュヴェ「ラ・ヴィーニュ・オ・ロワ・ブリュト」のボリューム感と繊細な酸が素材の味わいを引き立て、大変心地よいく楽しむことが出来た。シャンパーニュがアペリティフからデザートまで通して楽しめるガストロノミーワインであることを改めて再認識した。

協同組合はこれまで、レコルタン・マニピュランの対極に位置し、時に品質よりも量を優先するイメージを持たれることがあった。しかし、「ド・バルフォンタルク」」は、その偏見が時代遅れであることを明確に証明する事例だ。今後、協同組合が競争を勝ち抜くためには、これまで大手ネゴシアンに売り渡していた葡萄、搾汁を如何に価値づけるかにかかっている。そのためには、「ラ・ヴィーニュ・オ・ロワ」をはじめとする「ド・バルフォンタルク」ブランドのシェアを上げることがますます必要になるだろう。少数精鋭の会員を擁する協同組合が作る「ド・バルフォンタルク」は、「品質の高さ」と「安定性」という協同組合の力をうまく生かして間違いなく成功している。ブラインドで試飲すれば、グランマルクの高級キュヴェと難なく比肩できる実力を持っている。今後が楽しみだ。

 Toshio Matsuura

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