- 2017-3-31
- Wines, フランス France
フランスではロゼワインの消費が白ワインを上回ったという。特に若くてオシャレなパリジャンは、辛口ロゼのヘビードリンカーだとか。フランスで造られるロゼの中でもプロヴァンス生まれが最も人気だと聞いているが、この「シャトー・デスクラン」の存在がこのロゼのトレンドにも一役買ったのかもしれない。
噂のロゼ「シャトー・デスクラン」のチーム編成を聞いて、「なるほど」と合点した。2006年に由緒あるこのシャトーを購入したのは、ボルドーのアレクシーヌ・リシーヌの子息サシャ・リシーヌだ。シャトーのオーナーで文筆家でもある父を持ち、自らはアメリカでソムリエや卸しのセールスの経験から、フランスではネゴシアンやシャトー経営も行い、幅広くワイン業界に関わってきた。
一方、造りにおけるパートナーはパトリック・レオン。1970年代に父アレクシーヌと仕事を共にした人物であり、80年代からはバロン・フィリップのグループで、シャトー・ムートン・ロッチルドはもちろん、オーパス・ワンやエスクード・ロホなども手がけ、引退後には息子のベルトラン・レオンと共に、ボルドー右岸で「シャトー・レ・トロワ・クロワ」を静かに丁寧に造っている。
彼らがタッグを組んで至高のロゼを造り始めたのだ。
そのうち3種類を試飲した。ここのロゼを飲むと、ロゼのスティルワインを見る目が確かに変わる。
<3つのキュヴェ>
“Wispering Angel” Côtes de Provence Rosé 2015 <Caves d’Esclans / SachaLichine>
上品でフルーティな香りで、桃、洋梨、アプリコットなどが香り立つ。
しなやかなアタックでフレッシュな酸がジューシーさを醸し出し、ピンクグレープフルーツのようなほんのりと口中を引き締める要素が感じられる。果実をそのままかじったようなフレッシュ感が印象的。ピュアで美しい。
“Rock Angel” Côtes de Provence Rosé 2015 <Château d’Esclans / Domaines Sacha Lichine>
香りが一段とアップして、丸みさえ感じられる。赤い果実や花、オレンジピールが香る。なめらかなアタックで、厚みがあり、収れん性に近いミネラルの引き締まりも感じられる。口中では濃さを感じるとともに、日本的に言えば梅鰹的な旨味+塩味+清涼感を思い起こさせる。
Wisperingと比較すると途端に葡萄の「力」が増す。なかなか出会えない感覚のロゼだ。
“Garrus” Côtes de Provence Rosé 2015 < Château d’Esclans / Domaines Sacha Lichine>
樽由来のバニラやトースト香がほんのりと感じられ、さらに厚みのある粘性、オイリーさを感じさせる香り。桃、アプリコット、洋梨、ベリー系果実などがまだこれから花開きそうだ。味わいにも丸みや厚みが感じられ、果実の豊かさから一瞬酸はソフトに感じるが、ライム的な酸とミネラル感の引きしまりが強く、収れん性も感じられる。とろりとした食感で、濃縮感がある。とてもピュアだが反面勢いとエネルギーのある味わいで、とてもシリアス。
数年待ってから飲む、あるいはデキャンタして飲みたい。ロゼという範疇を超えている。
<造りの違い>
造りは基本的に同じだ。
*葡萄品種はほぼグルナッシュでロール(ヴェルメンティーノ)少量ブレンド。”Garrus”は樹齢80年の古木の葡萄。
*明け方から始める収穫は正午までには終える。気温が上がらないうちに手摘み(“Wispering Angel”のみ一部機械収穫)するためだ。
*選果は3段階行われ、最終的には光学式選果台による粒撰りで、葡萄は7〜8℃まで温度を低くし、もちろん酸化防止対策も万全に行いソフトな圧搾を行う。
*一切マセレーションは行わない。
*果汁は3段階に選別される。
*選別された果汁は品質に合わせて、600ℓの新樽、1年使用樽、ステンレスタンク、どの容器で醗酵されるのかが決められる。
*Garrus は、90%フリーランで10%は初期のプレス。600ℓのフレンチオークで樽醗酵・樽熟成。新樽と1年使用樽で10か月間、しっかりバトナージュも行うようだ。
*Rock Angel は、ステンレスタンク醗酵のものもブレンドされる点が異なる。
*Wispering Angel は、近隣の畑から購入した葡萄も使用するため、ネゴシアン・ラインとなり、フリーランだけでなくプレスワインもブレンドしている。
なんとなく飲むと、どれもとても美味しいロゼだ。
じっくり味わうと、シャトーものには驚嘆する。 (Y. Nagoshi)
輸入元:ベリー・ブラザーズ&ラッド
最近のコメント