ジュヴレ・シャンベルタンの頂点に君臨する「ドメーヌ・アルマン・ルソー」

1910年に、食料品店を営みながらワインも造り樽で販売していたアルマン・ルソーがドメーヌを設立した。以来、少しずつだが眩いばかりの特級畑を買い足してきた。生産量が少なく高価だが即完売に」なるこのドメーヌの3代目エリック・ルソーが現状を語った。

 

<ジュヴレ・シャンベルタンにフォーカス>

エリックの祖父アルマンの時代に自社畑は6haだった。1959年に継いだ父シャルルも畑を手に入れていき、エリックが1982年に家業に参画した時には12ha弱まで増えていた。そして今では15ha強を所有している。近年では、2009年にシャンベルタンを1区画入手、2012年にはシャトー・ド・ジュヴレ・シャンベルタンの契約を締結した。

「およそ3〜5年に一度購入していることになるが、あくまでもジュヴレ・シャンベルタン内しか考えていない」。自社畑のうち半分以上は特級が占めるという豪華さだ。

いずれも平均樹齢40〜45年を保つよう、少しずつ植え替えを行っている。改植の場合の苗木は、何名かの仲間でセレクション・マッサールをしたものを使っている。「複雑性のあるクローンの数を増やしたい。今はまだ少ないと感じている」。古い区画から低収量だが優秀なものを見つけ、1年目は印をつけておき2年目に品質をチェックして、それから苗木屋へ渡して分析後に病気など問題なければ増やしてもらう。実際に植樹できるのはさらに2年後ぐらいのことで、気の長い作業だ。

 

<世代交代>

アルマン・ルソーのボトルは、瓶底にも刻印が。様々な偽造防止が施されている。

エリックがドメーヌに入ってから、変えたことがいくつかあるという。

「まずはグリーン・ハーベスト。はじめは父には内緒にしていた」。こればかりは世代による考え方の違いだから仕方がないのだろう。他には「果実のアロマを得るために、ホールベリーを導入した。ジュヴレ・シャンベルタンでは私とグリヴォーが最初だった」。ちなみに全房率は現在10%ほどだという。

低温浸漬もエリックの代から始めたことで、その後ゆっくりと醗酵を始める。「ひとつのタンクの温度が上がると醗酵が始まり次々に連鎖していく。温度調節はしないが、35℃を超えることはない」。

そして、父の頃よりルモンタージュを減らしてピジャージュを増やした。約15日間の醗酵中、はじめはルモンタージュが多いが、ルモンタージュとピジャージュをどちらかを1日1回行う。

また、醗酵が始まると蓋をして熱とアルコールを保つ。「蓋をしないとアルコールが逃げてしまうから、補糖をしなければならない可能性が高くなる」という。

樽熟成については、若干新樽率を変えているようだ。シャンベルタンは100%のまま。クロ・ド・ベーズもおよそ100%のままだが年によって80%や90%のこともある。クロ・サン・ジャックは50%を70%に増やし、クロ・デ・リュショットは0から20%へ上げた。

続く4代目は長女は医師になってしまったが、次女のシリエルがすでにオレゴン、ニュージーランド、ヤラ・ヴァレーでの研修も終え3年前からドメーヌで共に仕事をしている。何か4代目からの要望が出ているのかと尋ねると「ビオディナミにしたいと言っている」との答えだった。

 

<2013年ヴィンテージ>

2013年は複雑な天候だった。ゆっくりと成熟し、近年収穫が9月初旬から始まるのに対し10月1日から開始した。畑で行う選果が大変だったが、仕込み後数ヶ月経過してからとてもよい出来だと判明した。アルコール度数は12〜13%で高くはないが、よく成熟しバランスがとてもよい。「長期熟成、とまでは言えないが中堅どころ。若い時にはフレッシュな果実が楽しめ、2008年に似ているが2013年の方が出来がよい」。

アルマン・ルソーでは、過去のヴィンテージを3つのクラスに分けている。例えば2008年は「早飲み」に入り、2013年は「中堅」に、そして近年では2012年、2010年、2005年などが「長期熟成」にランクされている。

ちなみにルソーの収穫は早めだ。「エレガンスが大切だと考えている。よりフレッシュでしっかりとした酸を残したいから、収穫開始ははじめのグループのひとつだ。フランス全体が過度に熟したヘビーなワインに向かった時代もあったが、私は一切迎合しなかった」。

 

Ruchottes-Chambertin Grand Cru Clos des Ruchottes (Monopole) 2013 3.3haのリュショット・シャンベルタンのうち1.06haが単独所有のクロ。表土が浅く「7、8年かけてようやく開いてくる」。上品で華やかな香りで、スパイス、ロースト、赤い果実など複雑な香りがし、口中もしなやか。伸びのある酸が印象的な繊細優美な味わい。

Chambertin Grand Cru 2013 シャンベルタンの収穫は10月6日から開始した。「冷たい区画なので例年最後から3番目に収穫する。例えばクロ・ド・ベーズは急斜面で温かいから収穫は早めになる」。まだ硬く、ローストと果実の香りが感じられるが閉じている。厚みがありなめらかな豊かな食感だが酸もタンニンもしっかりとしている。(Y. Nagoshi)

ウォンズのご購入・ご購読はこちらから デジタル版もできました!

WANDSメルマガ登録

関連記事

ページ上部へ戻る