カナダ東端、ノヴァスコシア産の高品質スパークリングワイン「ベンジャミン・ブリッジ」

「ブリティッシュ・コロンビアやオンタリオなどで知られるカナダのワイン産地はヨーロッパの多くのワイン産地と同様に、北緯41 〜51 度の間に位置している。しかし、緯度は必ずしもそれぞれの産地の気候条件をきめる決定的な条件とはいえず、カナダではむしろ海からの距離や湖の存在などが重要な要件となっている」と、ピーター・ギャンブル氏は話を切り出した。

ピーターはカナダにおけるワイン品質管理システムVQA の創設メンバーの一人であり、現在はコンサルタントとしてカナダ内外のワイナリーの立ち上げなどを支援してきたカナダ醸造界のパイオニア的存在だ。

 

そのピーターと、夫人で醸造家のアン・スパークリング女史が2000 年からコンサルタントとして参画しているのが、カナダ東端、ノヴァスコシア州ガスパロー・ヴァレーにあるワイナリー「Benjamin Bridge(ベンジャミン・ブリッジ)」だ。

北緯45 度、三方を大西洋に囲まれたノヴァスコシアは海洋性気候下にあり、温暖な夏と長い秋が特徴。しっかりとした酸とアロマティックで複雑な香りをもった爽やかなワインを産出している。ここでは伝統的にハイブリッド品種を使ったテーブルワインやデザートワインがつくられてきたが、最近では伝統製法でつくられる高品質スパークリングワインの産地として注目を集めている。

 

「ベンジャミン・ブリッジ」は1999 年、創業者で、この土地の出身者であり「土地の個性を反映したワイン造りを目指す」ゲリー・マコーネル&ダラ・ゴードン夫妻が、ガスパロー・ヴァレーに土地を購入したことから始まる。翌年、コンサルタントとして招聘されたピーターは3年かけて栽培上の問題点や土壌構成などを調査した。その結果、「世界で広く栽培されている500 種以上の品種のなかで、99%はここでは成功しない。しかし、例外はアロマ系品種、特にドイツ系の品種なら栽培可能。さらに、瓶内二次発酵でつくられるスパークリングワイン、しかもプレスティージ・キュヴェを生み出す可能性がある」という結論に至った。

なぜなら、ガスパロー・ヴァレーの幾つかの区画では石灰岩土壌が存在し、1920 年〜 1996年にかけての気候条件はシャンパーニュ、それもグレートヴィンテージのシャンパーニュに近似していることが分かったからだという。その後、パイパー・エドシックのシェフ・ド・カーヴを務めていた故ラファエル・ブリスボイスもこのプロジェクトに参画することになった。

 

「ベンジャミン・ブリッジ」では開墾から10年経った2011 年、「メトード・クラシック ブリュット・レゼルブ2004」と「同ブラン・ド・ノワール」を初リリース。当初はシャルドネやピノ・ノワールとともにヴィダルやラケディ等の交配品種も使っていたが、2010 年からはヴィニフェラ種100%でスパークリングワインをつくるようになった。エーカーあたりの収量を1〜 1.2トンに抑え、凝縮した葡萄を得ることを心がけているという。

 

ピーター・ギャンブル氏

ピーター・ギャンブル氏

ベンジャミン・ブリッジ NV/ハウススタイルを体現するために、初ヴィンテージある2002年産を中心に過去13年間のライブラリー・ワインをブレンドし、ごく最近リリースされたばかりのエステートボトルドワイン。日本市場での価格は4620円(税抜き)。

使われている品種は耐寒性に優れ“ノヴァ・スコシアのシャルドネ”と呼ばれるラケディ、セイヴァル、そしてピノ・ノワールとシャルドネ。MLFを行わず、フレッシュ感を保ちながら、ドザージュ9gでバランスをとっている。シトラスや洋梨、オレンジピールやエキゾティックなアロマにイーストのニュアンス。アタックからフィニッシュまで続く強い酸が特徴。総酸は8.8g、アルコール度数11.5%。

ブリュット リザーヴ2008/自社畑のシャルドネ61%、ピノ・ノワール39%。バスケットプレスとニューマティックを併用し、キュヴェとタイユの中心部分だけを使用。瓶内熟成は約6年。微細な泡、ミネラリーでレモンや白桃のアロマ、フィニッシュまで続く強い酸が長期熟成の可能性をうかがわせる。

スパークリング ロゼ2011/ピノ・ムニエ43%、ピノ・ノワール42%、シャルドネ15%の比率で、瓶内熟成3年。明るいピンクの色調、イースティ。きれの良い酸と、蜂蜜やラズベリー、チェリーなどの果実香。「当初はロゼをどういうスタイルでつくるか模索していたが、ピノ・ムニエのフルーティなアロマを生かしつつ、フレッシュ感と複雑みを兼ね備えたロゼをつくるように心がけている」。

ノヴァセブン2013/アルコール度数7%で1.5気圧の微発泡ワイン。マスカット・ダスティのような華やかな果実香ととともに、甘味を抑えてフレッシュ、クリスピーな飲み口に仕上げている。「ノヴァスコシアで一番売れているワインで、ケース買いされることが多い」という。

(M. Yoshino)

画像:ベンジャミン・ブリッジのワインと比較試飲に供されたクリスタル

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