アパルタやロス・リンゲスなど知名度の高いブドウ畑の集積するコルチャグア・ヴァレー。そのコルチャグアでいちばん太平洋に近いブドウ畑がパレドネスである。沿岸山地の松林の中に拓いたパレドネス畑は海からわずか5km。コルチャグアの沿岸山地の中に初めて開墾したブドウ畑である。これまでロロルやプマンケがコルチャグア・コスタと呼ばれてきたが、これらは正確にいうと沿岸山地の内陸側(コスタ・インテリオル)に位置していて海風を沿岸山地が遮ってくれる。つまり沿岸山地の海側に比べると暖かい。ところがパレドネスは沿岸山地の只中にあるから海風が吹きつけてくる。近くの港町ピチレムは世界に知られたサーフ・スポットで、たくさんのサーファーで賑わっている。
カサ・シルヴァは、森林など周囲の自然環境を保存したまま2008 年から2011年にかけて50haにブドウ樹を植えた。この畑はうねった地形で100mもの標高差がある。ソーヴィニヨン・ブランの植栽面積が最も多く、ピノ・ノワール、ソーヴィニヨン・グリ、シャルドネ、シラーが続く。パレドネスの土壌は赤色粘土とバトリトと呼ばれるマグマが噴出してゆっくり冷えたものが主体だ。その上に長い年月をかけて崩積した表土がある。水晶(クオーツ)をたくさん含んでいるのがパレドネスの土壌の特徴で、なかには粘板岩(シスト、ピサラス)の多い区画もある。カサ・シルヴァはピサラスの区画にピノ・ノワールではなくシラーを植えている。
年間降水量は500mm。海風には湿気が多く含まれており、特に夏の時期は濃い霧に覆われる。そのため気温が26℃を上回ることはない。春の遅霜の被害も大きい。パレドネスのブドウはミネラル(塩分)を強く感じるが、これは畑が海に近いとか、畑から海が見えるといったいわゆる環境が醸し出す印象から来るものではない。海の塩気を含んだ霧がブドウの果皮に付着し、その微かな残渣がワインの味香に影響すると主張する醸造家がいる。言われてみればそういう気もする。
手摘みしたピノ・ノワールを5℃以下に冷やし、房の選別のあと除梗して果粒の選別をする。開放タンクに入れて発酵前醸しを12日間(温度は5~8℃)。24℃~28℃の発酵温度で21日間のアルコール発酵。初めの7日間は一日一度のパンチダウンを手で施す。次の7日間は一日二度、最後の7日間は一日一度に戻す。フレンチオークの二空き樽で12か月の樽育成。
チェリー、ストロベリーなどの赤い新鮮な果実の香り、シナモンなどのスパイス、花の香りもある。全体におだやかでデリケートな香り。アタックはやさしく瑞々しい果実感が広がる。口中にラズベリーのような甘さと野イチゴのような爽やかさが感じられ、デリケートなタンニンと爽やかな酸味がうまくバランスしている。味わいの後半にアルコールの暖かさがあって、長い余韻が楽しめる。樽の使い方がとても控えめなので、他のワインとブラインドで比較試飲するとやや印象が薄くなるようだ。完全に除梗して仕込むことや樹齢の若さが関係しているのかもしれない。2015 年はパレドネスのブドウが良く熟したヴィンテージで、アルコールがやや強く、その分だけ酸味が控えめだ。
輸入元:国分グループ本社株式会社
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