当主ロドルフ・ペテルスが語る シャンパーニュ ピエール・ペテルスの哲学

プレステージ・キュヴェの「シェティヨン」で知られるピエール・ペテルスは、2007年から家業に参画したロドルフが翌年からり当主となった。来日に際して、シャルドネのエキスパートとしてその哲学を語った。

 

シェティヨンと多様なシャルドネ

ペテルスでは、メニル・シュール・オジェに加えオジェ、アヴィーズ、クラマンにも畑を買い足し、合計で約20haの畑を所有している。ペテルスをユニークな存在にしているのは「シェティヨンでのマッサール・セレクションだ」と言う。何代にも亘り選抜してきたため、一口にシャルドネといっても個性は一様ではない。「これは家族代々の記録、記憶であり、クローンとは対極の考え方だ。細かい要素でわけると無数のタイプのシャルドネが存在する」。

セレクションは3段階で行っており、収穫前にマーキングしていく。まず、枝の直径が十分あり色がブラウン・ゴールドなどの外観。続いて、収穫したブドウの味わい、糖分、酸度。そして、葉の状態も見ながら病気耐性があるかどうかを確認する。だからこそ、この土地に適合した優良なシャルドネだけが残っていくのだ。

メニルのベストな区画のひとつが「シェティヨン」で、合計25haのうち2.5haをペテルス家が所有する。「シェティヨンはそれぞの年を表す素晴らしい絵、鏡のようだ。2009年はリッチ。2008年はボディとエネルギー、バイブレーションが感じられ、2010年はエレガントでフルーツも白い花の要素などすべてを兼ね備えている」。

所有する3区画は、若くて樹齢40年で1936年植樹もある。区画ごとに自然酵母で醗酵する。マロラクティックも自然に任せ、起こることもあれば、起こらないこともある。「自然はもともと多様性に富んでいるもので、それを率直に表すことが私の使命だ」。力強いフレッシュさと純粋性がバランスよく表現されている。

 

サポートとしての醸造、そしてウブリエ

畑での仕事を重視しているため、醸造はあくまでもサポートに過ぎないという。

搾汁は収穫後5時間以内に行い8tと4tのニューマティックプレスを使用する。伝統的な圧搾機が10kg/m2なのに対し、1.2-1.4kg/m2と、とてもソフトなプレスだ。キュヴェとタイユの違いは基本的に試飲によってわけている。また、ブドウの純粋性を保つ目的で醗酵はステンレスを使用する。これにより「塩っぽさとシャルドネの純粋性がリンクする」。

リザーヴ・ワインについては、45%がステンレス、38%は43hlの特注の卵型コンクリートタンク、残りに45hlのオーストリア製大樽を使用している。1988年から優良年のみソレラ式で足していて、現在23ヴィンテージ分がブレンドされていることになる。「ステンレスタンクは柑橘類、レモンの白い部分といった果実を保つ。コンクリートタンクはミネラリティと塩気を。オークは、海の塩味、海風の風味をヘーゼルナッツやフレッシュなアーモンドの香りに変えてくれる」。

「卵型のタンクは、よく見かける液体が自然に対流するタイプではなく内部は台形になっている。シュヴァル・ブランを訪問した時にトロンコニックのタンクを見てインスピレーションを得た。オリは保存のためのものだと考えているので対流する必要はない。この形状だとオリの表面積が広く亜硫酸を加えなくてもすむ」と説明した。

極少量のみ生産のリザーヴ・ワインだけのキュヴェ「ウブリエ」は、ペテルスの、あるいはメニルを主体としたシャルドネの息の長さと上品さを改めて感じさせた。(Y. Nagoshi)

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