第3回
《対談》 井黒卓× マルセロ・ピノ
ラゴ・ランコのソーヴィニヨン・ブラン
▶ マルセロ カサブランカ産に比べると香りはとても控えめです。デリケートな香りでしっかりしたストラクチャー、キリッとした酸味が感じられます。
▶ 井黒 個性的な酸味をもっています。こういうタイプのワインは日本人の嗜好にぴったり合うと思います。
▶ マルセロ チリは気候も土壌も多様性に富んでいます。アンデスの山間やフンボルト海流の流れる冷たい海のそば、そして湖水地方ともいえるこのラゴ・ランコの周囲などです。
▶ 井黒 そうですね。私がチリについて強調したいことは、多くの人々は、チリは暑い国という先入観を持っていますが、実際のチリは決して暑い国ではないということです。ラゴ・ランコのあるアウストラルには渓流があって温泉もある。涼しくて雨の多い土地柄です。このソーヴィニヨンに合せる料理はなんでしょう。
▶ マルセロ チリですと生ガキとかセビーチェですね。また、これまでは何かと一緒に飲むというよりアペリティフとして使うことが多かったように思います。
▶ 井黒 これは発酵や熟成にオーク樽を使っていませんし、マロラクティック発酵もしていません。でもこのワインには“クリーミィネス”を感じます。ところでお客さんにカサ・シルヴァのソーヴィニヨン・ブランを勧めるとき、クール・コースト(パレドネス産)とラゴ・ランコはそれぞれどのように説明するのですか。
▶ マルセロ 何か新しいもの、これまでと違ったものを探している人にはラゴ・ランコを勧めます。カサブランカやサン・アントニオのようにシャープで軽快な味わいのソーヴィニヨン・ブランの好きな人にはクール・コーストを勧めます。
▶ 井黒 飲用シーンを想定すると、ラゴ・ランコはアペリティフ向きでしょうか。クール・コーストはもう少しアルコールがあるので温かい料理にあわせたいですね。二つのソーヴィニヨン・ブランはアルコール分が2%も違います。クール・コーストはまるくてリッチです。ラゴ・ランコはきゅっと細身でレモンのような酸味があります。
【井黒卓の試飲ノート】
クリスタルのような強い輝きを放つ淡いライムイエロー。反射光が強いので酸の強いことが想像できる。クランチーで瑞々しいフルーツが主体。グラニー・スミス(青リンゴ)、和梨、カシスの蕾や松ヤニのような香りが奥行きを与え、パプリカやフェンネルのようなグリーンのトーンがフレッシュ感を際立たせる。香りを鼻腔に残しながら口に含むと、涼しい気候を思わせる引き締まった印象に。ボディは控えめながら、シャープで焦点のあった伸びやかな酸が特徴的。後半に感じるソルティな後味がクセになる。バイタリティ(活気)に溢れたワインなので、力強く太陽に向かって伸びる旬のお野菜を合わせたい。
①サッとボイルした白アスパラガスに、香草をたくさん使ったオランデーズソース、
②こごみの天ぷら、アンデスロック(岩塩)と共に。
つづきはWANDS 2018年7月8月合併号をご覧ください。
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